パートナー手続き
当作品は毎日不定時更新を狙ってます。
いやまあ、本当は毎日定時更新したいのですが乗って書ける時と書けない時があり難しいんです。←基本的に遅筆
こんな作品ですが今後ともよろしくお願いします。
日が沈みすっかり暗くなった道を俺たちは前を行く冒険者たちについて歩いてく。
辺りを見渡せば田畑や小さな物置小屋のような建物が見える。所々光っているのは蛍光草が生えているのだろう。
「ねえジュナサンはどう思う?」
そう問いかけてくる新米くん。とりあえず俺の名前はジュナじゃないと思う。
あと何の話をしてたんだったか俺はもう覚えてないんだが……。
「あれー?ジュナサン話ちゃんと聞いてなかったの?酷いな、泣いちゃうよ?」
そう言って泣き真似をするが、口元が緩んで笑ってしまっているので泣いてないことが丸分かりだ。
なんで笑っているのだろう?もしかしたら新米くんはマゾなのだろうか。
「あージュナサンそんな引かないで〜〜。
よし、ちゃんと最初から話すから聞いてねジュナサン!」
俺の表情を見て笑いながらそう言う。
なんだかとても楽しいそうだ。何がそんなに嬉しいのだろう、俺には分からない。
コホンと咳払いする新米くん。何か違和感を感じたようでまたコホンと咳払い、コホンコホン、ゴホン、ゴッホゴホ、ゴホゴホゲフンゲフン!
うん、咳払いし過ぎだ少年。
「コッホ♪ じゃあ最初から話すね!
えっとー、今までジュナサンは森とか草原で暮らしてたんだよね?」
「ああそうだ」
「そんなジュナサンが今向かっているのはジュナサンの知ってる木や草の無い場所なんだ。そこは大きな岩や石の仲間の鉱石なんかを加工して、路にしたり住む場所にしたりするんだっ。特に一番ジュナサンの今までの暮らしと異なっている点は縄張りかな?んーと、個体個体での縄張りではなく種の縄張りを形成しているから、自分の住処のすぐ横に他の誰かの住処が存在していたりするんだよ。
まあそんなのはジュナサンならすぐ適応すると思うんだけど、一応確認を取っておきたくて。これからは僕とジュナサンは一緒に暮らすことになるんだけど、ジュナサンはどう思う?嫌だったりしない?」
少し不安そうに見つめてくる新米くん。たぶん俺に今になって嫌だとか言われたらどうしようとか考えているんだろう。
そんな心配はしなくても良いのに。
俺はパートナーという名のペットになったのだ。全やる気無し労働亡者達の憧れの職ペット、働かずに家でゴロゴロしているだけで可愛がられ飯を貰える至高の労働。例え新米くんが捨てると言っても俺は絶対ペットを辞めたりはしない!家に居座り続けてやる!!
そんな俺の想いをこの言葉に乗せるーー
「何を言っているだ、俺はお前のパートナー(ペット)だぞ」
それを聞いた新米くんは両手を胸の前で組み、目を輝かせて満面の笑みを作る。
サイドで垂れた耳のようなくせ毛がパタパタと上下する様は懐いてきた犬の尻尾を連想させる。
どうして女に生まれなかったんだ、こんなに可愛いのに……。これが世に名高い男の娘というやつだろうか?
「うへへへ〜…。ジュナサンにそうやって真正面から言われると嬉しいな〜〜」
照れながら言うとか反則だと思います。俺のTS属性を新米くんにプレゼントしたい。
というか本当に俺のTS属性をもらってくれませんか。
「あ!見てジュナサン!大きくて滑らかな形をした、ソリ立った岩みたいなのがジュナサンと僕がこれから暮らす街の外壁だよ!」
大きな声でそう言って指さす新米くん。俺は言われた通りに視線を送る。
そこには高さ10メートルはありそうな大きな壁があった。壁の色は雪を連想させる白、円状に覆っているのだろう滑らかな形をしている。
戦闘するためのものか大砲のような兵器も所々見受けられる。
「どう?どう!?すっごく大きいでしょジュナサン!僕が生まれ育った街"グレイラビ"の外壁!!」
横でハシャギまくる新米くん。
それを見て確かに大きいと俺は思った。こう言ってはなんだが、前世にはこれ以上に大きい建築物なんていくらでも存在する。だが何故かそれらと目の前の壁は違うと思った。
あの空を突く摩天楼も凄いのだが、この壁は存在感が違う気がするのだ。
「凄いな……」
「でしょでしょ!」
無意識のうちに口から零れた声を聞き、新米くんが胸を張って誇らし気にえっへんと言った。
何故君が威張るんだ少年。
「おーい、早よ中に入れ〜」
赤桃鎧が手を振って入るように告げる。
はーい、と新米くんが返事をして一緒に白塗りの迫力ある門を潜った。
門の先には火の光で照らされていて、人の営みある商店街のような路が見える。食事処、武器屋、防具屋、鍛冶屋、何かのギルドなどなど異世界感溢れる街並みがそこにはあった。
「ジュナサンこっちだよ〜」
おお……。と感嘆の声を漏らして突っ立っていた俺を新米くんが呼びかける。
門の近くには詰所とは別でもう一つ大きな建物があり、その中に入っていく新米くん。
見失わないように俺も続いて中に入る。
中は見た目通り広い造りで、10個ほどある長机を囲むように冒険者たちが座って酒を浴びるように飲んでいる。全員とても楽しそうに騒がしく笑いながら。
こっちこっち、と新米くんの手振りに呼ばれてカウンターらしき所に進む。カウンターの台に何か書いてあるが俺は言葉は解せど文字は読めないので分からない。
カウンターの奥には棚が沢山あり、紙が山積みにされている。
「すいませーん!パートナーモンスターの登録をしたいんですけどー!」
新米くんが大声でそう言うと奥からオッさんが出てきた。そのオッさん、俺も知っている赤桃鎧を着ている。
「あれ?マスターがどうして?」
「おうデュアル、なに受付嬢も総出で注文取りに行かしてんだよ。緊急クエストなんて怖えモンやって全員震え上がっちまったんだろな、酒が飲みてーのさっ。
それよかお前のパートナーモンスターってのはそいつで良いんだな?」
「あ、はい!ジュナサンとこれから頑張っていきたいと思います!」
「おう頑張んな!」
え?マスター?この赤桃鎧なんていうオシャレ番長みたいな格好のオッさんが?
マスターってギルドマスターことだよな。俺のイメージ的にギルドマスターってもっと小さいジジイなんすけど……。凄いガチムチマッチョじゃないですか!テンプレを無視するなよ!!
俺のそんな考えは伝わるわけもなく、赤桃鎧と新米くんは何かの手続きを済ませた。
手続きの紙にサインを詳細を書き込んでいく新米くんを見て、この世界はテンプレみたいに識字率が悪いというわけでは無いのかもしれないと思った。
「おし、これでお前らはパートナーだ!これからは助け合って行きていけよ?」
「はい!」
赤桃鎧の言葉に元気良く返事をする新米くん。
そういえば俺はまだ新米くんの名前を知らないな。さっきデュなんとかと言っていた気がするが、パートナーになったんだし後でしっかり聞こう。
その前に俺と新米くんにはやらなければならないことがある。
「さて、それじゃあこれからのことを話すにも先ずはご飯だねジュナサンっ」
「ああ!」
俺たちの腹の虫が一緒に鳴いた。