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Re:KoboldSaga  作者: 空見鳥
15/33

そうだ、ペットになろう

また遅め投稿お許しくださいm(_ _)m

 ドライアドとの闘争から2日目、そろそろ俺は真剣に考えなくてはならなくなってきていた。

 何を考えなくてはならないのか、それは食糧問題だ。

 何故今更そんなことを持ち出したのかというと時間を少し遡ることとなる。




 太陽がそろそろ中天に達するという時刻、俺はいつものように草を喰べていた。

 もうめっきりスキル取得ができなくなってしまったが俺はそれでも草以外に喰おうとはせず、ドライアドを倒したからと言って思い上がることなく質素に食事をとっていた時だ。

 ソレは目の前にいつの間にか存在していた。草の上に敷き詰められたそれなりに大きさの揃った薄い岩盤。


 ソレは俺知識的に中世の道路加工といった感じで、岩と岩との隙間に馬車の車輪が挟まって転倒とかしそうだ。

 これは間違いなく人工物だろう。ということはこれ以上先に行けば人間やそれに準ずる知能の高い生命体が集団で暮らしている街や国があるはずだ。

 ならばこれ以上先に草原は続いてないと考えるべきである。とすると俺の食事処はもうないと言える。


 俺はどうしたものかと胡座をかいて頬杖しながら考えた。

 そして話は冒頭に戻る。

 いくら考えても良案というものが何一つ出てこない。頼みの綱のシホちゃんは【マスターの行動を私が決めることはできません。私は一スキルという範疇を越えれませんので】という分かりづらい遠回しの言い方で断られてしまった。

 ドライアドとの闘争はシホちゃんが行動を決めたと思うんだけどなぁー……。


 そろそろ悩むこと数十分経つ。俺の頭から煙が出だしていることだろう。

 良案どころか愚策屑案も出てこない。

 胡座をかいていると足が痺れてきたので仰向けで横になり空を眺める。何もしたくない、そういう思いが俺の中で大きくなっていくのを感じる。


 空を飛んでいるドラゴンやデカい鳥を見て、自由ってイイなーなどと思いに耽っていると何処からか金属同士が擦れる音が聞こえてきた。

 ガヤガヤと声も聞こえる。その音と声のする方に顔を向けるとそこには多種多様な鎧を着た冒険者然とした者達がたくさんいる。

 どこか殺気立ったその一行とかち合わないように擬態を発動して、観察することにした。



◇◇◇◇◇



「よーしこの辺だな。総員、止まれっ!!」


 その一言を聞いて冒険者達が歩みを止める。

 各々近くの奴と喋りながら歩いていたが、その声を聞いた途端緊張が走り会話が止む。全員が声を上げた赤を基調として桃色の線が入った重装備の冒険者に顔を向ける。

 赤桃の冒険者が静まった一同を見渡し、兜を外して声が聞こえ易いようにする。


「これよりビギナーズ大草原を砂漠化している災害指定個体、通称『土地神を喰らう妖魔』の討伐ないし撃退クエストを開始する!

対象の災害指定個体としてのクラスは第三階梯ルーク級と低いが決して侮るなかれ!災害指定されているモンスターの討伐は皆も知っての通り、クエストとしてのランクはSだ!油断すれば我ら全員が蹂躙されることも起こり得る。そのことを肝に銘じろ!分かったか!!」

「「「「「「オォォォォォオォォォオォオォオォオオオオオオ!!!!」」」」」」

「肝に銘じたパーティーから散開!災害指定個体を発見すると同時に魔術師は指示通り空にビギナ級魔術を放て!!」


 鬨の声を上げて凡そ数百人もの冒険者達が5・6人の組になって砂漠に向かって走っていく。

 そんな中草原に残っている組が一つ。先ほど大層に大声を張って指示していた赤桃の冒険者とその仲間たちだ。

 彼らはたった一人のために待っているようだ。その一人というのは組の中で唯一軽装備で、産まれたての子鹿のように足を震えさせている小柄な冒険者だ。


「ぼぼぼ、僕にできますかね!?ちょっと前に冒険者になったばかりなのに……」

「大丈夫だって、もし危なくなったら俺らが守れるように同じパーティーなんだからさ〜」

「それに君は剣はてんでダメだが弓の腕は良かった。だから私たちは君をパーティーに誘ったんだ、もっと自信を持つといい」

「遠距離からの攻撃に専念すれば良いんだ!しっかり支援魔法がかけられているから先ず簡単に死にはせん!安心しろ!」

「はっ…はイィ!」


 どうやら気弱そうな冒険者は新米のようだ。

 まだあまり慣れていないのに災害指定個体を討伐するクエストに呼ばれて緊張しているらしい。はいという返事が裏返ったのがその証拠だろう。


「災害指定個体…か、そんな化物がこの旧大草原にいたなんて……。よく今まで出会わなかったもんだ、俺は運が良いようだな」


 話を盗み聞いていたのかそう小さく呟く木。いやその実は木に擬態したコボルトだ。

 このコボルトは自分が災害指定されていることにどうやら気づいていないらしい。

 コボルトは気弱そうな冒険者を見て先日助けたヤケに元気な気弱冒険者を思い出していた。彼と気弱冒険者がダブって見えたのだ。


「ん?んん!?どこか似てる気がする……雰囲気は違うけど、背格好とか声とかが………。顔を確かめてみるか」


 そう言ってコボルトはスキル【千里眼】を発動した。千里先の米粒を見ることすらできるという千里眼、一般的には秘術扱いのスキルを簡単に使うとは常識的価値観が抜けている。

 千里眼によって覚醒した視力で顔を確かめる。

 やっぱり、なら……。と呟いて擬態を解除して近づいて行った。簡単に擬態を解除すると周りに見られて退治対象となり易いのだが、そんなことは一切気にしていないようだ。


「よしよし、良い返事だ少年!それじゃあ俺たちは一番危険度が高いこの草原を捜すか!」

「え?どうしてここが一番危険度が高いんですか?」

「そりゃお前、災害指定個体がどうして災害指定されているのか考えりゃ分かんじゃねーか。大草原を砂漠化したんだぜ?通称『土地神を喰らう妖魔』だぞ?」

「え……あ、草原を食べているから?ってことは今も食べているかもしれないってことですか!?」

「そういうことね」


 危険な理由が分かった新米冒険者は更に子鹿状態になってしまった。

 それを微笑ましく見つめながら、パーティーの仲間である熟練冒険者たちはここで待ってろと各々で散開していく。

 腰が抜けたらしく動けなくなった新米冒険者は口をパクパクとしながら見送った。


「よお気弱くん」


 そんな新米冒険者に話しかけてくる声。その声の方に誰だろうと疑問に思いながら振り返る新米冒険者。

 見るなり目を輝かせる。


「じゅ……ジュナサーーン!うわぁあ!ジュナサンだジュナサンだ〜〜!!」


 手をブンブンと振るその姿は先ほどとは打って変わって嬉しそうだ。

 満面の笑みを話しかけてきたコボルトに向ける。


「うるさいうるさい。落ち着けよ気弱くん」


 苦笑しつつ嗜めるコボルト。言葉とは裏腹に何かを感じさせる笑みを作っている。


「あれ?ジュナサン喋れるようになったの!?あ、最初から喋れてたのかな?ジュナサンはコボルトらしくないコボルトだもんね!」

「それはどういう意味だ。褒めてんのか?それともおちょくってんのか?」

「褒めてるに決まってるじゃーん!」


 あ、そう。と返す素っ気ないコボルトに比べ、新米冒険者のテンションはどんどんヒートアップしていっているようで声が大きくなっていく。

 先ほどまでの子鹿状態が嘘のようだ。


「そうだ!ジュナサン前に別れる時に言ったよね?次までにお金を貯めておくから、次会ったらパートナーになってくれるか考えといてって!今回のクエスト前金だけでも50万Cも手に入ったから二人で暮らしても2ヶ月は遊んで暮らせるよ!どう?考えてくれたかな?」


 そう嬉しそうに告げる新米冒険者。

 それに対してその話を待ってましたと目を見開くコボルト。悪そうな笑みが強くなる。

 腕を上げずに小さくグッと拳を握る。どこかヤッタリといった嬉しさが伝わってくる。


「ああ、その話を俺もしようと思っていたんだ。だから話しかけたんだ気弱くん」

「ということは了承してくれんだね!?」

「ああ、良いとも」

「ヤッターーー!ジュナサンとパートナーだーーーー!!」


 コボルトの了承を得てとても嬉しそうに笑う新米冒険者。嬉しさのあまり叫んだのが彼の喜びようを充分に伝えるだろう。

 しかしそんな喜んでいる新米冒険者にコボルトは「だが」と言葉を発した。


「パートナーになるには条件があるんだ気弱くん」

「条件?」


 その言葉を予想していなかったのか新米冒険者は頭上に(クエスチョン)を浮かべる。

 より一層悪い笑みを作るコボルト、小悪魔のようなと言った方が伝わるかもしれない。


「フフフフ…聞きたいか?」

「え……う、うん」


 自分で条件があると言っておきながら聞きたいかと言うとはコボルトは頭が弱いらしい。


「君に叶えられるかな……?」

「叶えれるように頑張るよ!」


 面倒くさいほど勿体ぶった話の進め方をするコボルト。

 それに対して眩しいほど素直な反応を見せる新米冒険者。


「良いだろう、ならば教えよう!

条件その1、昼寝をさせて。

条件その2、飯は毎日三食おかわりさせて。

条件その3、自由気ままに行動させて。

条件その4、毎日風呂に入らせて。

条件その5、危険な事はしない!

これらの条件を満たせると言うならパートナーになろう」

「うん良い♪」


 勿体ぶった割には貧相な条件を叩きつけたコボルト。

 それを聞いてホッと胸を撫で下ろし了承する新米冒険者。けっこう無理難題を吹っかけられると思っていたのだろう。

 対してアッサリ了承されたコボルトは驚いていた。コボルト的には無理難題を吹っかけたつもりだったのだ。


「おーい、なんかあったか〜?」


 新米冒険者が叫んだのでソレを聞きつけて助けに来たらしい熟練冒険者が声をかけてくる。


「あ、大丈夫です」

「そうか?なら良いんだ……が………?そいつは何だ?」

「はい!彼女はジュナサンです!今日から僕のパートナーになったんですー!」


 コボルトを見て疑問を問うてくる熟練冒険者に満面の笑顔で答えた新米冒険者。

 なら問題なし、と言って来た道を戻る熟練冒険者。新米冒険者のことを信用しているようだ。

 戻っていく姿をコボルトと新米冒険者は見送った。短いやりとりである。



◇◇◇◇◇



 日が沈み出し空が赤く染まり始めた頃、今だ見当たらない災害指定個体を捜し続ける冒険者達。

 俺と気弱くんは再開してパートナーとなったので共に捜していた。本当なら捜すだけでも危険なので嫌なのだが、お願いと頭を下げられては断れなかった。とはいえ発見されたら即座に逃げる準備をしていたが。


「全然いないねー?」


 草を掻き分けながらそう愚痴る気弱くん。

 普通にいないことに越したことはないだろうに、何を言っているのやら。

 この少年は俺とパートナーを組んだ途端強気になって災害指定個体出てこいなどと怖いもの知らずな言葉を言うようになった。何故だろう?俺は弱気な君が好きなんだよ?


 ピユーーーーーーンッ


 という音が少し離れた空から聞こえた。

 それを聞いた気弱くんが背負っていた弓を握り矢を引いた。

 矢には鏃の代わりに穴だらけの筒状の物が付いている。それを空に向かって放つ。


 ピィイーーーーーーーーッ


 とさっきの音と似た音が射られた矢から聞こえる。

 どうやら何かの意味があるらしく、ソレを射た直後に「もうそんな時刻なのか〜……つまんない」と不満そうに呟いたのが聞こえた。

 なんとなくさっきのが帰る合図か指令なのだと察した。帰れるのに不満とは気弱くんはもう気弱ではないのだろうか。


 俺と新米くん(気弱くんの改称)が歩きながら指定の場所とやらに向かえば、もうそこにはけっこうな数の冒険者達が談笑していた。

 多数の視線が俺を捉えるが、すぐに興味を失くしたようで談笑を再開する。

 俺たちのような関係はよくあることなのだろう。その上俺は最弱説のあるコボルトなので興味を持つ必要もないわけだ。


「あー、談笑中すまないが全員集まったようなので静かに!」


 そう声を張ったのは始めから指揮をとっていた赤桃鎧の冒険者だ。

 彼の声は低いが何故かよく通り、談笑をしていた冒険者達が静まり返る。

 その様子を確認した赤桃鎧は一つ頷き、オホンとあからさまな咳払いをした。


「災害指定個体を捜索だが、日が暮れ出している。よって今回の捜索はこれまでとする。夜になるとモンスター達は活発化するモノが多いからな、なので今回のクエストは終了!

前金の返却はなし、次回また捜索する時は新たに前金を用意するから受けたい奴は受けてくれ!受けなくてもお前らには何の損も出ねーようにするから安心しろ。

今日災害指定個体が見つからなかったおかげで生きていることを噛み締めながら飯を食え、そんで寝るように!よし、帰るぞ野郎共!!」


 そう叫んで踵を返す赤桃鎧。それについて行く数百人もの冒険者たち。

 え?今の話が俺には理解不能なのだが……。莫大な前金を払ってるのに見つからなかったらクエスト終了って良いのか?それ大丈夫か!?


「どうしたのジュナサン?」


 困惑している俺に新米くんが聞いてくる。

 なので俺は新米くんに説明を求めることにした。


「あのさ、前金はスッゲー大金だったんだよな?どうして撃退もしないでクエスト終了なんだ?しかも前金返却なしとかクエスト発行しているギルド?は大丈夫なのか!?」

「ん?あークエストがおかしいってこと?それは仕方ないよジュナサン。

災害指定個体討伐ないし撃退クエストは国が発行する緊急クエストって言ってね、冒険者や探索者みたいな国付きでない戦える人達を無理矢理死ぬ可能性の高い所に連れて行くんだ。

まあ冒険者と探索者はその生業上特定の場に(とど)まらないし、国に対して国民より払う税が少なくて国的には軽い命だから仕方ないけどね。


とはいえそれは国としての見解であって、僕ら冒険者だって生きているんだから死にたくはないんだよ。だけど金の稼ぐ方法が訳あって自分の命を担保にするこの方法しかない、そういう人達が冒険者になるんだ。

そういう冒険者達の負担を少しでも助けるのが組合(ギルド)なんだよ。ギルドは僕ら冒険者の味方だから、危ないクエストは金が稼げるようにしてくれてるんだよ」


 な、なるほど……。一応の理由らしき物は分かった。しかしソレを語っている時の新米くんの目が光を宿していなくて怖い。

 あと国とギルドというものの関係が著しくないようだ。

 この話はもしかしたら禁句だったのかもしれないな。これからはできるだけ避けよう。


「こんな話つまんないよねっ」


 最後にそう言って締めくくり、俺と新米くんは冒険者達の後をついて歩いた。

 途中俺たちは他愛ない話をして笑いながら街へ向かう。新米くんにとっては帰路であり、俺にとっては初の道だ。

 大草原に対して何か思い残しなどがあるわけではないので、あまりこれといった物寂しさはない。


 グゥーーっと腹の音が鳴ったのでとりあえず街で一番最初に味のある飯が食いたいと思った。

今回は作者チャレンジしてみました。

第一人者視点の文章ばかりでしたが少しだけ第三人者視点で書いてみました!

拙い所があったと思いますが頑張って色々と試そうと思ってます。

そういうの嫌だなって方ごめんなさいm(_ _)m

良いじゃん良いじゃん応援すんよって方はできればどうすれば上手くできるかコツを教えてくれると有難い!あ、某野球漫画のお姉ちゃんみたいに影ながら応援も嬉しいです!

今後もよろしくお願いします!!


誤字脱字があったら教えてください。できるだけ早めに直します。

なお、評価ポイントやコメントはくれると作者が五体投地するレベルで喜びます。

コメントは長文短文関係なく送ってくださいませ!!一言だけでも五体投地!!!!

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