疑問点
「ひーまーだーなー」
“王”への面会を申し込んで二日が経つ。
まだ許可は降りなかった。
「ねえ、ユカリさん」
「なんでしょう?」
「ユカリさんの家ってどんなところ?」
暇だからユカリに聞いてみた。
「“グラスタワー”の第30階層に居住を許されてる一家です」
「“グラスタワー”って、下級住民は出入りできないって本当?」
「“グラスタワー”は“コロニー”の中でも特権階級のみが出入りできます。居住を許可されるのはその中のほんの一部です」
「ユカリさんの家ってすごいんだねー」
「我がモエギ家は“コロニー”成立時から王様に支える家系です。わたくしがアイ様のお世話を任されているのも、血筋の七光です」
“親の七光”じゃなくて“血筋の七光”なんだ……
メイドとしての腕は一人前以上だと思うんだけどな……
「ユカリさんはお仕事ちゃんと出来てて偉いと思うよ」
「そうですか?」
ピコーン。「着信しましたー」
メールだ。今の?着メロ。
「えーっと……三時から面会。面会室へ赴くこと」
「王様と面会なさるのですね」
やっと許可が降りたのだ。
「アイ、面会を申し込むとは、何かあったのかね?」
「ボクはあなたに聞きたいことがあります」
面会室。また、モニター越しに“王”と話す。
「まず、あなたは何故面会もモニター越しにするのですか?」
「知らないのなら教えよう。私はAIだ」
「えっ!?AI!?」
“王”が人工知能だなんて……
「これは驚いた。てっきりモエギから聞いたものだと思っていた」
ユカリはそんなこと一言も言ってなかった。
「かつて人が求めた“統治者”、それが私だ」
「あなたは誰により創られたのでしょうか?」
「それを知るものは既にいない。知る必要もない」
“王”も知らないのかな?それとも知っていて言わないのか……
「早く本題を話せ。まさかそんなことを尋ねに来た訳ではないだろう」
それもそうだった。
「では、申し上げます。何故この“コロニー”には身分差があるのでしょうか?」
これがボクの目的だ。
「……何故それを聞こうと思った?」
「かつてボクがいた星の人類はみな平等でした。なぜ“コロニー”の人には身分差、格差があるのですか?」
「それが必要だからだ。他に理由などない」
「なぜ必要なのですか?」
「それを知ってどうする?」
「……」
……確かに、ボクが知っても変えられる力があるわけじゃない。
でも……
「それだけか?なら、退出したまえ」
画面越しの威圧的な物言いに、ボクは引き下がるしかなかった……