“コロニー”
ボクが目覚めてから3日が経つ。
ユカリが大抵のことをしてくれるおかげで、ボクは暇だ。
掃除とかしようとしても邪魔されるし……
外に行ってみよう。
「ユカリさん、ボク、一人でちょっと外に行ってきます」
「気をつけて行ってらっしゃいませ」
ユカリは基本的にボクがどこかに行くのを止めない。
行動を制限しないように言われているのかもしれない。
エレベーターで第1階層に降りる。エントランスを抜けて外へ。
やっぱり星とは空気も風景も違う。
上を走るのはクルマだろうか?
建物が沢山並んでいる。
歩いていたら、大きな服屋さんがあった。
あっ、あのマネキンの着てるワンピース可愛い!
淡い水色で、ふんわりしたスカートの裾にはレースが縫い付けてある。
一応、“お小遣い”として少しだけお金をもらったから、買えそうだ。
星にいたときの服一枚しかないから、汚した時に困る。(ボクたちは汗かかないから着替える必要性がないんだけど……)
「すみません、あれ、試着したいんですけど……」
店員さんに声をかける。
「はい、少々お待ちください」
店員さんがマネキンから服を脱がせて渡してくれた。
試着室で来ていた服を脱いで、鏡で見てみる。部屋に大きな鏡がなかったから……
……外傷や汚れは何一つない、新品のような体だ。
ワンピースも難なく着られ、結局お会計のあとタグを切ってもらって着て帰った。
「ただいま帰りました」
ボクの部屋。
「おかえりなさいませ」
ユカリが出迎えてくれる。
「新しく服を買ったのですね」
「うん。ボク、星にいたときの服しかなかったから」
「そのワンピース、お似合いですよ」
「えへへ……ありがとう」
また明日もどこかに行ってみようか。
居住地区を散歩するのもいいかな。
できれば早くユウを見つけたい。
次の日。
居住地区を散歩してまわることにした。
住宅街と言うより団地なのかもしれない。
普通の家がない。マンションばかりだ。
そんな居住地区の外れ、“スラム地区”にはボクは行ってはいけない。
危ないかららしいけど、気になるなあ。
今日はもう帰ろうか。
……あれ、ここどこ?
ボク、迷子になっちゃった!?
地図を見てもちゃんと記録してなくて途中でルートがぶっつり切れている。
……どうしよう。
と、とにかく来た道戻ってみよう!あと“グラスタワー”に向かって歩いてみよう!
「……何やってんの?」
考えてたら女の子に声をかけられた。
「え、えっと、迷子に……」
正直に白状する。
「家どこよ」
「“グラスタワー”」
ボクが答えた瞬間、女の子は驚き怯えた顔になった。
「……あなた、上流階級の……無礼な口を聞いて申し訳ありませんでした」
「へ?どういうこと?」
急に態度変わった。理解不能だ。
「なんでもいいから、案内して?」
「しかし……わたしのような下級住民は“グラスタワー”付近への敷地に入ることができません故に」
「じゃあ、キミが一緒にこれるところまででいいから」
「……わかりました」
商店地区まで案内してもらう約束で、歩き出した。
「失礼かと存じますが、あなた様のような方が何故居住地区へ……?」
「別に失礼じゃないよ。ボクは、人を捜しにきたんだ」
「人を……」
「“天笠優”。ずっとてるけど、見つからないんだ」
「……」
「ずっと待っても会いに来てくれないから、捜しにきたんだ」
「……よろしければ、わたしも捜索をお手伝い致します」
彼女の唐突な申し出に、少し驚いた。
「……いいの?」
「上流階級の方が“スラム地区”に立ち入るのは危険ですので、わたしが代わりに捜しましょう」
「ありがとうございます!そうだ、見つかったらどうやって教えてくれるの?」
「では、3日後にそこの喫茶店に来てください。そこでお話いたします。途中経過であっても」
「その時にちゃんとお礼するね」
「見つかれば。もうすぐ着きますよ」
すぐそこに昨日の服屋さんが見えていた。
「ありがとう!これ、送ってくれたお礼」
お饅頭を渡した。
「えっ、いいんですか?」
「気持ちだよ気持ち」
「では、頂きます」
女の子(名前聞くの忘れてた……)と別れて、“グラスタワー”に向かって歩き出した。
ボクは、少し考えて、“王”に尋ねてみることにした。
“コロニー”のことを。




