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「着いたよ」

遅くなりました><

予定では、もう一話戦闘シーンを入れるはずだったんですけど・・・、また今度で!


「着いたよ」


 ハンスの掛け声で一人ずつ馬車を降りていく。

 ユーリは座席の位置からして最後だった。

 乗客たちは「またどこかで会ったらよろしくね」「元気でな」など口々に別れの挨拶を告げてくる。

 ユーリも「楽しい旅でした。ありがとうございました」と丁寧に返し、彼らを見送る。

 最後に残ったのは、御者の二人とゼン・ディールとリドウェル・アルレインで、ユーリは動かない彼らに笑顔で手を振ると、意気揚々と歩き出した。

 背後から「また乗ってくれよ!」というハンスの言葉に、振り向いて「またねー」と返す。結局、一番話をしたのは老夫婦とハンスだった。彼は優男の見かけほどに調子の軽い男ではなく、良い意味で「いい男」だった。彼が向こうの世界にいれば、友情が築けただろう。


 ゼンとリドウェルは何か言いたそうだったが、結局何も言わないのだからと全力でスルーすることに決めた。Aランク冒険者の話など厄介事の匂いしかしない。


 馬車の旅は順調だったわけではなかった。魔物が次から次へと襲ってきた。確かに異常事態だわ、とユーリをして納得させるほど、朝に昼に夜に襲われた。100年前、彼女が勇者だったときは、ここまで酷くはなかった、と記憶している。いったい何が変わったのか。


 ちなみに、街が魔物に蹂躙されないのは遠い昔の偉大な魔法使いが強力な魔物避けの結界を張ったからである。結界の場所に街を作ったとも言う。


 ともあれ、魔物の襲撃のせいで行程は予定通りには行かず、2日目の夜営地に着いたのは深夜で、短い睡眠時間のあと、早朝出発し、予定では昼過ぎには王都に着くはずが、すでに夕方である。

 今夜の宿を探す意味でも彼らに関わっている時間はなかった。


 ・・・・・・ついてくるのは彼らの自由である。ストーカーのようではあるが。


 余談だが、この世界にはストーカーという言葉はない。それが変態行為だという認識がないのだ。なので、ユーリは前回の召喚時には「ヘンタイ」と連呼したものである。当時の王子相手に。


 宿は決まっていなかったので、冒険者ギルドを目指して歩いた。その近辺に安くて良心的な宿があるはずだ。

 彼女の目論見は当たっており、ギルドの周囲には冒険者目当てと思しき、あまり綺麗ではない宿屋が並んでいた。ただ一軒、ギルドの向かいに建っている建物だけが、ギルドと同程度に大きく整っており、ギルド以上に豪華そうだった。


 ユーリはその豪華そうな建物に向かって歩き、その隣のボロい宿屋に躊躇いなく入った。


 彼女は知る由もなかったが、その建物は高ランク冒険者専用の宿屋で、Bランク以上の者か、彼らのパーティメンバーか、または彼らの紹介した者だけが泊まれるのだった。

 つまり、ゼンとリドウェルは彼らなりに気を遣って、ユーリを綺麗な宿に泊まらせてあげようと思ったわけである。

 ただ、どんな理由があろうと宿屋に女性を連れ込むのは外聞が悪く、本人にも誤解されかねないため躊躇していた結果、彼女はさっさと一人で別の宿に入ってしまったわけだが。


「泊まりかね?」

 無愛想な親父である。50歳くらいか。客商売には絶対向いてないだろう。しかし、ユーリは気にしなかった。彼女の父親がそういうタイプなのである。


「はい。シャワーがあれば泊まりたいんですが」

「一泊銀貨5枚」

 必要事項しか言わない。ますます父親に似ている。ユーリは思わずにこりと微笑んだ。


 宿代もスヴェリと同じ。王都だけに高いと予想していたが、相場がそれほどでもないのか、この宿屋が安いのか、ありがたい値段である。


「じゃあ、とりあえず一泊で。食事つきますか?」

「一階食堂で6時から9時まで。銅貨5枚。朝食も同じ。部屋は2階の奥。鍵はこれ」


 ユーリは銀貨5枚を支払って、部屋へ向かう。


 「とりあえず3日分の汗と汚れを落とさないとね」と言いながらシャワーを終えると、髪を乾かすのも忘れて、そのままベッドに倒れるように横になった。

 戦闘には全く参加しなかったのに、非常に疲れていたらしい。食事の有無を聞いたのも忘れて意識が遠くなる。

 王都の賑わいも何のその、彼女は安心したように眠りに落ちた。






 翌朝、ユーリが目覚めたのは6時だった。朝日はすでに昇っている。

 同時に、腹の虫がぐぅと鳴いた。


「あちゃー。・・・・・・誰も聞いてないからいいか」

 僅かに頬を赤く染めて呟く。


 ユーリはいそいそと身支度を整えた。

 着替えはかばんの中にたくさんある。100年前のもの、実年齢では5年前のものだが、サイズ調整の必要はなかった。胸回りにも余裕があることに凹んだのは、ここだけの話だ。


 1階に下りると宿屋の主人と目が合った。


「おはようございます」

「おはよう」

 挨拶も素っ気ない。


「朝食お願いします」

「わかった」

 銅貨5枚を受け取り、厨房へ消える。どうやら親父一人で経営しているらしかった。

 いくら何でもそれは大変だろう、と思いながら食堂へ入り、彼女は再び首をかしげた。食堂に彼女以外の姿がなかったからである。


「んー?」

 たまたま今の時間にいるのが一人だけなのか、それとも客が一人しかいないのか。

 時間的には冒険者が朝食を取るはずの時間。この宿屋には少なくとも6部屋はある。

 しかし、ギルドのほぼ真ん前という立地で閑古鳥などということがあるだろうか。建物は古いが清潔に掃除されており、シャワーもある。とすると、あとは食事の味ぐらいだが。


「まぁ、頼んだものは仕方ないよねー」

 小声で己に言い聞かせるように呟き、ガラガラの食堂の手近なテーブルにつく。

 空腹は何よりの調味料と言うし、食べられないことはないだろう、とユーリが納得したとき、宿の主人は料理を運んできた。


 この世界は異世界の例に漏れず、米がない。つまりパンが主食である。そのパンは焼きたてなのか、湯気が上がっている。他に、スープ、サラダ、肉のソテー、果物のジュース。どれもこれも美味しそうである。

 その匂いに耐えられず、ユーリは物凄い勢いで食べはじめた。


 定位置のカウンターに戻った宿の主人も驚いた表情を隠せていないが、彼女は食事に忙しく、全く気づいていない。


「おいしー! スープも美味しいし、サラダは新鮮だし、肉の味付けもバッチリ。それにこのパン! この国でこんなにやわらかいパンを食べたの初めてかもー!」

 大興奮である。

 最後にジュースを飲んで「おいしかったー! しあわせー!」と叫び、宿の主人と目が合う。


「あ」


 親父は微かに笑った。


「気に入ってもらえたならよかった」

「うん。すごい美味しかったです! あと7泊追加いいですか?」


 ユーリがそう言うと、彼は困ったように眉間にしわを寄せた。


「何か問題でも?」

「私はいいのだが・・・・・・」

「あたしが困る?」

「ああ。だからやめておけ」


 しかし。


「じゃあ、問題ありません。7泊追加で」

 にっこりと笑うユーリ。


 親父は目を瞠った。


「宿自体にも食事にも問題がないのに、宿泊客が困るって、他の宿屋の連中から嫌がらせを受けるぐらいですよね。だったら気にしなくていいです。あたし、こう見えても強いんですよ?」

 もちろん、全く強そうには見えない。


「それに、ここのご飯、気に入ったんです」


 最後のセリフに、宿屋の主人は頬を緩めた。自分が作ったものを美味いと言われて嬉しくない者はいない。

 主人は宿屋の入口を閉めるとカウンターを通り過ぎ、食堂のユーリが座っているテーブルの向かい側に腰を下ろした。


「事情だけ説明しておこう」








ありがとうございました。


そして進まないストーリー。。。

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