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S197 4月10日(日)

ゆっくりしたい休日流れを、突然変えられてしまう。

プルミアの買い物に、嫌々付き合わされるラディアス。

さわやかな晴れなのに、その晴れは憂鬱の晴れとなってしまう。

そんな状態で、にわか雨の追い討ち。

ラディアスの溜息は絶えない。

10:20買い物前のプルミア----------------


少し遅い朝食を終えたラディアスが台所を出ると、プルミアが寄ってくる。


プル「ラディ、買い物、買い物。買い物行くよー。」


ラディ「ええ?」


プル「買い物。」


ラディアスが非常に嫌な顔をする。


ラディ「最近、しょっちゅう行ってない?」


プル「そう?」


投げやりに答えるプルミア。


ラディ「この前だって、大量の荷物を持って帰ってきたじゃんか!」


プル「そう?」


ラディアスの言葉を完全に聞き流しているプルミアに、ラディアスが呆れる。


ラディ「そうだよ・・・」


嫌な顔をするラディアスを見て、プルミアは実力行使を始める。


プル「そんなことないってば!」


ラディ「あだだだ・・・」


プル「ほらほら、行くわよ。」


ラディ「なんで、オレが・・・」


プル「いいから、行くんだってばっ!!」


無理やり首を掴んで玄関に向かうプルミア。


ラディ「なんでオレが!?」


プル「いーくーわーよー!!」


ラディ「だから・・・なんでオレがー!?」


プル「うるさいわね、行くったら行くのよっ!!」


ブンッ!


プルミアが力任せにラディアスをぶん投げる。


ラディ「うわわっ!」


ドテッ!


ラディ「てて・・・」


プル「靴履く。」


ラディ「・・・ったく・・・強引な・・・」


13:30ラズトパのある日----------------


パテンティナ通りの中心部。


ラディアスはプルミアに腕を掴まれ、引きずられるようにプルミアの後ろを歩いている。


ラディ「もう疲れたんだけど・・・」


プル「はぁ? 何言ってんの? まだこれからでしょ?」


ラディ「昨日もかなり疲れたんだよ・・・」


プル「・・・あ。」


ラディ「勘弁してほしいんだけど・・・」


プル「ラズトパ、入ってないかしらねー?」


中心部の一角にあるに宝石屋。


そのショーウィンドウを食い入るように見ているプルミア。


ラディ「人の話、聞いてないね。」


プル「・・・あ。」


ショーウィンドウを見ていたかと思うと、とっさに宝石屋に入るプルミア。


ラディ「ちょ、ちょっと・・・」


ラディアスも追って入る。


ラディ「・・・ラズトパって、姉さんの属性石だっけ?」


プル「そうよ。ラズベリートパーズ。」


辺りに目を利かすプルミアの後を、ラディアスがボーっとしながらついていく。


プル「ラズトパの0.5ctくらいだったら、数千TalGでいけるわよ。」


ラディ「ふーん。」


なんとなく聞いていたラディアスだったが、値段に反応する。


ラディ「でも、高いな。それを増設して、どれくらい魔法力が増えるわけ?」


プル「大抵、この辺のだと30molから50molくらいね。」


ラディ「結構増えるんだなー。オレも増設したいなぁ。オレの確か100molだし・・・」


プル「あーっ!!」


突然、大声を上げるプルミア。周りの客の視線がプルミアに向けられる。


ラディ「は、恥ずかしいなぁ・・・」


店員「ラズベリトパーズ、0.82ctですよ。」


プルミアの大声に反応した店員が、すかさず説明に入ってくる。


店員「当店に0.5ct以上のラズベリトパーズが入荷されたのは、数年ぶりでして・・・」


プル「容量、容量は?」


店員の話をぶったぎって質問をするプルミア。


店員「ぇと・・・推定値で320molです。」


プル「ほ、ほんとに!? これ・・・い、いいかも・・・」


店員「結晶の状態も非常に綺麗で、かなりの上物ですよ。」


店員のオススメに、プルミアはかなり惹かれている。


ラディ「ね、姉さん・・・?」


………。


財布を取り出し、じっと中身を覗くプルミア。


………。


ニコッ☆


プル「ラディ、お金貸して。」


笑みを浮かべるプルミア。


ラディ「ええー!?」


プル「借りるだけだから!」


ラディ「はぁ・・・どんくらい足りないのさ?」


プル「10000でいいからっ!」


ラディ「はあ!? そんなに持ってないって!」


プル「・・・じゃ、5000でいいわ。」


チラッと自分の財布を覗き、確認するプルミア。


ラディ「うぅ・・・ちゃんと返してくれよ。」


プル「分かってる分かってる。」


16:30歓喜を流す雨----------------


一日中ぶらぶら商店街を回り、やっと岐路に立つプルミアとラディアス。


プル「んー、今日はいい買い物したわねー。」


ラディ「姉さんだけね。」


プル「そうなの?」


ラディ「そうだよ!」


プルミアの冗談だかなんだか分からない返事に、呆れっぱなしのラディアス。


ラディ「なんか時間を無駄に使ってる気がする・・・」


プル「なんか言った?」


ラディ「い、いや・・・」


プル「まー、ラディも、もう少し私の役に立たないと、生きてる意味ないでしょ?」


ラディ「はあぁ? なんで?」


プル「なんでもよ。当たり前でしょ?」


ラディ「全然、当たり前じゃないし。意味分かんないし。」


プル「ま、あんたには難しいかもね。」


ラディ「難しいとかそういうの、関係ないし・・・」


………。


ポツ・・・


プル「ん?」


ポツポツ・・・


プル「あ、雨?」


ドザーーーーァァァァァ!!


ラディ「う、うわあ!!」


突然の雨に慌てて走る二人。


プル「何よ、全くっ!!」


ラディ「わ、罠としか思えない・・・」


なんとか屋根の下に退避すると、プルミアが叫びだす。


プル「あーっ!! ズボンの裾が泥だらけになってるぅ!!」


プルミアがズボンの裾をまくる。


プル「ゆ、許せないっ!!」


ラディ「あーぁ、白地じゃ、洗っても落ちないだろうなぁ。」


ゴンッ!


ラディ「あたっ! オ、オレに当たるなって!」


プル「サ、サイアクよ・・・」


17:00肉まん争奪戦----------------


ラディ「ふぅ・・・いきなり雨だもんなぁ・・・」


タオルで頭を拭きながら、台所に入ってくるラディアスに、フィリアが声をかける。


フィル「肉まん、蒸かしたけど、食べる? あと一個。」


ラディ「お、おぉ。貰う貰う。」


プル「貰ったぁ!!」


ラディ「うぎゃ!!」


後ろからプルミアのタックルをくらい、なぎ倒されるラディアス。


ガンッ!!


リアナ「ふわぅぅ!」


ラディアスの腰が食器棚の角にぶつかり、それを見ていたリアナが目を伏せる。


ラディ「あっがー!!!! ・・・あががが・・・こ、腰が・・・か、角に・・・」


よろめきながら腰を押さえ、苦しむラディアス。


それを他所に、肉まんを頬張るプルミア。


プル「あったか~ぃ。」


ラディ「あ・・・悪魔・・・」


ラディアスがテーブルに片手をつけ、がんばってイスに座ろうとする。


ラディ「いたたた・・・」


・・・!


ラディ「うぉ!」


手がすべり体勢を崩したラディアスが、プルミアの腰に体当たりをする。


プル「わ!」


………!?


ドカッ!


とっさにラディアスを蹴り飛ばすプルミア。


ラディ「がはぁっ!」


数メートル吹っ飛び転がっていく。


リアナ「ふわぅぅ!」


リアナがまた目を伏せる。


プル「な、何やってんのよ・・・バカ・・・」


ラディ「うぅぅ・・・」


フィル「肉まん、もう一個蒸かす?」


19:10リアナとチェスチェス----------------


夕食を食べると、一日の疲れが出始めるラディアス。


ふらふら二階を歩いていると、後ろからリアナが掴んでくる。


リアナ「おに~ぃちゃん!」


ラディ「ん?」


リアナ「チェスするですー。」


ラディアスにしがみつき、服を引っ張るリアナ。


ラディ「今日、疲れてるんだけど・・・」


リアナ「えーえー、そんなことないよぉ。」


ラディアスの服を上下に引っ張るリアナ。


ラディ「引っ張るなって。」


リアナ「チェスチェス~・・・」


ラディ「だから・・・疲れてるんだって・・・」


リアナ「そんなぁ・・・おにーちゃん、疲れてないですよー。」


ラディ「それはさ、おまえが決めることじゃなくないか?」


リアナ「おにーちゃんならダイジョブだよー。ねー、ねー。」


ラディアスの腰にしがみつくリアナ。


リアナ「うぅ~・・・一回だけだよー。」


リアナの頼みを断れず、説得に負けるラディアス。


ラディ「・・・じゃぁ、一回だけだぞ。」


リアナ「うんっ!」


リアナはラディアスの手を引っ張り、自分の部屋に連れて行く。


リアナ「絶対負けないよー。」


ラディ「引っ張るなーって!!」


リアナ「ぜーったい負けないー。」


ラディ「手加減はしないからな。」


19:40まだまだだな----------------


リアナが恐る恐る駒を動かす。


ラディ「いいのか?」


リアナ「はう! ちょちょちょ、ちょ待ってれすー!」


ラディ「はいはい。」


リアナ「うううぅ~・・・」


………。


コト・・・


再びリアナが駒を動かす。


ラディ「ん? いいのか?」


リアナ「はっ、はうあ! ちょちょ、もちょっとー!!」


ラディ「しょうがないな・・・」


リアナ「はううぅ・・・」


………。


リアナ「こ・・・が・・・で・・・ですぅ・・・れすよぉ・・・」


………。


コト・・・



ラディ「いいのか?」


コ、コク・・・


リアナが僅かに頷く。


ラディ「はい、チェックメイト。」


リアナ「はうあっ!!」


ラディアスがリアナのキングを取り上げる。


ラディ「まー、まだまだだな。」


リアナ「はうぅ・・・」


ラディ「でも、前よりかなり強くなったんじゃないか?」


リアナ「はうぅぅ・・・」


今にも泣きそうなリアナの頭を軽く叩くラディアス。


ぺしぺし。


ラディ「また暇な時にな。」


リアナ「あ、明日はぁ・・・?」


ラディ「明日・・・は、疲れてるだろうな・・・学校の行事があるからな。」


リアナ「はう・・・」


ラディ「明後日・・・明後日なら大丈夫かな・・・」


リアナ「ほ、ホントれすかぁ・・・?」


ラディ「あ、あぁ。約束。」


リアナ「はう、やーくーそーくー。」


ラディ「分かったよ・・・約束・・・」


20:30レインフォレスト----------------


カチャ。


プルミアが廊下をキョロキョロ見ながら、ラディアスの部屋に入ってくる。


プル「ラディ、ラディ、ちょっと。」


ラディ「ん?」


静かにドアを閉め、ラディアスの部屋に入る。


ラディ「な、何?」


プルミアがいつもとは違う剣を振り回し、ラディアスに近寄ってくる。


ラディ「うわわ、な、なんだよー!?」


プル「これ、あげる。」


ヒョイっと持ち替え、剣の柄をラディアスのほうへ向ける。


ラディ「剣?」


プル「そうよ。これで少しは練習しなさいよ!」


ラディ「あ、あぁ。」


受け取ると、ラディアスが剣を握り、一振り振ってみる。


………。


ラディ「なんか・・・いい感じだな。」


プル「でしょ?」


・・・?


いつの間にかラディアスの部屋に入ったフィリアが後ろでじっと見ている。


ラディ「あれ? フィリア?」


フィル「ダメだよ。」


ラディ「ん?」


そう言うと、さっとラディアスから剣を取るフィリア。


ラディ「ぉろ?」


プル「フィリア、邪魔しないでよね。」


プルミアも剣を掴む。


フィル「普段から持つ必要ないよ。」


ラディ「う、う~ん・・・」


プル「離しなさいよ!」


始まりそうな雰囲気に戸惑うラディアス。


フィル「お姉ちゃん、お兄ちゃんに変なことしないで。」


プル「変じゃないでしょう? 剣を持つくらい! 普通でしょうが!?」


フィル「お兄ちゃんはいいの。」


プル「あんたが決めることじゃないでしょうが!!」


ラディ「お、おい・・・」


フィル「いいの。」


プル「良くない!」


フィル「いいの。」


プル「良くないっ!!」


フィル「いいの。」


プル「良くなーぁいっ!!!!」


ラディ「頼むからやめてくれ~! 疲れが余計溜まる!!」


困り果てたラディアスが叫び、至近距離の二人を引き離す。


プル「とにかくー、持ってればいいのよーっ!!」


フィル「ダメだよ、お兄ちゃん。」


プル「ほら!」


フィル「ダメ。」


プル「ほら!」


フィル「ダメ。」


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