S197 4月5日(火)
入学式前日。
時期はずれの台風が来ているらしく、非常に強い風が吹いている。
空も暗く、昼間でも電気をつけないといけないくらいだ。
新しい地に引っ越してきたラディアス一家。
・・・彼らの新しい生活が始まる。
12:30リアナに起こされた正午過ぎ----------------
風によってガタつく窓の音。
そんな中、ラディアスは全く気にせず眠っている。
………。
コト「あなたしか・・・いない。あなたしか・・・」
その鳥がそう呟くと、次第に視界が歪んでいく。
ラディ「ん・・・」
・・・ドカッ!!
ラディ「ぐぉぁっ!!」
リアナ「おにーちゃん! もうお昼だよぉ!」
布団の上から抱きつくリアナ。
リアナ「はーやくおーきるぅですぅー!」
さらに強く締めつける。
ラディ「ぐえぇ・・・ぐるじぃ・・・」
リアナ「うぅにゅぅ~!」
ラディ「うげえぇ・・・」
リアナ「おにーちゃん、起きたぁ?」
ラディ「うぅぅ・・・、お・・・起ぎだぁ・・・」
リアナ「ホントに?」
ラディ「ううー。」
ラディアスが声にならない声で返事をする。
リアナ「ホントにぃ?」
ラディ「うぅううー。」
リアナがラディアスの布団から降りる。
リアナ「早く起きるですよぉ~。」
ラディ「う・・・と、鳥・・・? ・・・あれ?」
何か思い出そうとするラディアス。
リアナ「はう?」
ラディ「夢・・・?」
リアナ「おにーちゃん!」
ラディ「・・・ん?」
リアナ「おにーちゃん、お昼ごはんあるから、早く降りてきてねっ!」
ばたんっ!
部屋の出ざまに添えたリアナの言葉に、なんとも鈍い返事をするラディアス。
ラディ「うぅぃ・・・眠ぅ・・・」
12:45リアナの昼食大作戦----------------
なんとかベッドから起きあがり、階段を降りるラディアス。
ラディ「なんか・・・疲れてんな・・・はぁ・・・」
台所に入ったラディアスに、リアナが声をかける。
リアナ「おにーちゃん、遅いよぉ~。さめちゃうよ~。」
リアナが作ったと思われる昼御飯が、台所のテーブルに置かれている。
しかし御飯というより、むしろ芸術品といったほうがいいようだ。
リアナ「は~い、ゴハン~。」
ラディ「え・・・? こ、これ・・・ご飯・・・?」
席についたラディアスは、ウンザリ顔になっている。
リアナ「うん!」
ラディ「食べるの?」
リアナ「うんっ!」
ラディ「オレが?」
リアナ「うんっ!!」
妙に上機嫌なリアナに戸惑っているラディアス。
ラディ「マ・・・マジですか・・・?」
リアナ「おにーちゃんのために作ったんだよぉ。」
ラディ「ううぅ・・・」
逃れられないと悟ったラディアスは、意を決し、一口・・・
………。
リアナ「おいしい? どう?」
ラディアスの口から茶色い液体が垂れる。
ラディ「うごっ・・・ぐ・・・」
………。
リアナ「ダメ・・・?」
ラディ「ごくぅっ・・・!!」
ラディアスの喉から異常な音が聞こえる。
………。
13:30リアナと食器洗い----------------
インスタント食品で、なんとか昼食をすませた2人。
そして新たな戦い・・・食器洗いが始まる。
ラディ「もっと、ちゃんと教えてもらってから作らないとな。」
リアナ「あうぅ・・・」
リアナは返事をしながら洗剤を大量に出している。
ラディ「おわぁっ! ・・・そんなに洗剤を使わなくても、泡は立つから。」
リアナ「あううぅ・・・」
そして、黙々と洗い物をする2人。
………。
ラディ「な・・・なんじゃこりゃぁ!!」
フライパンを持ったラディアスが突然叫び、リアナがビクっとする。
ラディ「なんちゅう焦げ・・・」
フライパンには、なんとも言えない黒い物体がへばりついている。
リアナ「あうあうあうぅ・・・」
ラディアスがリアナに見せながらぼやく。
ラディ「いいか? フライパンはな・・・はぁ・・・」
説明しようとフライパンを見たラディアスが、溜め息をつく。
ラディ「油をひいてから使わないと、こんな感じに焦げて、へばりついちゃうんだよ。」
リアナ「はううぅ・・・」
ラディ「これは地道に削り落とすしかないなぁ・・・はあぁ・・・」
リアナ「ごめんなさい・・・ですぅ・・・」
ラディ「んー・・・まぁ、でも最初はしょうがないよな・・・うん。」
リアナ「はう・・・」
18:302人の妹----------------
フィリアは帰ってくるとすぐさま台所に行き、夕食の準備を始める。
フィリアの帰りに気付いたラディアスが1階に降りてくる。
ラディ「フィリア・・・えーと・・・」
口籠もるラディアスの前で、フィリアは黙々とキャベツを切っている。
ラディ「フライパン・・・なんだけど・・・す、すまん・・・」
フィル「うん?」
フィリアが手を止める。
ラディ「フライパン、見ただろ?」
焦げたフライパンの説明をフィリアに始めるラディアス。
フィル「あ・・・うん、今見たよ。」
ラディ「キレイにしようと思ったんだけど・・・なかなかキレイにならなくて・・・」
フィル「うん。別にいいよ。」
フィリアがそっけなく返事をする。
ラディ「あ、あぁ・・・でも使うだろ・・・?」
フィル「うん。あ、でも・・・今は使わないから、いいよ。」
ラディ「あぁ・・・ホントすまん。」
フィル「うん。」
ちょうどそのとき、ドタバタしながらリアナが台所に入ってくる。
リアナ「ふえぇ・・・おねぇちゃぁ~ん・・・」
リアナの声に気づいているが、フィリアはマイペースで鍋をかき回している。
リアナ「失敗しちゃったですぅ・・・ごめんなさい・・・です。」
フィル「うん。」
リアナ「今度は・・・失敗しないで作るですっ!」
フィル「うん。」
リアナ「がんばるですー!」
フィル「うん。」
19:30買いすぎのプルミア----------------
辺りは暗くなり、家の階段も真っ暗で何も見えなくなっている。
ラディ「電気つけるか・・・」
パチ。
ラディアスが階段の電気をつけ、階段を下りる。
・・・どがしゃ~ん!!
ラディ「おわわ!?」
階段下で騒がしい音がし、少し焦るラディアス。
プル「うぅぅ・・・」
ラディ「さ、騒がしいなぁ・・・」
1階に降りてきたラディアスが、現場に遭遇する。
プル「あ、ラディ、ラディ、ちょっと来てっ!」
黙殺して通り過ぎようとするラディアスに、しつこく声をかけるプルミア。
プル「ちょっと!! ラディっ!! ラディってばっ!!」
ラディアスがしぶしぶ返事をする。
ラディ「姉さん、うるさいって。」
プル「これ、部屋の前に置いといて!」
いくつもの箱をまとめてラディアスのほうにぶん投げる。
・・・どがしゃ~ん!!!!
ラディ「ぐわわわぁ~!!」
荷物の下敷きになるラディアス。
プル「お願いね~。」
ラディ「あいたたぁ・・・なんだよ、これ!? ・・・お、おもーっ!」
プル「男なら、それくらい文句言わずに持ちなさいよね。」
ラディ「ちょ、ちょっと! ね、姉さん!?」
………。
しぶしぶ大量の荷物を2階に持っていくラディアス。
ラディ「な、なんなんだ・・・この重さ・・・何買ってんだかなぁ・・・」
19:45夕食一家団欒?----------------
しぶしぶプルミアの荷物を置いてきたラディアスが台所に入ってくる。
不機嫌そうなラディアスに、プルミアがちょっかいを出し始める。
ラディ「あぁ、いってぇ・・・」
プル「どしたの?」
ラディ「あの荷物で足を打ったんだよ。」
プル「ドジね。」
ラディ「姉さんが荷物投げるからだよっ!」
ラディアスがプルミアに文句を言っている間に、リアナが摘み食いをしている。
リュン「こら。まだ、『いただきます』してないでしょ?」
リアナ「は、はうぅ・・・ごめんなさぁ~い・・・」
一方で、ラディアスとプルミアは、まだもめている。
プル「もう少し、頼りになるようにならないとダメよね。」
ラディ「頼りになるとか、そういう問題じゃ・・・」
そこに、フィリアが口を挟む。
フィル「ご飯、冷めちゃうよ。」
ラディ「!・・・あ、あぁ・・・」
リアナ「いぃただぁきまぁ~すですぅ。」
リュン「いただきます。」
プル「さぁめちゃうよぉ~だって、ラディ。」
ラディ「わ、分かってるよっ!!」
リュン「いい加減にして、食べなさい。」
!
プル「は、は~い。」
ラディ「はぁ・・・いただきます・・・」
21:15明日への意気込み----------------
食事を済ませたラディアスは、ひとり部屋に行き、ベッドに横たわる。
ラディ「明日か・・・そういや、4年ぶりだったな・・・」
ラディ「久々にシーフィアに会えるんだ・・・」
ラディアスはベッドから起き上がると、机の上にある写真立てを手に取る。
その写真立てには、ラディアスとシーフィアが写っている。
ラディ「同じクラスになれたらいいんだけどなぁ・・・」
ラディ「ふふ・・・」
プル「なーに、ニヤけてんだか。」
………。
………?
ラディ「の・・・の・・・、のわああぁぁーー!!!!」
予想以上の驚きぶりに、覗き込んだプルミアもビクっとする。
プル「な、何よ!? そんなに驚くことないでしょうがっ!!」
ラディ「は、入る時にノックしてくれよっ!!」
プル「だったら、鍵をかけとけば、いいじゃない。」
ラディ「オレの部屋だけ壊れてるって、言っただろ!?」
ラディアスの言葉に、何かを思い出そうとする素振りを見せるプルミア。
プル「あ、あー、そうだったわね。」
ラディ「はあぁ・・・まったく・・・なんなんだよ・・・」
プル「残念ね。それじゃ、あなたのプライバシー、保護できないわよ。」
ラディ「はぁ!?」
ラディアスの溜め息に一言添えたプルミアは、そそくさとドアのほうへ行く。
プル「お風呂、空いたから入っちゃいなさいよ。」
ラディ「ちょ、ちょっと! なんだよ!? プライバシーって!?」
・・・バタン。