S197 4月20日(水)
落ち着き始めるラディアス達。
部活で魔法の修行をしつつも、自分のできることの少なさに、蟠りを覚えるラディアス。
その気持ちが、剣術を学ぶ意志となる。
14:25ここ読んで実践----------------
慌しくエディスが教室に入り、ラディアスの所に行く。
ラディ「あ、先生、ども・・・って、あ。」
さっとラディアスの本を取り上げ、忙しくページを捲る。
ぺらぺらぺら、どんっ!
ラディ「!?」
エディ「ここ! ここ、読んで実践しておいて。」
エディスがラディアスの魔法の本を開き、とあるページをラディアスに押し付ける。
ラディ「あ、は、はい。」
………。
ラディ「先生、すみません、読めません。」
エディ「! ああぁ~・・・そうだったわ・・・不便ねー。」
ラディ「は、はぁ。まぁ・・・」
エディ「頗る不便です。」
ラディ「す、すみません・・・」
エディ「古語、覚えられない?」
ラディ「い、いやぁ・・・それはちょっと・・・厳しいです・・・」
エディ「じゃぁ、ラディアス君、魔法はお預け。」
ラディ「えぇっ!?」
エディ「先に古語を叩き込みましょう。」
ラディ「そ、そんな・・・」
エディ「冗談です。」
ラディ「ほ・・・」
エディ「でも、近いうちに古語も覚えてもらいますからね。」
そう言うと、エディスが本を見ながら黒板に書き出す。
カツカツカツカ・・・カツカツカッカッ!!
エディ「はいっ!」
ラディ「・・・あの?」
エディ「パラメータ指定、覚えておいて。」
ラディ「はぁ。」
エディ「時空のフェザー魔法にはパラメータ指定も組み込まれているの。」
ラディ「はぁ。」
プル「絶対に分かってない返事。」
すかさずプルミアが突っ込みを入れる。
ラディ「う・・・そ、そういう姉さんは分かるの?」
プル「まぁ~ね~。」
ラディ「ホントに?」
プル「ホントよっ!! ったく・・・」
プルミアがさっと魔法を刻む。
ササ・・・サ・・・
ボンッ!
ラディ「うおっ!」
プルミアの掌から一瞬、漆黒の炎が現れる。
プル「私のブラックファイアは後から出力調整すんのよ。分かった?」
エディ「うん、反論のしようがなく大正解。」
プル「分かった?」
ラディ「うぐ、な、なんか悔しい・・・」
14:35ふぇざーパラメータ----------------
エディスが黒板いっぱいに字を書き出す。
エディ「上から順に書いておいたから、これを唱えてみて。」
『Spreading』 『Radius』 『Dimension』
ラディ「上は・・・ス、ス・・・? スピード?」
プル「Rが入ってるし、スピードはEEでしょうが・・・」
ラディ「そ、そうか・・・」
エディ「スプレディング、レイディウス、ディメンジョン。」
ラディ「スプレディング・・・?」
エディ「スプレディングは多分、魔法を拡散して放出できるパラメータだと思うわ。」
ラディ「はぁ。」
エディ「レイディウスは、魔法の軌道を変えるパラメータね。」
ラディ「弧を描く軌道になるってことですか?」
エディ「そうね。珍しく正解。」
ラディ「珍しくって・・・」
プル「先生、答え言ってるようなもんじゃん・・・」
エディ「そうでしたね。今の正解は無効ってことで。」
ラディ「無効・・・」
エディ「で、レイディウスだけど、これは慣れないと命中しないかもしれないわね。」
カツカツ。
エディ「最後のディメンジョンっていうのは、説明が載っていないわ。」
エディ「だけど、次元に関する何かだと思うわ。」
ラディ「じ、次元て・・・」
エディ「唱え方は右側に書いておいたから、それに習ってやってみて。」
ラディ「こ、これですか・・・?」
エディ「そうです。」
ラディ「これも良く分からないんですけど・・・?」
エディ「えっ!? ・・・これやったことない?」
ラディ「い、いや・・・ちょっと・・・」
シュリ「入試レベルではやらないようですよね・・・」
シフ「そうだよねー・・・これからやると思うんですけど・・・」
エディ「これからか・・・そっか・・・」
ラディ「ほ・・・」
エディ「なんとなく分からない?」
ラディ「え?? いや・・・全く・・・」
エディ「ま、まいったわね・・・」
14:45実践あるのみ----------------
ラディアスが必死で魔法を刻みはじめる。
エディ「フェザー魔法のあとに、加えて唱えて!」
ラディ「うぅ・・・と、とりゃっ!!」
パシッ!
普通に直線に飛んでいく。
………?
ラディ「あれ? 何も変わらない・・・」
エディ「パラメータを受け付ける時間は限られるから、その時間内に追唱するのよ。」
ラディ「む、難しいなぁ。」
サササ・・・
ラディ「ていっ!」
パシシッ!
再び普通に直線に飛んでいく。
ラディ「おかしいなぁ・・・」
シュリ「メインの部分とパラメータの部分の間隔を空けないようにしたほうが・・・」
ラディ「そうだけど、慣れないとなぁ・・・」
エディ「シュライク君の言う通りね。」
ラディ「は、はあ。」
エディ「さすがシュライク君、誘導系の魔法を使ってるだけあるわね。」
シュリ「あ、は、はい。」
ラディ「シュライクの魔法と同じなんですか?」
エディ「んー・・・パラメータを受け付ける魔法として、同じってこと。」
シュリ「そうですね。」
エディ「シュライク君のは、完全に発動した後に受け付ける、ちょっと別物なんだけど。」
ラディ「難しい・・・」
エディ「アクティブレシーブ型って言うんだけど、それもそのうち授業でやるわよ。」
シュリ「僕の場合、限られた時間内に唱える必要はないので、その分簡単ですが・・・」
ラディ「いいなぁ。」
シュリ「すみません・・・」
エディ「でも、コントロールはシュライク君の魔法のほうが100倍難しいわよ。」
ラディ「はぁ、そうだよなぁ。姉さんをあれだけ追い詰めてたしなぁ。」
シュリ「ははは・・・見事に避けられてしましましたけどね。」
ラディ「なんて魔法だっけ・・・?」
シュリ「アクアドロップです。」
ラディ「アクアドロップか・・・」
エディ「使いこなすには、実践あるのみ。とにかく唱え続けること。」
ラディ「は、はい。」
エディ「できるまで、帰っちゃダメです。」
ラディ「ええ!? はぁ・・・」
15:10思い出すエディス----------------
別の所で練習していたプルミアが戻ってくる。
プル「・・・?」
エディスにボソッと話しかける。
プル「そういえば、先生、急いでなかった? 終わったの?」
エディ「ああっ!!」
ビクッ!
無言でプルミアの顔を見つめるエディス。
………。
エディ「職員会議・・・忘れてたわ・・・」
ラディ「はぁ。」
時計を見てため息をつくエディス。
エディ「こりゃ教頭に怒られるわね・・・」
プル「あ~あ、ラディのせいね。」
ラディ「オ、オレなの?」
エディ「ラディアス君が95%悪い。私は5%油断しました。」
プル「それで。」
パチ。
プルミアがエディスに合わせる。
ラディ「ほとんどオレのせいじゃん・・・」
エディ「じゃ、ちょっと行ってくるわね、叱られに・・・」
プル「は~い。」
トテテテテ・・・
………。
ラディ「姉さん、やけに先生とウマが合ってるのは気のせいですか?」
プル「え? そう?」
ラディ「そうとしか思えない。」
プル「気のせいよ。」
ラディ「そんなことないって・・・」
プル「じゃ、あんたのせい。」
ラディ「なんでオレのせいなんだよ?」
プル「ラディが100%悪い。」
ラディ「なんで・・・」
プル「シュライク君、ちょっと模擬戦やろ。」
トトッ・・・
シュリ「あ、はい。やりましょう。」
ラディ「聞いてないし・・・」
18:10ラディアスの頼み----------------
夕飯作りが一段落したフィリアが台所のイスに座っている。
ラディ「フィリア、ちょっといいか?」
フィル「うん。」
ラディ「剣術・・・教えてくれないか?」
フィル「?」
首を傾げるフィリア。
ラディ「フィリアの・・・時間のあるときでいいからさ。」
フィル「うーん・・・それは・・・無理だよ。」
!
ラディ「ダメ・・・?」
フィル「私には教えられないよ。」
ラディ「オレは・・・力が欲しい。」
フィル「・・・。」
ラディ「フィリアがあんな力を持っているのに、オレはあまりにも無力だった。」
フィル「わ、私には無理だよ・・・」
いつもよりも慌てた感じで答えるフィリア。
ラディ「教えられるくらいの力、持ってるんだから・・・」
フィル「教えられないよ。教え方も・・・分からないし・・・」
ラディ「オレはもっと強くなりたい。」
ラディ「強くならないとリアナを・・・誰一人守ることができない!」
フィル「お、お兄ちゃんが・・・守らなくても・・・」
ラディ「それじゃダメなんだよ。」
フィル「うーん・・・」
ラディ「いざって時に、守れるくらいの力がほしい!」
フィル「うーん・・・」
ラディ「頼むッ!!」
フィル「・・・。」
………。
フィル「どうしても・・・?」
ラディ「あぁ。」
フィル「うん・・・じゃぁ・・・少しなら。」
ラディ「あぁ、分かった。ありがとう。」
20:00ラディアスとフィリアの剣の修行----------------
ラディアスとフィリアが庭に出る。
ラディ「おし、始める?」
フィル「うん。」
………。
………。
ラディ「え?」
フィル「うん?」
ラディ「あ、あのさ・・・オレはどうすればいいんだ?」
フィル「どうしたいの?」
ラディ「どう・・・って?」
フィル「何をすればいいの?」
ラディ「オレに言われてもなぁ。オレは教わるほうなんだし、分からん。」
フィル「私も分からないよ。」
………。
ラディ「剣が上達するには、剣の練習か? 練習試合?」
フィル「そうかもしれないね。」
ラディ「学校でやってることをやればいいのか?」
フィル「うん。」
考えているの考えていないのか分からない表情でいるフィリア。
………。
フィル「じゃぁ・・・お兄ちゃん、攻撃してきて。」
ラディ「あ、あぁ。」
フィリアがラディアスに剣を渡す。
ラディ「うりゃ。」
ガシッ!
フィリアがラディアスの攻撃を素手で受け止める。
!!
ラディ「お、おい! フィリア、大丈夫か!?」
フィル「うん?」
ラディ「手は・・・」
フィル「うん。」
ラディアスのほうに掌を翳すフィリア。
ラディ「あ、焦ったぁ・・・」
フィル「本気でいいよ。」
ラディ「あぁ・・・でも・・・」
フィル「どっちにしても、当たらないから、大丈夫だよ。」
ラディ「あぁ・・・でも、なんか悲しいぞ・・・」
フィル「うん。」
ラディ「よし・・・」
ガギーィン!!
ラディアスの剣が飛んでいく。
………。
ラディ「あれ?」
フィル「お兄ちゃん、剣をちゃんと持って。」
………。
掌を開いたり閉じたりするラディアス。
ラディ「あれ?」
20:15フィリアの太刀----------------
フィリアが剣を持ち直す。
フィル「次は、私がやるよ。」
ラディ「あ、あぁ。」
フィル「お兄ちゃん、剣をしっかり持ってて。」
ラディ「え? あ、あぁ・・・」
バチィ~ン!!
ラディ「あだっ!」
フィリアがラディアスの剣を弾き飛ばす。
そして、すかさずラディアスの首元に刃をあてる。
ラディ「うぅっ!?」
にっこり笑うフィリア。
フィル「剣・・・ちゃんと持ってね。本番だったら、もう死んじゃってるよ。」
ラディ「うおぉ・・・しっかり持てって言ったって・・・」
フィル「もう一回やってみる?」
ラディ「だな。・・・良し!」
ラディアスが剣を拾い、構える。
フィル「じゃぁ、やるよ。」
ラディ「お、おぉ。」
・・・!
バチィ~ン!!
ラディアスの剣が宙を舞い、遠くに落ちる。
ラディ「いててて・・・」
フィル「うーん・・・」
ラディ「ダメだなー・・・」
フィル「ちゃんと持ってる?」
ラディ「持ってるって!」
………。
フィル「どうしよう?」
フィリアの希少な質問に対し、答えに詰まるラディアス。
ラディ「そう言われてもなぁ。」
フィル「うーん・・・」
フィリアは自分の剣を握ったり揺らしたりして、考えている。
そして一回振る。
フィル「それじゃぁね、剣を軽く持ってくれる?」
ラディ「あぁ。」
フィリアの提案に素直に従うラディアス。
フィル「しっかり持とうとしないで、剣の行き先を感じるままに持つ・・・かな?」
ラディ「・・・良く分からんが・・・やってみる。」
フィル「じゃ、もう一回。」
ラディ「あぁ。」
ガギンッ!!
刃が力強く交わる。
ラディ「おぉ!」
フィル「できたね。」
ラディ「できてるのか?」
フィル「うん。・・・軽く持つ、の感覚は分かる?」
ラディ「な、なんとなくだけど、分かったよ。」
フィル「じゃぁ、その調子で。」
ラディ「あぁ、任せろって。」
22:30剣を使えば筋肉痛----------------
ラディアスが客間にあるソファーに倒れる。
ボフ。
ラディ「つ、疲れたー・・・」
続いてフィリアも入ってくる。
フィル「疲れたの?」
ラディ「か、体中が痛い・・・」
フィル「お兄ちゃん、痛いのは、健康な証拠。」
ラディ「そ、そうなのか・・・?」
フィル「うん。」
ラディ「特に腰・・・ギシギシしてる・・・」
フィル「それは、運動不足の証拠だよ。」
ラディ「そ、そうなのかー!? 一体どっち・・・ってあだだだ・・・」
プル「何、やってんのよ?」
プルミアが部屋の外から顔を出す。
ラディ「腰が痛くて・・・」
プル「引っ張ったほうがいいんじゃないの?」
ラディ「え? 腰を引っ張る?」
プル「そ。・・・ほら。」
プルミアがラディアスの肩を羽交い絞めにして持ち上げる。
ラディ「あが、あがががー!!」
プル「伸ばしたほうがいいでしょ?」
ラディ「無理っ! 無理っ!!」
プル「何よ?」
ドサッ!
腰を抑えて、しゃがみ込むラディアス。
ラディ「ううう・・・」
フィル「大丈・・・」
フィリアがラディアスに声をかけようとした時、リューネがフィリアを呼びつける。
リュン「フィリア。」
フィル「! ・・・はい。」
リュン「ちょっと・・・」
フィル「はい。」
フィリアがリューネを支える。
ラディ「て、手伝う?」
腰を押さえたまま、よろよろ立ち上がるラディアス。
フィル「大丈夫だよ。」
ラディ「あ、あぁ。」
プル「自分の心配したほうがいいんじゃない?」
ラディ「姉さんのせいだろっ!?」
プル「そうなの?」
ラディ「はぁ・・・もういい・・・」
そう言って、ラディアスがソファーに横たわる。
プル「まだまだねー・・・」
ラディ「な、何が?」
プル「べーつにー・・・」
22:40リューネの勅命----------------
フィリアがリューネを支え、リューネの部屋に入る。
リュン「離しても大丈夫よ。」
フィル「・・・はい。」
ベッドの上に座るリューネ。
リュン「ラディアスに、何を教えたの?」
フィル「申し訳・・・」
リュン「あなたが力を見せれば、そうなると・・・分かっていたはずよ。」
フィル「・・・。」
リュン「確かに、リアナの誘拐は・・・予想外だったわ。」
フィル「頑なに拒み続ければ・・・兄の信用を失います。」
リュン「それだけじゃ、ないわね。」
フィル「・・・っ。」
リュン「あなたの考え・・・それはそれで、構わないわ。」
フィル「私に・・・考えはありません。」
リュン「『考えがない』という考えが、あなたの考えでもあるわ。」
フィル「・・・。」
………。
リュン「忘れたわけではないでしょう?」
フィル「・・・!!」
リュン「プルミアと同等の力を秘めている・・・ラディアスの潜在能力。」
フィル「十分に。既にフィールド展開を形にしつつあるようです。」
リュン「プルミアと同様、きっかけを与えてしまえば、すぐ覚醒するでしょうね。」
フィル「はい・・・」
リュン「それを忘れないように。」
フィル「はい。」
リュン「何か起きれば、その責任、きちんと取りなさい。」
フィル「・・・はい。」
リュン「私の言いたいことは、それだけ。」
フィル「はい、その時は・・・私が必ず・・・」