S197 4月19日(火)
今にも雨が降りそうな、淀んだ曇り空。
時々雲の隙間から射す光が神秘的な光景が拝める一日。
シュライクの別荘へ行き、新たな出会いと再会、パーティへの誘い、雨。
皆が皆である瞬間。
13:20豪邸へ----------------
放課後、シュライクの別荘に招待されるラディアス達。
ぞろぞろと山道を進み、シュライクの別荘を目指す6人。
シュリ「ここです。どうぞ。」
ラディ「うお。」
………。
高さ数メートルの壁と、触ると感電しそうな檻。
その遥か先に城壁に囲まれた屋敷が見える。
ガナチ「おぉぉ、ここが入り口・・・」
シフ「壁がすごいよ~、どっちを見ても果てがないよ~。」
シュリ「お、大げさだよ、シーフィア・・・」
プル「あの屋敷まで何メートルあるのかしらねー。」
ラディ「やっと着いたと思ったら・・・まだ歩くのか・・・」
シュリ「すみません・・・」
プル「ま、これが皇族と平民の差ね。」
ラディ「だなー。」
シュリ「あ、はは・・・すみません・・・」
そう話しながら奥の屋敷に向けて歩く6人。
………。
………。
………。
ガナチ「別荘って・・・これ、豪邸じゃないですかっ!!」
シフ「豪邸・・・というより、お城だよね~。」
プル「要塞みたいなもんだしねー。」
シュリ「そ、そうですね、確かに並の要塞よりも強固と言えますね・・・」
ラディ「さ、さすが・・・」
シュリ「在学中はここで生活する予定ですので、生活に必要なものは揃えてあります。」
ガナチ「こ、これも税金でできているんだよなぁ。税金万歳。」
シュリ「ス、スミマセン・・・」
ゴスッ!!
プル「そんな言い方すると、シュライクに悪いでしょうがっ!」
ガナチ「うごご・・・」
プルミアの裏拳がガナートの顔面にヒットする。
ラディ「まぁ、別に、税金とか、どうでもいいと思うよ。気にしない。」
シフ「それもそれで、どうかと思うけど・・・」
プル「まっ、私たちには、まだ、ピンとくる話じゃないからねー。」
シュリ「と、とにかく、皆さん入ってください!」
ガナチ「お、おう。」
シフ「お、おじゃまします・・・でいいのかな・・・?」
ラディ「おじゃまします・・・」
ぎぎぎぎ・・・
シュライクが扉を開くと、一人の女性が玄関の前に立っている。
クリ「お帰りなさいませ。」
シュリ「うん、ただいま。」
クリ「そちらの方・・・お友達ですか?」
シュリ「うん、そうだよ。」
シュライクが皆のほうを向く。
シュリ「・・・彼女はロイヤルナイツ・ガーディアンのクリシュナ。」
ラディ「ロ、ロイヤルナイツ・・・?」
プル「ばっ、ばか! ファシドーラ最強ってやつよ。恥を晒さないでよね!」
べしっ!
ラディ「あだっ!」
プルミアがラディアスの頭を軽く叩く。
ガナチ「メイドさんじゃないのかー!?」
プル「はあ?? テンプルナイツの最高位よ。偉いのよ。」
ラディ「てんぷら・・・」
ゴッ!
ラディ「じょ、冗談だって・・・」
プル「王宮騎士団の1つで、そん中でも一番上にいる人たちのこと。」
シュリ「プルミアさん、詳しいですね。」
プル「まー、色々とねー。」
シフ「国の仕組みって・・・あまり学校で勉強しないよね・・・」
ガナチ「確かにな。」
シュリ「僕たち、皇族を直接守ってくれる、最も信頼できる方々・・・ですね。」
シフ「すごい人達なんだー・・・」
13:30神風を繰るジェフ----------------
シュライクの後を歩くラディアス達。
ラディ「そっか、最強なんだ。なんか、あまり実感できないけど・・・」
ガナチ「メイドさんと言われても分からないぞ。」
シフ「すっごく若くて美人だもんね~。」
プル「ま、私と比べたら大したことないんだけどね。」
ちょうど横から1人の騎士が出てくる。
ジェフ「それはまた大きく出たな。」
プル「な、何よ!?」
シュリ「ジェフ。」
ジェフ「王子、何だ? 客人か?」
シュリ「うん。クラスメイトだよ。」
ジェフ「ほほぅ。」
プル「・・・!」
プルミア達をじろじろ見るジェフ。
プル「変態?」
ジェフ「ぬっ!」
ガナチ「なぁ、その人も、ガーディアンなのか?」
シュリ「はい。」
シフ「うーん。次の人はちょっと怖いかも・・・」
同じようにジェフをじろじろ見るプルミアが一言ぼやく。
プル「ふーん・・・強いのか、微妙なとこね。」
ジェフ「口を慎んだほうがいいぞ、生意気女。」
シュリ「ちょ、ちょっと・・・ジェフ・・・」
プル「・・・なんかキザい。」
ジェフ「なんかお前、すごいむかつくぞ。」
シュリ「ジェフ・・・やめてください。」
ジェフ「だ、だがな・・・」
クリ「おやめなさい。」
………。
ジェフ「・・・オトナゲなかったな。」
プル「私の勝ちね。」
ジェフ「お前、マジでムカツクぞ!!」
クリ「ジェフ。」
………。
ジェフ「・・・ちっ! 下らん。」
プル「楽勝~。」
ラディ「姉さん、大人相手に何やってんのさ?」
プル「べーつにー・・・」
13:40心眼極めしラディア----------------
1人の騎士がシュライクに軽く会釈する。
ラディ「この人もまさか・・・」
シュリ「はい。彼はラディア。彼もガーディアンの1人です。」
ラディ「何人いるんだ・・・?」
シュリ「普段は無口なのですが・・・すごく頼りになるのですよ。」
プル「そんなに前髪垂らして、前見えてんの?」
シュリ「あ。」
ラディ「うわ、姉さん、やめなって!!」
なんとかプルミアを取り押さえようとするラディアス。
しかし、プルミアがラディアの前髪を上げる。
ぴらっ。
プル「・・・。」
ディア「・・・。」
………。
プル「ごめん、見なかったことにするわ。」
ディア「・・・。」
シュリ「あ、はは・・・プルミアさん、勘弁してあげてください・・・」
プル「い、今のは・・・わ、悪かったわよ・・・」
ラディ「それはそれで気になる・・・」
シフ「プルミー、強引だよぉ~。」
あわあわしているシーフィアの横に行き、小声で話す。
プル「(気になるものは調べる。当たり前でしょ?)」
シフ「(う~ん・・・そう言われると、そうだよねー・・・)」
ラディ「シーフィア、納得しちゃダメだって・・・」
シフ「普段は無口だけど・・・前髪を上げるとお喋りになるとかかなぁ~?」
ラディ「え? な、何が?」
突然切り替わる話に戸惑うラディアス。
シフ「ラディアさんの性格。」
プル「そんなネタみたいな性格じゃないでしょ・・・?」
ラディ「姉さん、既に見てるし。」
シフ「あははは。」
ラディ「でも、最強とかいってるけど、みんな若いんだなぁ。」
シュリ「そうですね。」
ラディ「オレ達があの人達の歳になった時、同じくらい強くなれるのかなー?」
プル「え? 私はもう超えてるけど?」
ラディ「そうなのか?」
ポンポン。
プル「そうでしょ、明らかに。」
ラディアスとプルミアのやり取りに微笑むクリシュナ。
クリ「頼もしいですね、シュライク様。」
シュリ「え、えぇ・・・確かにプルミアさんはかなりできるお方ですよ。」
プル「照れるわね。」
シュリ「あはは・・・」
ラディ「姉さん、照れてるの?」
プル「あんたはうっさい!」
ラディ「う、酷いな・・・」
クリ「ふふ・・・」
13:55絶対無気配のニルザ----------------
さらに廊下を歩く皆。
シュリ「はっ・・・?」
ニルザ「珍しいですね、お友達ですか?」
突然、シュライクの前に現れるニルザ。
シュリ「・・・ニルザ?」
ニルザ「くく・・・学校のお友達・・・ですか?」
シュリ「そうですよ。」
ラディ「この人もやっぱり?」
シュリ「はい。ガーディアンです。」
ガナチ「へえぇ・・・」
ボーっとニルザを見るプルミアに気づくラディアス。
ラディ「あれ? 姉さん、何か、いちゃもんつけないの?」
プル「・・・。」
ラディ「姉さん?」
プル「な、何よ?」
ラディ「だから、いちゃもん・・・」
プル「うっさいわねっ!」
ゴンッ!
ラディ「いたたた・・・」
シュリ「ラディアスさん、大丈夫ですか?」
ラディ「あ、う、うん。」
シュリ「プルミアさんも、突然でびっくりしたのでしょう?」
プル「え?」
シュリ「ニルザはいつも突然現れる感じですから・・・」
ニルザ「これは・・・失礼しました・・・」
ニルザがプルミアの横をすれ違う。
ニルザ「くく・・・」
プル「・・・あ~なんかあの人、生きてる感じがしないわね。」
シュリ「あ、顔色はあまり良くないですよね・・・あ、あれ?」
ニルザがフィリアの前で立ち止まり、それをじっと見るフィリア。
フィル「・・・生ける屍。」
ガナチ「フィ、フィリア、いきなり初対面の人にそれはヒドくないかー!?」
ニルザが手を顔に当て、不気味に笑い出す。
ニルザ「くくく・・・」
ガナチ「う、うわあっ!!」
叫ぶガナートを見て、にやけるニルザ。
ニルザ「えぇよ、えぇ・・・良く言われる。」
シュリ「あ、あはは・・・」
ニルザ「くく・・・そこのお嬢ちゃんとは・・・縁があるかもしれませんね。」
フィル「・・・?」
シュリ「え? フィリアさんですか?」
ニルザ「私の知っているお方と、良く似ておられるもので。」
シュリ「そ、そうですか・・・」
ニルザ「失礼します、王子。」
シュリ「え、えぇ。」
ニルザ「小さな客人さん達、ごゆっくりと・・・」
フィル「・・・。」
足音もなく去っていくニルザ。
………。
シュリ「フィリアさん、大丈夫ですか?」
フィル「う~ん・・・それなりに。」
シュリ「失礼がありましたら、言っておきますので。」
フィル「う~ん・・・特に問題ないよ。」
シュリ「そうですか・・・」
シフ「不思議な感じの人だったよね・・・」
シュリ「ニルザは最近ガーディアンになったばかりで、実は僕も良く知らないのです。」
シフ「あ、そうなんだー・・・」
シュリ「不気味に感じますが、話すと意外と楽しい方なのですよ。」
シフ「そのギャップ自体がネタっぽくて面白いよね~。」
?
シュリ「シーフィア・・・そういう意見は予想外でした・・・」
シフ「そ、そうかなー・・・?」
14:50もう1人のセシリア----------------
シュライクの部屋に戻ろうとするラディアスとプルミア。
来た時とは違う道に迷い込み、早速、プルミアがラディアスのせいにする。
プル「アンタのせい。」
ラディ「こっちって言ったのは姉さんだよ。」
プル「そう?」
ラディ「そうだよっ!」
プル「すぐ人のせいにする!」
ラディ「だから、事実なんだから、姉さんのせいにしかできないでしょ?」
プル「じゃぁ、ラディのせいね。」
ラディ「なんでっ!?」
!
ちょうどそこに人が通りかかり、その人に近づくラディアス。
ラディ「あ、あの・・・」
セシル「はい?」
ラディ「道迷っちゃったんですけど・・・シュライク君の部屋なんですけど。」
セシル「お友達ですか?」
ラディ「あ、はい。」
セシル「・・・そうでしたか。シュライク様のお部屋はこちらです。案内致しますね。」
プルミアが声にならないような声を出す。
プル「・・・!」
セシル「? どうか致しましたか?」
プル「・・・あ、ごめん。別に、なんでもないわ。」
セシル「はい。」
………。
セシリアの後を付いていくラディアスとプルミア。
セシル「学校に行って、普通のお友達ができて・・・シュライク様も嬉しいのでしょう。」
ラディ「そうなんですか・・・」
セシル「どうか、長く親しくしてくださいね。」
ラディ「あ、はい。・・・大した人間じゃなくて悪いんですけど、なるべく。」
セシル「ふふふ・・・」
歩きながら、ラディアスがプルミアに小声で話し掛ける。
ラディ「(この人もガーディアンの人なのかな?)」
プル「兄様の許嫁よ。」
ラディ「にいさま?」
ゴッ!
ラディ「う、ごほっ・・・ごほっ・・・」
プルミアの裏拳が、ラディアスの鳩尾にヒットする。
プル「いちいち人の言動に突っ込まなくていいのよ。」
ラディ「う、い、いや、だけどさ・・・」
プル「うっさいっ!!」
ゴスッ!
ラディ「いててて・・・」
セシル「仲がお宜しいのですね。」
プル「ま、一応、姉弟だからね。」
ラディ「いや、絶対悪いです・・・」
ラディアスが頭を摩りながら否定する。
セシル「ふふ・・・」
トコトコトコ・・・
プル「このひ・・・ん、こちらの方は、デューク皇子・・・第一皇子の許嫁よ。」
ラディ「え?」
セシル「ご存知なのですね・・・光栄ですわ。」
プル「ま、まぁねぇ。」
ラディ「そうなの? あ、い、いや、そうなんですか?
セシル「はい、お姉様の仰るとおりですよ。」
ラディ「・・・そもそも姉さん、なんでそんなに詳しいのさ?」
プル「・・・あ、あぁ~・・・勘よ、勘。」
ラディ「そんなバカなー。それはないだろ?」
プル「あーっ! 勘ったら勘っ!!」
ゴッ!
ラディ「いたた・・・」
セシル「うふふ・・・」
15:00懐かしきその呼び名----------------
角を曲がった所で、セシリアが立ち止まる。
セシル「この通路の突き当りがシュライク様のお部屋ですよ。」
ラディ「ここか~。なんか思い出してきました。」
プル「ほら、このライオンの石造が目印になるって言ったじゃない。」
ラディ「それはオレが言ったセリフだし。」
セシル「うふふ、それでは・・・」
ポンッ!
プル「ありがと、セシル。」
セシル「え?」
プルミアがセシリアの肩を軽く叩き、突き当りに向けて走っていく。
ラディ「ね、姉さん!? ・・・あ、あの、ありがとうございます。」
セシル「え・・・ぇ、えぇ・・・はい。ごゆっくりどうぞ。」
トテトテ・・・
………。
ラディ「姉さん、幾らなんでも馴れ馴れしくない?」
プル「ぁ・・・うん、まぁね。」
ラディ「まぁね・・・って・・・」
プル「口が滑っただけだってばっ!」
ゴッ!
ラディ「あたたー!」
プル「~♪」
………。
………。
ト・・・
ふと歩きを止め、物思いに耽るセシリア。
セシル「・・・。」
デュー「どうしました?」
ちょうど歩いてきたデュークにセシリアが呟くように答える。
セシル「セシル・・・か・・・」
デュー「・・・?」
セシル「久々・・・です・・・そう呼ばれたのは。」
デュー「そうですか・・・それはまた・・・どなたからですか?」
セシル「シュライク様のお友達からです。」
デュー「シュリの・・・そうですか・・・」
セシル「何やら、頼もしいお友達のようです。」
デュー「そのようですね・・・」
15:20シュライクの誘い----------------
シュリ「今週末、ここでパーティをやるんです。」
プル「へえぇ・・・」
シュリ「それで、皆さんをお誘いしようと思いまして・・・」
シフ「ええー!?」
シーフィアが大声を上げる。
シュリ「シーフィア・・・?」
あわあわあわ・・・
シーフィアが意味不明な仕草をしながら答える。
シフ「あの、そ、そんなすごいパーティに行くのはちょっと・・・」
シュリ「え?」
シフ「それなりの家柄とか、そういうのがないとー・・・」
シュリ「いえ、そのようなことないですよ。」
プル「いいじゃん、面白そうだし。ねぇ?」
ラディ「オレは明らかに分不相応だと思うんだけど・・・」
ポン。
プル「あんたはしょうがない。」
ラディ「はっきりとまぁ・・・姉の発言とは思えない・・・」
プル「まぁ、ラディやガナチーはともかく、シーフィアなら全然問題ないでしょ?」
シフ「う、う~ん・・・そんなことは・・・」
シュリ「プルミアさんの言う通りですよ! 本当に大丈夫ですから。」
シフ「でっ、でも、なんか正装とかじゃないとダメー!! とかじゃないの!?」
あたふたしながら話すシーフィア。
!
シュリ「そ、そうですね・・・」
想定していなかったのか、シュライクがちょっと困った顔をする。
………。
ガナチ「プルミアの言う通りってことは、俺は分不相応か。」
シュリ「はっ!? い、いえ、そ、その部分がその通りではなくて・・・」
プル「お前は落ちてろっ!」
ごっ!!
プルミアの正拳で床に落ちるガナート。
シュリ「うわ・・・ガナートさん・・・?」
プル「いいわよ、ほっといて。」
シュリ「は、はあ。」
シフ「でも、私そういうのに出れるような服、持ってないしー・・・」
クリ「折角なのですから、シュライク様も私服にすれば宜しいのでは?」
クリシュナが一言添えると、それに納得するシュライク。
シュリ「・・・うん、そうか、そうだね。」
クリ「他に来られる方々は正装だと思われますが・・・」
シュリ「僕らは僕らで学生らしくやりましょう。」
ガナチ「高いものを揃えるとかは、庶民だから勘弁してください。」
いつの間にか復活しているガナートがシュライクにボソッと話しかける。
シュリ「え、ええ・・・大丈夫ですよ。」
シフ「私、私服もあまり持ってないよー。」
シュリ「そ、そうなのですか・・・?」
シフ「う、うーん。」
悩みだすシュライクに、再びクリシュナが助言する。
クリ「それでは、着る物をお貸しするのはどうでしょうか?」
シュリ「あ。」
クリ「こちらにいらしてから、着替えても構わないと思いますよ。」
シュリ「そう、そうですね! シーフィアもそれでどうですか?」
シフ「えー!? うわ、ちょ、ちょっとそれも恥ずかしいよぉ~。」
うわうわうわ。
プル「あ、それで、いいじゃん、ねぇ?」
シュリ「はい。」
ガナチ「なんなら制服にするか!? 制服!」
ラディ「そ、それも、どうかと思うぞ。」
ガナチ「学生、イコール、制服!!」
プル「ぅるさいっ!」
ごきっ!
プルミアの関節技で落ちるガナート。
プル「あ。」
ラディ「姉さん、やり過ぎだって・・・」
シュリ「ガナートさん、しっかりしてください。」
シュライクが倒れたガナートを揺する。
ガナチ「・・・。」
17:25やはり雨が降り出し----------------
ポツ・・・
フィル「雨・・・」
シフ「え?」
ポツポツ・・・
ラディ「ホントだ。」
ポツポツポツ・・・
ガナチ「うわ、雨かよっ! ヤバいな・・・」
フィル「うん。」
プル「雨の日くらい、バリア使うべきかしらね。」
スス・・・ス・・・
プルミアが魔法を刻み、頭上にバリアを展開する。
ガナチ「おおおー!」
プル「何よ!?」
意外なガナートの反応に驚くプルミア。
ガナチ「バリアが雨、弾いてるぞっ!!」
プル「当たり前でしょうがっ!」
ガナチ「ふ・・・俺のは雨通しちまうからな・・・」
プル「あんたホント寒いわねぇ・・・」
ラディ「しょぼいなぁ。」
ガナチ「お、お前には言われたくないぞっ!!」
ガナートがラディアスに指差して叫ぶ。
ラディ「そ、そうだな・・・確かに・・・」
濡れた頭を手で掃うラディアス。
フィル「危篤だね。」
ラディ「フィリア、それは言い過ぎだろ?」
フィル「うん。」
ガナチ「分かってる・・・分かってるさぁ・・・」
遠くを見つめるガナート。
ラディ「珍しく視線が遠いぃな。」
ガナチ「あぁ・・・」
シフ「ガナート君も大変なんだねぇ・・・」
プル「遠く見てないで、なんか覚えればいいじゃん?」
ガナチ「いやぁ、それが・・・そう手頃なのがないんだよな・・・」
プル「バリアが少なそうな属性ちゃぁ属性ね、なんとか。」
ガナチ「『灼熱』だぞ。」
プル「あ。あー、そんな感じの。」
シフ「『灼熱』かぁ。うーん・・・攻撃は最大の防御~な属性だよね~。」
ガナチ「まさにその通り。攻撃魔法はたくさんあって飽きないんだがなー。」
ラディ「オレの属性も本を見た限りじゃ、バリアってなさそうだなぁ。」
フィル「うん。」
シフ「ラディの属性も特殊だもんね~。」
ラディ「・・・それに引き替え、さすがシーフィアはやるよね。」
シフ「えー? そうかなー? いつも使ってるし、苦でもないからねー・・・」
ポン。
ガナチが合点する。
ガナチ「そうなると、やはり、プルミアが意外だな!」
プル「なんで意外なのよっ!?」
ガナチ「普段、全然使わないだろ?」
プル「はあぁ? 敵の攻撃は避けられるけど、雨は避けきれないでしょうが!」
シフ「あー、なるほどー。」
ラディ「ん・・・確かに正論っぽいけど・・・」
ガナチ「なるほどな・・・」
納得したような表情を見せるガナート。
ガナチ「だけだけどっ!」
?
ガナチ「俺は認めないぃ!」
ゴスッ!!
プル「うるさいっ!」
プルミアがガナートを力いっぱい殴る。
シフ「わ。」
ガナチ「ううぅ・・・」
ラディ「ガナート・・・大丈夫か?」
ガナチ「お前、良く死なないな。」
ラディ「オレ?」
ガナチ「こんなの、しょっちゅう喰らってたら死ぬぞ、マジで・・・」
ラディ「しょっちゅう喰らってるぞ、オレは・・・」