S197 4月13日(水)
太陽の日差しは強いが、気温は低く、日陰では肌寒いくらいだ。
風の強さがまた一層、寒さを感じさせる。
突然、再会した時空の本。
かつての記憶こそ、蘇ることは無いが、何か進展を期待するラディアス。
エディスの協力により、ラディアスの魔法は1歩前進する。
コトドリとの出会いも満更ではなかったのか・・・
7:50来ないなぁ----------------
ラディアスが外に出て、待ちくたびれた感じのプルミアに声をかける。
ラディ「お、お待たせ・・・」
プル「何で一番早く起きてたくせに、一番出てくるの遅いのよ?」
ラディ「やっぱり余裕があると、油断するもんだって。」
フィル「二度寝だね。」
ラディ「うぅ・・・それを言っちゃいかん・・・」
プル「まぁ、いいけど。ガナチーまだ来てないし。」
ラディ「あれ? ガナート来てないんだ。珍しいな。」
フィル「うん。」
プル「アイツが遅刻するなんて珍しいわね。」
ラディ「そうだなー。」
プル「あんな朝からテンション高いのに、寝坊することなんてあるんだか・・・」
ラディ「ガナートは9年間皆勤だから、こんなことありえないような・・・」
フィル「うん。」
プル「バカはなんとかってやつね。」
ラディ「あはは・・・」
………。
………。
フィル「本当に来ないね。」
ラディ「先、行く? 連絡取れればいいんだけどな。」
プル「所詮ガナートなんだから、気にしなくていいでしょ?」
ラディ「それはヒドい言いようだな・・・」
プル「そう?」
ラディ「まぁでも、ガナートの寮は、学校の途中にあるんだから、寄ればいいんじゃん?」
プル「そうね。まぁ、しょうがないわね。」
フィル「うん。」
8:20再会、時空の書----------------
ゴトゴト、ガタンッ!
教室のドアに荷物をぶつけながら、シーフィアが入ってくる。
シフ「お・・・おはよー・・・」
ラディ「おはよ。・・・シーフィア・・・なんかすごい荷物だね。」
ドスッ!
シフ「ふわぁ・・・疲れたよー。これ、ラディのために持ってきたんだよ~。」
嘆きながらシーフィアが荷物を下ろす。
ラディ「え? そ、そうなの?」
シフ「この前来た時に渡すつもりだったんだって、お母さん。」
ラディ「叔母さんが? ・・・? これ・・・」
シフ「だからって私に持たせるのも、ヒドイよね~。」
ラディ「確かに、かなり重そうだね・・・」
シフ「ラディは覚えてないのかなぁ・・・?」
ラディアスが紙袋の中を覗くと、古びた本が詰まっている。
ラディ「本?」
シフ「うん。昔、ラディが置いていった本だよ~。」
ラディ「オレが??」
シフ「そうだよ。」
ラディ「魔法の本?」
シフ「うん・・・そうみたいだね。私は見てないから、良く分からないけど・・・」
ゴソゴソ・・・
シーフィアが一冊手に取ってみる。
ペラペラ・・・
シフ「うわぁ・・・」
ラディ「どんな本だったっけなぁ・・・」
ラディアスも手に取り、本を軽く捲ってみる。
シフ「す、すご~い・・・」
ラディ「な、なんか難しいかも・・・」
シフ「ラディって小さい頃からこんな本読んでたんだ・・・すごいよー。」
ラディ「あんまり記憶にないけどね・・・」
ペラペラ・・・
シフ「今、読んでも難しいよ。」
・・・?
ラディ「オレも・・・さっぱり分からん。」
シフ「あははは。ラディ、小さい頃のほうが頭良かったのかなぁ?」
ラディ「あはは・・・そ、そうかも・・・」
15:40ボクの姉さん----------------
放課後の化学室。
シュライクが1人、窓から校庭を眺めていると、シーフィアが入ってくる。
シフ「あれ? みんなまだ来てないの?」
ボーっと外を眺めていたシュライクが振り向き、返事をする。
シュリ「はい。」
シフ「教室にもいなかったのに・・・」
そう言うと、シーフィアは窓側に行き、校庭の様子を眺める。
………。
………。
………。
シュリ「シーフィアさん。」
シフ「え、え~? ・・・シーフィア・・・シーフィア、でいいよー。」
さん付けで呼ばれると、シーフィアは手を振って恥ずかしそうな素振りを見せる。
シュリ「ですが・・・」
シフ「なんとなくだけど・・・不自然だよ。ほら、みんなシーフィアー、だし。」
シュリ「では・・・あの・・シーフィア・・・で・・・」
シフ「うん。」
シュリ「あの・・・」
少し恥ずかしそうにシュライクが言い始める。
シュリ「シーフィア・・・って・・・ボクの姉さんに似てるなぁ・・・って。」
姉さん、という言葉に反応し、首をかしげるシーフィア。
シフ「シュライク君、お姉さんがいるの?」
シュリ「え・・・えぇ・・・」
シフ「第一王子様のお妃様のこと?」
シュリ「いえ、血の繋がった姉ですよ。」
シフ「そうなんだ・・・ちゃんと血の繋がっているお姉さんがいるんだ・・・」
シュリ「いえ、いないです。もう・・・」
シフ「え・・・?」
シュライクの意味深な言葉に、気遣うように返事をするシーフィア。
シフ「あ・・・ご、ごめんなさい・・・私って世間知らずで・・・」
シュリ「いや、そんなに知られていることじゃ・・・ないですよね。」
シフ「う・・・うん・・・ごめんね・・・」
シュリ「いえ、シーフィアが謝ることなんてないです。」
シフ「う、うん。」
シュリ「・・・。」
………。
言いづらそうにしているシュライクが、再び話し出す。
シュリ「・・・ある事件以来、行方不明になっているんだ。」
シフ「・・・行方・・・不明?」
シュリ「公には亡くなったことになってるけど・・・僕はそんな気がしなくて・・・」
………。
シュリ「姉さんは、必ず生きてるって。」
ちょうどそのとき教室の手前にプルミアが現れる。
プル「え・・・?」
シュリ「この学校に来て、シーフィアに出会って・・・」
シフ「・・・。」
シュリ「・・・もしかしたら、シーフィアが姉さんなんじゃないかって。」
プル「・・・!!」
近づこうとしたプルミアが、さっと、教室から出て、入り口の裏側に隠れる。
シフ「ええー!?」
シュリ「違うのかな・・・」
シフ「うーん・・・そう言われてもぉ・・・」
困惑しているシーフィアと、教室に入れないプルミア。
シュリ「すごく見てて思うんだ・・・ひとつひとつが姉さんに似てるなぁ・・・って。」
シフ「そう・・・なんだ・・・」
シュリ「まだ知り合って一週間程なのに・・・」
………。
プルミアが隠れながらも、拳を強く握り締める。
………。
プル「そう・・・だよね・・・そりゃぁ、間違えるか・・・」
………。
俯いているプルミアが教室の前で躊躇っていると、ラディアス達がやってくる。
ラディ「あ、姉さん。」
プル「!?」
ラディ「・・・入らないの?」
プル「なっ・・・な、なんでもないってばっ!!」
パシイイイィィィンッ!!
ラディ「あっだーっ!!」
近寄るラディアスに容赦なく平手打ちをかますプルミア。
プル「あ・・・ごめ・・・ん・・・」
ラディ「え?」
そう言って教室に入るプルミア。
プル「・・・お、お待たせ。」
シフ「あ、プルミー! 遅いよ~。」
プル「ウチのクラス、ホームルーム終わるの遅くってさー・・・」
普段のプルミアに戻っているのを見て、教室の外でラディアスが呟く。
ラディ「・・・姉さんがオレに謝るなんて・・・あり得ないよな?」
フィル「うん。」
ラディ「だよなぁ。」
フィル「うん。」
16:40古の書----------------
バタバタばたぁ~!
エディ「職員会議で遅くなりましたっ!」
エディスが走って入ってくる。
シフ「あ、先生!」
ラディ「ちょっと、これ、見てもらえますか?」
ラディアスが古びた本をエディスに見せる。
エディ「んん? これ?」
ラディ「はい。」
そう言って本を押し付けるラディアス。
ペペラ・・・
………。
エディ「ふぅ~ん・・・契約してるけど、使い方が分からないって、この本こと?」
ラディ「・・・もしかしたら・・・ですけど。」
ペラペラ・・・
エディ「ふぅ~ん・・・じゃぁ、一つ一つ唱えてみる?」
ラディ「え!? そんなこと、できるんですか?」
エディ「ええ。ここに書いてあるわよ。」
開いたページをラディアス達に見せるエディス。
シフ「この・・・謎な文字ですか・・・?」
エディ「確かに見慣れないかもしれないわね、皆さんには。」
エディスが黒板の所に行く。
エディ「魔法の刻印・・・つまり詠唱述には、独自の言語が使用されていたのよ、元々。」
カツカツ・・・
言語の種類を黒板に書き始めるエディス。
ラディ「元々・・・?」
エディ「でも、それじゃ分かりにくいから、今の記述体系ができたのよ。」
シフ「そうなんだー・・・」
エディ「結構、一つに決まるまでは、色んな書き方があったんだけどね。」
ラディ「へえぇ~・・・」
エディ「シュライク君は知っているわよね?」
シュリ「多少なら、ですが・・・」
カツカツ・・・
エディ「こんなのとか、こんなのとか。」
シュリ「あ、はい。」
シフ「へえぇ・・・」
エディスがすぐに黒板消しで消す。
エディ「んで、これらの記述体系を書き換えてみると・・・」
ペララ。
エディ「例えば、これだったら・・・こうこうこう・・・」
カツカツカッ・・・
エディ「で、こう。」
カツッ!
シフ「へえぇー・・・そうなんだー・・・」
ラディ「先生、良くすぐこうだって、分かりますね。」
エディ「ふふ、まぁ~ね~。」
シュリ「この本・・・かなり古い文献ですよね。」
エディ「えぇ、200年以上経ってるのは間違いないわ。」
シュリ「ファシドーラの資料館にも、似たようなのが数冊ありました。」
ガナチ「それって、もしかして貴重なのか? じゃ、結構高く売れるのかもな。」
ラディ「売らないって・・・」
16:55ラディアスの進捗----------------
プルミアが教室に戻ってくる。
ガラガラ・・・
プル「あ、センセ、来てたんだ。」
エディ「! あら、プルミアちゃん。・・・ほんのちょっと前に来たんだけどね。」
シフ「今、ラディの本を先生に見てもらってるんだよ~。」
プル「あ、そうなんだ。で、ラディ、どうなの?」
ラディアスの肩をポンと叩くプルミア。
ラディ「い、いや・・・今の所、進展なし・・・」
プル「何よそれ?」
シュリ「この本がどのような物が書かれているか、それが分かったくらいですね。」
プル「さすがシュライク君ね。ラディとは大違い。」
シュリ「いえ、そんなことはないですよ・・・」
ラディ「酷い言われようだ・・・」
プル「そうなら、それは、一応、進展じゃないの?」
ラディ「そうと言えばそうか・・・」
エディ「これから、この本に載っている魔法を1つずつ唱えてみるってのもアリよ。」
ラディ「! い、いきなり?」
エディ「幾つか契約していて、忘れてるのがあるって言ってたでしょ?」
プル「そっか。それ、いいじゃない?」
ラディ「でも、詠唱方法が読めないんだよね・・・」
プル「はああ? どーすんの?」
シフ「先生が読めるから、先生に教えてもらいながらかな~? ね、ラディ?」
ラディ「え? あ、あぁ、そうだね・・・」
エディ「今日はそれしかないわね。」
ラディ「すみません。」
プル「・・・じゃぁ、こっちはこっちでさっきの続きね。」
ガナチ「おう。」
プル「シュライク君もいい?」
シュリ「! そうですね。」
17:10まさに垂涎----------------
次々とページをめくっていくエディス。
エディ「『時空』っていうひとつの属性に、3冊使って書いてある本・・・」
エディ「さすがにこんなの初めて・・・」
ラディ「エディス先生でも初めてなんですか・・・」
エディ「ええ。全部で何冊あるの??」
ラディ「10冊くらいでしたけど・・・」
ラディアスが他の本を取り出し、シーフィアが冊数を数える。
シフ「全部で・・・じゅぅ・・・15冊あります。」
エディ「他の属性のもあるわね、じゃぁ。」
1冊1冊を眺める。
・・・。
ラディ「これとこれがセットみたいですね・・・」
エディ「すべて3冊ずつみたいね。」
『二滅』『六滅』『紫燈』『無氷』
エディ「『にめつ』『ろつめつ』『しひ』『むひょう』・・・かしらね。」
シフ「『ろくめつ』・・・じゃないんですか・・・?」
エディ「ろつ、って読むのよね、これは。」
シフ「そうなんだー・・・属性表にない属性・・・だもんね・・・」
エディ「たぶんね。」
シフ「たぶん・・・?」
エディ「あ、これも、『にめつ』じゃなくて『じっつ』と読むみたいね。」
シフ「それも・・・たぶん、ですか?」
エディ「たぶんです。」
エディスが一冊の本を手に取る。
エディ「なるほど・・・ね・・・」
ぺら・・・
エディ「すごぃ・・・」
ぺらぺら・・・
エディ「すごい・・・」
ぺらぺらぺら・・・
エディ「すご~ぉい・・・」
………。
ダラ・・・
………。
シフ「先生・・・涎・・・」
エディ「う、ふわぁ!!!! ・・・ごっ、ごめんなさいねっ!!」
すかさずハンカチで濡れたページを拭き取るエディス。
ビリッ!
!!
………。
………。
………。
ラディ「まさに垂涎ってとこですか・・・?」
エディ「そ・・・そういうことです・・・ね・・・」
シフ「あはは・・・」
………。
エディ「ごめんなさい・・・」
ラディ「い、いや、別に、いいですよ、1ページくらい・・・ね、ね、ねっ!?」
シフ「え、えぇー!? わ、私も・・・ぃ、いい・・・と思います・・・」
ラディアスがシーフィアにふり、ものすごく困った顔をするシーフィア。
17:50スペースワインド----------------
ラディアスが演習中の教室へプルミアが入ってくる。
入口のすぐ傍にいるシーフィアにそっと話しかける。
プル「(どう?)」
シフ「(あ、プルミ~・・・)」
プル「(ダメ?)」
シフ「(うん、まだダメみたいだよ~・・・)」
プル「(はぁ、ラディもダメね・・・)」
プルミアに続いて、ガナート、シュライクが教室に入ってくる。
教室の中心では、魔法を刻むエディスとラディアス。
エディ「次は・・・こう・・・こうよ。」
ラディ「こう?」
エディスの指が刻む魔法を、ラディアスが真似る。
エディ「そ。それでいいわ。」
ラディ「・・・っと。」
刻み終えると、ラディアスの手の周りに光が発生する。
ラディ「これは・・・?」
エディ「ビンゴかな?」
光がさらに強くなる。
ラディ「わわっ! どっ、どっ、どうしよ!?」
光の纏った手を振り回すラディアス。
エディ「ちょ、ちょっと!! あ、あっち!」
エディスがラディアスの腕を掴み、誰もいないほうへ向ける。
さらに強い光を放つ。
エディ「いけるいける!」
ガナチ「おおおー!!」
・・・ーーーーン!!!!
微かに聞こえる高周波と共に、手の先の空間が揺らぎ始める。
ラディ「机・・・」
ガナチ「机を曲げたのか・・・?」
プル「机っていうか・・・空間が歪んでた感じだけど・・・」
ごくっ・・・
ガナチ「す、すげえな・・・」
ラディ「ふ・・・ふぅ・・・」
ラディアスが手を下ろすと、空間の揺らぎが戻り始める。
グググぐ・・・
シフ「あ、魔法を止めると元に戻るみたいだねー。」
プル「へ、へええぇ・・・」
………。
ガナチ「ど・・・どうよ?」
ラディ「・・・魔法力、使い切った。」
プル「はあ?」
ガナチ「そんな大層な魔法使えば、なくなるわなー。」
ラディ「だなー。」
シフ「で、でも、すごいよ~、ラディ。」
パチパチ・・・
ラディ「先生・・・?」
エディ「これでひとつ壁を越えたってことよ。おめでとう。」
パチパチパチ!!
皆が拍手をはじめる。
ラディ「あはは・・・なんか照れるな・・・」
………。
………。
ラディアスの特訓を終え、皆で教室の片づけを始める。
フィル「・・・。」
プル「何、不満そうな顔してるのよ?」
フィル「! う~ん・・・そうかな・・・?」
プルミアの嫌味を上手く避けるフィリア。
ラディ「何、やってんのさ?」
プル「べ~つに~。」
フィル「うん、なんでもないよ。」
19:40マニュアル読めれ----------------
シーフィアから返してもらった時空の本。
それをラディアスが机で読み流している。
・・・カチャ。
ラディ「!」
プルミアがノックもせず、ラディアスの部屋に入ってくる。
ラディ「姉さん?」
プル「渡すの忘れてた。」
ラディ「ん?」
ペチ。
プル「これ、マニュアル。この前の剣のやつよ。」
ラディ「あ、あぁ。」
顔につけられた冊子を受け取るラディアス。
プル「手入れとか、ちゃんとしなさいよね。」
ラディ「わ、分かった。」
………。
ラディ「剣一本に、このマニュアルは厚くない?」
プル「そんなもんよ、フツー。」
ペペラペラ・・・
………。
ラディ「レインフォレスト? ・・・ってこの剣の名前ね。はあ。」
ラディアスが机の横に置いてある剣を取る。
ラディ「ほぉ・・・」
………。
プル「結構いい剣なんだからねっ!」
ラディ「へぇ、そうなんだ。全然分からん。」
プル「エルヴロージュって言ったら、結構シャレたブランドなんだから。」
ラディ「はあ・・・あ、なんかここに『ElveRouge』って刻印あるね。これね。」
プル「あ~ウトいわね~・・・」
ラディ「はあ・・・分からんけど、いいやつなんだね・・・」
そう言って、手に持った剣を勢い良く振ってみる。
ブンッ!
ラディ「! あてて・・・」
プル「腕痛めるわよ。普段から使ってないんだから。」
ラディ「慣れないとダメだなぁ・・・」
プル「やっぱり猫に小判か・・・」
ラディ「それは酷い言われようだなぁ・・・」
プル「事実なんだから、しょうがないでしょ?」
ラディ「まぁ・・・そうだけどさぁ・・・」
20:45運のつく日----------------
リアナ「こ~とぴぃ~」
エック「グエ。」
リアナがエックを抱きかかえて頬ずりを始める。
リアナ「んにゃぁ~カワイイれすぅ~。」
リアナがエックをさらに抱きしめる。
ラディ「潰すなよ!」
リアナ「うん~うにゃぁ~♪」
スポッ!
リアナの懐から抜け、ラディアスのベッドの上に飛び乗る。
ぷるぷる・・・
………。
ラディ「はっ!?」
ベショ!
ラディ「が、がはあぁぁー!! か、勘弁ー!!」
リアナ「ふわぁ!」
ラディ「エックー!!」
エック「ぐえぇ。」
ラディアスの叫びをものともせず、机に飛び移り、毛繕いを始めるエック。
リアナ「コトピー、そんなとこでしちゃ、ダメだよぉ~。」
急いで布団を拭くラディアス。
リアナ「わふ、くすぐったいよ~。」
ラディアスの必死の作業とは無関係にリアナの手を突付くエック。
ラディ「これは・・・ダメだなぁ。」
布団からシーツを剥ぐ。
ラディ「はあぁ・・・これじゃぁ小屋の外には出せないなー。」
リアナ「えぇー? ダメー?」
ラディ「あぁ。」
リアナ「はうぅー・・・」
リアナがエックの頭を撫でながら、エックに言い聞かせる。
リアナ「コトピー、ちゃんとトイレでできるよーになろーねー。」
エック「グエ。」
21:00ついた後----------------
カチャ。
ラディ「はあぁ・・・」
フィル「うん?」
洗面所に入ると、フィリアがちょうど洗濯をしている。
ラディ「エックに・・・やられた・・・」
糞をされた箇所を見せるラディアス。
フィル「うん。」
ラディ「シーツ、やられちゃったよ・・・はあぁ・・・」
フィル「うん。そこに置いといて。」
ラディ「あ、あぁ。」
フィル「代わりのシーツは・・・持って来るね。」
ラディ「サ、サンキュ。」
軽快に洗面所から出るフィリア。
………。
ラディアスが床を見ると、魔法陣が刻まれている。
ラディ「魔法陣・・・?」
カチャ。
フィル「これ。はい。」
ラディ「おう。」
ラディアスにシーツを渡すと、汚れたシーツのほうを見る。
フィル「これは・・・シミ・・・取れないかもね。」
………。
ラディ「そういや、何やってたの?」
フィル「うん?」
ラディ「これ・・・」
フィル「洗濯。」
ラディ「いや、それは、分かるって。だからこの魔法陣・・・」
フィル「思い出してたんだよ。」
ラディ「魔法を?」
フィル「昔に覚えた魔法を、今でも唱えられるか・・・」
ラディ「なるほどなー。詠唱方法なんて、使わないと忘れちゃうもんなー。」
フィル「うん。」
ラディ「思い出せたのか?」
フィル「うん。」
ラディ「そうか。」
フィル「うん。」
22:55空間歪ませてさ、どうするわけ?----------------
夜遅く。
家の庭で魔法の練習をするラディアス。
ラディ「ていっ!」
ラディアスが手を翳すと、少し前方の空間が少し揺らめく。
ぐくく・・・
揺らめく空間は、数秒で元に戻る。
ラディ「はぁ・・・」
ラディアスが地面にしゃがむ。
ラディ「さ、さすがに疲れた・・・」
プル「何やってんだか。」
!
ラディアスの練習を眺めていたプルミアが縁側から庭に下りる。
プル「無闇やたらに使ったって、上達しないわよ。」
ラディ「姉さん?」
プル「コツを掴めばいいだけでしょ?」
そう言って指で輪を描く。
ラディ「でもさ、練習しないと唱えられないし。」
プル「その辺は気合よ。」
ラディ「無理でしょ・・・ガナートじゃあるまいし・・・」
プル「唱え方のコツを覚えれば、なんとなく覚えてても使えるって。」
ラディ「そ、そうかな・・・? いざって時に使える?」
プル「成せば成るわよ。」
ラディ「なんないって・・・」
プル「まー、明日、寝坊しない程度にやんなさいよ!」
ラディ「わ、分かってるよ。」
プル「あ。」
ラディ「何?」
プル「その魔法ってさぁ、魔法力の消費も結構みたいだけど。」
ラディ「そうなんだよね。フェザーを回復させても、数秒しか使えないし・・・」
プル「で、それ、なんの効果があるの?」
ラディ「え?」
プル「空間歪ませてさ、どうするわけ?」
ラディ「え?」
プル「しかもすぐ元に戻るんでしょ? なんに使うの?」
ラディ「え?」
………。
………。
ラディ「あ、明日、先生に聞いてみる・・・」
プル「はああ?」