ロシアンルーレット
朝日の差し込む一室のレンガ造りの部屋に青びれた服装の男が椅子に腰かけていた。
男は中央の木造テーブルの横に下向きに顔をうつ伏せ、テーブルに肘をかけ扉の正面にかけてある時計をちらちらと気にしながらぶつぶつと独り言を呟いていた。
「どうしてこうなった。私が悪いのか…負けたらどうなる…」
時計はカチッカチッと時間を刻む。
時間というのは意識すればするほど長く感じるものだ。
「ギィィィィィ」古臭いドアがふてぶてしい男たちによって開かれた。
椅子に腰かけた男は少し青ざめた表情でドアを開けた男たちを見上げとうとう来たかというような顔をした。まるでこれから処刑される罪人の様な顔つきだ。
「よぉ元気してるかー」男たちの一人が陽気に青ざめた男に話しかけた。
それと同時に周りの男たちはぞろぞろと男を囲むようにテーブルを囲んだ。
そして座りこんでいる真後ろの男が耳元で
「これから行われるのはいわば秘密の儀式だ。お前が男になれるかなれないのかのな。お前の運を試すんだ。お前が勝てばこの部屋から解放してやる、負ければ…まぁお空の天使様とご対面だ。負けても天使様と会えるんだ、そう思えば気が楽だろ。だからぱっとやってささっと終らせようぜっ」
男は内側の右ポケットから使い古されたピストルを取り出し、男の前に雑に放り投げた。ピストルはガガガッとテーブルに傷をたてながら滑りとまる。よく見ればテーブルは傷だらけだ。青びれた服装の男は油汁ともいえる汗をかき、きっと何回もこのようなことをここで行ったのだろうと思い描きピストルを見つめる。
「おおっと、大事なものを忘れていた。これがなきゃ始まらないよな」
左側の内ポケットからきらきらと光る金色の弾を男に恐怖をあおるように見せつけながら男の目の前においた。そして正面にたった男がテーブルに座りこみ話しかける。
「さて始めようか。お前も心の準備も整っただろう。ルールは説明しなくてもわかるだろうがお前の最後になるかも知れないだろうから、丁寧にもう一度ルールを教えてやろう。俺は親切だろう。楽しめ人生を最もすぐ終わるかもしれないけどな。へへへっ…ルールは簡単このピストルで引き金を頭に向かって放つ。それだけ。弾は一発だけここが肝心だよく聞け六発の引金の中の一発だけだ。そして引金を打つのはお前だけ。自分で引金を引くんだ、おっと自分で死ぬんだから怨むんじゃねーよ。ただし例外もあるからなまず逃げたら殺す。
一発撃つことに十分間のお祈りの時間を与える。必死に祈るんだなただし祈りすぎて時間を忘れるなよ過ぎたらわかるな。パスは一回だ大事に使え外せば終り。
…理不尽だろ。なぜこうなった。次は当たるかも知れない。逃げたい、逃げ出したい。ここで俺は終りたくない。俺ならできる…いろいろと思うことがあるだろう。お前のほかにもこれに挑戦したがどれも失敗。逃げ出した奴はほら後ろの壁を見てみろ染みが付いてるだろうそいつはそこに抑えつけられ拷問の末息絶えた。そいつはその壁にもたれて死にたいと懇願して死んだんだ。俺でも引くほど無様に死んだぞ。拷問される奴それをただ見ている俺。この世は公平じゃない不公平なんだ。」
男は言い終わると弾とピストルを見せつけるようにして弾を込めた。
「さあ始めよう SHOW TIME」
青びれた男は始まりの合図で震えている。
ピストルを受け取る時も震えた手でピストルを受け取った。
「一発目はまず当たらない安心しろ。ほら早く早く」
周りにいた男はにやにやとしながら男を急かす。男は息遣いが荒くなる。
「うっ…うううぅチャ…リ…カチャン……ふううう」
「いいぞその調子だ。よくやった。よかったな。心から祝福するよ。こんなに緊張したことはないだろ。こういうときだからこそいつもより生を身近に実感することができる。生きてて嬉しいだろう。さぁ二発目だ時間はたっぷりある」
男の息遣いは先ほどよりも荒くなっていた。そのせいか空気はより重く感じる。そして男は間をおかず続けて引金を弾く
「…カチャン」
「おお素晴らしい。お前はほんと運が強いな。二発目で死んだ奴は何人も見たがたいていの奴がすくんで時間をかけた奴ばかりだ。生き残る奴はたいていすぐ引金を弾いたもんだ」
青びれた服装の男はすぐさま撃つ態勢を整える。
「ふうふうふう…うぅ…うううぅ…」
男は勢いづけるも引金が弾けない。…指が重い…体を包む空気が鉛のように重く全身が金縛りのように硬直した。全神経をピストルに集中するも集中すればするほど硬直する。まるで蛇に睨まれた蛙だ。恐怖で指が動かない。
男の頭の中では超高速で動けと命令が出されるも脳が受け付けない。
男は考える(これは当たりなんじゃないかだったらパスだ。でも外れたら……)
時計の針は刻々と時間を刻む。
9分…8分…7…6・・5・・4分
「おいおい。3分切ったぞもうそろそろ決めたらどうだ。」
男がすぐ撃たないことに苛立ちを感じ始め男が話しかけた。
「あと3分無いぞ俺がこうして話しているうちにも時間は進むんだ。なんなら俺がお前の代わりに撃とう」男はピストルを受け取ろうと男に手を伸ばす。
「まぅまぅ待ってくれ撃つ、自分で撃つからっ」初めて男は口を出した。
「これはあっあっあ当たりだっ…弾が入っている」
「いいんだな。パスは一回だけだ。外せば終りなんだぞ。」
「分かってる」
「さぁ撃つんだ。地獄行きの切符を手に取るか天国への切符を手にするか。まさに分かれ道だな。おおっと天国も地獄もあの世だったな」
周囲の男たちは少し笑みをこぼす。
「あははははは、その通りだ。はっはっはっ」
周囲の男たちとは別に苦笑した男は決意を固めて壁に向かって放つ。
「…チャリ…バァァン」
レンガ造りの部屋に銃声が鳴り響く。男は笑みを浮かべ周囲の男たちを見渡す…しかし男は何らかの周囲の異変に気付いた。明らかにこちらを楽しそうに見ている者が多いのだ。そして正面の男が
「本当に運のいい奴だ。お前で2人目だよ。解放されたのは。さぁ部屋を出ていくといい君は自由を手にしたんだ。」男は扉に向けて手を出し導いた。
男は立ち上がると気力を使い果たしたのかよろよろと歩きだした。
扉を開け朝日を浴び気持ちよさそうに部屋を出た。。
その直後だ。音が聞こえる。「キキィィ…バァァァン」車にぶつかる音が聞こえる。
「ぅぅっ、なぜ…なんだ…」うつ伏せになり血が周囲を染める。
うつ伏せの男に向かいコツコツッと向かう足音が近づいていた。
「解放…されたんじゃないのか」
「約束は破ってないぞ。ちゃんと言ったじゃないかこの部屋からは解放するとこの部屋からな」
笑みを浮かべ男は去って行った。
お読みいただきありがとうございます。練習のつもりで書いたので何分不十分なてんが あると思いますがよろしくお願いします。