窓辺の妻と裸の王
窓辺の妻と裸の王
格子窓の向こうで角笛が鳴った。ミカルは縫いかけの衣を膝から下ろし、窓辺へ寄った。坂道を上ってくる人々の先には契約の箱がある。民はその周りで歓声を上げ、エルサレムの家々からも人が出てきていた。
その群衆の中で、ダビデが跳ねるように踊っていた。
――何をしているの、この人は。
王の紫の衣ではなく、亜麻布のエフォドをまとっている。踊るたびに衣の裾が揺れ、王に付き従う女たちまで手を打っていた。ミカルは格子に指をかけた。金属の縁が、針を握り続けていた指の腹に食い込む。
ダビデが喜ぶ理由は分かる。契約の箱をエルサレムへ迎えるのは、彼にとっても民にとっても大きな日だ。ミカルも、箱そのものを軽んじたいわけではない。それなのに、窓の下で踊る夫を見ているうちに、胸の奥から冷たいものがせり上がった。
以前、別の家の窓からダビデを逃がした夜がある。父サウルが彼を殺そうとしたため、ミカルは寝台に身代わりの像を置き、追っ手を欺いた。ダビデを窓から下ろしたとき、縄は彼女の手のひらをこすった。逃げ切ってほしくて、痛みに気づいたのは彼の姿が闇に消えてからだった。
その後、父は彼女を別の男へ嫁がせた。パルティエルの家では、朝、誰かが戸を叩く前に起きて、食卓の水差しを満たした。夫は仕事から戻ると、まず彼女にその日のことを聞いた。そこで過ごした年月を、ミカルは仮の暮らしだと思っていなかった。
ダビデが王となり、ミカルを返すよう求めた日、パルティエルは泣きながら後を追ってきた。道の先で彼は戻るよう命じられ、それ以上は付いてこられなかった。ミカルが振り返ったとき、彼はまだそこに立っていた。
「奥様、お支度を。王がお戻りになります」
侍女が声をかけた。卓には、ダビデのために用意した無花果と、羊の乳で煮た麦がある。鍋の表面には薄い膜が張り始めていた。ミカルは窓から離れ、針を布に刺したまま卓の端へ置いた。
「温め直しましょうか」
「まだいいわ」
侍女は鍋に手を伸ばしかけ、やめた。ミカルは座ろうとしたが、もう一度窓のほうを見る。通りには人が増え、女たちの拍手が壁の内側まで届いていた。
やがて扉が開き、ダビデが入ってきた。髪には汗が残り、砂を踏んだ足で部屋の手前に立つ。外の歓声をまだ聞いているような顔をしていた。
「ミカル。箱が入った。見ただろう」
彼は両手を広げて近づいた。ミカルは一歩も動かなかった。ダビデの背後で侍女が目を伏せる。彼女は迎えの言葉を言うべきだと分かっていた。けれど、口から出たのは別の言葉だった。
「今日のイスラエルの王は、ずいぶん立派なお姿でしたね」
ダビデの足が止まった。
「どういう意味だ」
「家来の女たちの前で、身をさらすように踊って。あの人たちは、王をどんな目で見たでしょう」
言ってしまった、とミカルは思った。ダビデの踊りを見て胸を痛めた理由は、それだけではない。そう分かっているのに、彼が最も怒る言葉を選んだ。侍女が退出すると、扉は小さな音を立てて閉まった。
「私はエホバの前で踊った」
ダビデは声を低くした。先ほどまでの笑みはないが、額にはまだ汗が残っている。ミカルは、彼が本当に喜んでいたことを知っていた。その喜びまで偽りだと言うつもりはなかった。
「あなたが喜んでいたのは見ました」
「ならば、なぜ嘲る。私は王の威厳を見せるために、箱を迎えたのではない」
「あなたには、そうだったのでしょうね」
ダビデは眉を寄せた。ミカルは卓上の鍋を見た。彼が帰ったら食べられるように、朝から支度をさせていた。今になって、それを見られたくなかった。
「私には、窓からしか見えませんでした」
「下へ来ればよかった」
「行って、何と呼ばれればよかったのです。あなたの妻ですか。サウルの娘ですか」
ダビデの口元が固くなった。ミカルは、そこでやめるべきだと思った。それでもパルティエルが道に立っていた姿が、窓の外の群衆と重なる。自分を連れ戻した男が、皆に囲まれて踊っている。ミカルが何を失ってここにいるか、彼は尋ねたことがなかった。
「パルティエルは、泣きながら私についてきました」
「ミカル」
「私を返すよう求めたのは、あなたです。あの方と暮らした家から私を連れ出して、ここへ置いた。今日はその家の窓から、あなたを見ていました」
ダビデは卓の脇に立ったまま、すぐには答えなかった。彼には王として、ミカルを取り戻す理由があったのだろう。彼女が以前、命を助けた妻であることも事実だ。どちらのために求めたのか、ミカルには聞けなかった。答えを聞いてしまえば、昔の記憶まで変わりそうだった。
「父上があなたを退け、私を選んだのはエホバだ」
ダビデの声が強くなった。ミカルの頬が熱くなる。父サウルのしたことを、彼女はすべて正しいと思っていない。ダビデを逃がした夜には、父に背いた。それでも「サウルの娘」と呼ばれた瞬間、父と自分が一つのものとして彼の前に置かれた気がした。
「私も、その父からあなたを逃がしました」
「あの夜のことを忘れたことはない」
「では、私を見て話してください。父の家のことだけでなく」
ダビデが目を上げた。ミカルは彼の顔を見る。若いころ、竪琴を弾いていた手も覚えている。窓から逃げる前に、その手で彼女の肩を握ったことも。彼を嫌いになれたなら、先ほどの踊りを笑って済ませられたかもしれない。
「お前は、私が今日したことを恥だと言った」
「言いました。あなたを傷つけたくて言いました」
ミカルは自分の声が震えているのを聞いた。ダビデは驚いたように口を閉じる。彼女は卓の縁を握り、続けた。
「箱を迎えたあなたの喜びと、私をここへ連れ戻したことは別です。私はその二つを一緒にして、あなたを責めました。でも、あなたも私に、ここでどう暮らしているか聞かなかった」
廊下を人が通り、扉の向こうで足音が止まった。ダビデには、まだ祝福を待つ家族がいる。広場にも人々が残っている。ミカルはそのことを知っていたし、今すぐ二人の年月を話し尽くせるとも思わなかった。
「私は今日、お前の部屋で争いを始めるつもりはなかった」
「私も、迎えるつもりで食事を用意しました」
ダビデが鍋を見た。表面には、白い膜が張っている。彼は無花果にも手を伸ばさなかった。
「私はエホバの前で喜んだことを、恥じない」
「分かりました」
「お前に、あの踊りを喜べとは命じない。だが、嘲られれば怒る」
「私も、怒っています」
ダビデは返事をせず、扉へ向かった。出ていく前に一度だけ振り返ったが、ミカルはもう言葉を探さなかった。扉が閉まり、外の角笛がまた聞こえてきた。
しばらくして侍女が入ってきた。ミカルは椅子に腰を下ろしたまま、膝の上で手を開く。爪の跡が掌に残っていた。侍女は鍋を温め直すか尋ねた。
「下げてちょうだい」
「奥様のお食事は、別にお持ちしますか」
ミカルは首を振った。侍女が鍋を持ち上げると、底が卓に当たって小さく鳴る。無花果は残してもらい、白湯を一杯頼んだ。
一人になると、ミカルは引き出しから短い麻縄を取り出した。ダビデを逃がした夜のものを、少しだけ取っておいた。古い繊維は乾いて硬い。あのとき彼を助けたことを、今も間違いだとは思わない。だからといって、その夜の選択で、その後の人生すべてを決められたくはなかった。
侍女が白湯を運んできた。ミカルは縄を引き出しへ戻し、カップを受け取る。湯が少し冷めてから口をつけると、乾いていた喉を通った。彼女は無花果を一つ取り、半分に割った。
格子窓の外では、まだ人々が歌っている。明日になれば、王の踊りについてそれぞれが話すだろう。ミカルはもう窓辺に立って、誰かの目に映る王妃の姿を整える気になれなかった。侍女に戸を閉めてもらい、椅子に座って残りの無花果を食べた。
聖書には、ミカルに死ぬまで子供がいなかったと記される。その理由について、窓辺の彼女が何を考え、ダビデとその後どのように暮らしたかは語られていない。この日、ミカルが選べたのは、夫を迎えるために用意した食事を下げ、自分の喉を潤し、閉じた窓の内側でしばらく一人になることだった。




