エアコン
「あんまり時間がないじゃけ」
黒澤が花をタクシーの後部座席に押し入れた。
タクシーが、ラブホテルの前に止まると、黒澤が「キャッシュで」と言った。
タクシーの運転手は、黙って領収書を黒澤に渡した。
ホテルの入り口には、「回転木馬」と書いてある。
黒澤が、「こっち」と言うので、花は、黒澤の後をついて階段を上った。
廊下の足元にある電気が、赤い絨毯を映し出している。
花が、黒澤の後ろから、「カギはどう・・・」と言いかけると、黒澤が振り返って、親指を口にたてた。
エレベーターの横の部屋を、黒澤がマスターキーで開けドアを開けた。
外はまだ薄明るいが、黒澤がカーテンを閉めた。
「今日は、キスを教える」
黒澤がそう言って、ベッドの上をたたいた。
花が黙っていると、黒澤が「早く」と言うので、仕方なく花は黒澤の横に座った。
「やっぱり素直じゃないけ」
黒澤は、花を押し倒し、唇に自分の唇を重ねた。
それからいきなり花の着ているブルーのブラウスのボタンを外すと、花の乳房をあらわにした。
「きれいじゃけ」
言葉だけなのに、花の膣の中が濡れて来る。
「暑いじゃけ」
花の言葉に、黒澤は立ち上がってエアコンのリモコンを探した。
「ないじゃけ」と、黒澤は部屋の中を見回した。
花が立ち上がろうとすると、黒澤が花を再び押し倒し、花のブラウスとパンタロン、下着も全部脱がし、「裸の方が感じるじゃけ」と言った。
「もう少しゆっくりできると思ったじゃが、かんにん」
黒澤はそう言うと、上半身裸になった。
花は、黒澤の上半身の裸を初めてみた。
痩せた肩に、その腹には、刺青があった。
「彫りの深さはどのくらいじゃけ?」
花は思わず心配になって言った。
昔、真白の男が彫り物で死んだのである。
黒澤はそれには答えず、花のわれめを指で開き舌でなめった。
レモンのような匂いがした。
と、突然電話が鳴った。
それは、部屋とフロントをつなぐ電話が、机の上にあった。
電話は数回なったあとプツッと切れた。
「ふる勃起じゃけ、せっかくくわえてもらおうと思ったのに」
黒澤は、心底苛立ったように、「ふざけんな!」と、怒鳴った。
花がベッドの上で起き上がると、今度は、黒澤の携帯が鳴り、すぐ切れた。
黒澤は携帯を見ると、花にも渡した。
(至急帰るべし)
誰だろうと、花が首をかしげると、「楠木じゃけ」と、黒澤が言った。
「こんなところにあった」
花は、ひとり言のようにつぶやいた。
すると、黒澤がベッドの下に足を入れ、それを蹴飛ばした。
エアコンのリモコンは、壁の角にぶつかり音をたてた。
「タイムリミット」
外に出ると、楠木が車の前で、タバコをくゆらせていた。
車に乗ると、「花ちゃん、また会えた」と皆伐が言った。
黒澤が、前のシートを足で蹴った。
「おうっ!黒澤さん、車、壊れるあるね」
楠木が言うと、「いいから!」と、黒澤はまだ苛立ちが止まらないようだった。
日は完全に落ちていた。
この時間からが、京都の始まりである。




