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貧乳少女とヒマラヤンとの会話みたいなやつ

作者: 壺中天
掲載日:2026/02/20

少し北海道弁入ってる箇所がありますが、か~るく読み流していただいてかまいません。

後書きに解説があります。


 

 あたしは玄関で(ローファー)を脱ぎ捨てた。

 スリッパを突っかけんの忘れて、白いソックスのまんま、廊下走ったから、床が拭き掃除しささる。


「ただいま~、ミミズク。ご機嫌いかがかな~?」

 居間に飛び込み、スクバを放り投げると、カウチに寝そべってたヒマラヤンを胸に抱き上げる。

 この子は毛足が長くて、耳と足先が黒っぽい。

 ちょっとばかし目付きがきつくて、顔はキジトラみたいな毛柄になってる。

 だから、血統書付きじゃないけどそこがいい。一目惚れだ。

 なんかミミズクに似てるからそう名前付けた。


 ラノベで『ミミズクと夜の王』って本があるんだ。

 大分前の作品らしいけどさ。御伽噺みたいな感じする、幻想的でめっちゃわや。

 小さな奴隷の少女が「夜の森」を彷徨ってるシーンから始まんの。

 おっかない森の暗闇の中を、裸足の貫頭衣か、ワンピースか、膝丈くらいの白い衣裳の裾が、蝶々みたいにふわふわひらひら、動いてるみたいないなイメージが残って忘れらんない。

 あくまでイメージね。足に鎖付けられてし、そんなかろやかに歩けないだろうから。

 絶望の果にここに来るまでの回想シーン、ぽろぽろ泣いちゃったよ。

 それでもって、美しい魔物の王に自分のことたべてほしいってお願いするんだ。

 「崩壊と再生の物語」だったかな。

 好きな本だったし、そっから名前もらった。


 まあ、少女は自分こと「ミミズク」って名乗ってたけど、ちっちゃくてかわいくてさ、うちの子みたいに目付き悪くないと思う。


無乳(むにゅ~)

 抱きしめられたミミズクは、萌黄(もえぎ)にちかい浅葱(あさぎ)色の眼で、迷惑そうにあたしを(にら)んで文句をたれた。


「むっ、無じゃないし!? あたしの胸はAなんだから!! つつましくて貧しめだけど、ちゃんとあるっしょや!!」

 あたしは思わずミミズクを手放し、自分の胸を隠すようにしながら掴んで寄せた。


()~っ」

 ミミズクはそっぽ向いてあくびをし、後足でバババッと耳掻(みみか)いてる。


「無視するな~っ! おのれ、許さぬ~っ!!」

 あたしは猫吸いの体勢に入らんとした。


「着替えて来なさい、制服に毛がつくでしょ!」

 ママから”待った”がかかり、教育的指導が入ってしまう。

 雑誌で後頭部をはたかれ、脳震盪(のうしんとう)おこしそうになった。


「おっ、押忍(おす)です」

 ここは素直に戦略的撤退だ。


 あたしは二階の自室への階段を登る。

 まずは着替えだ、そして……。

 思う存分、ミミズクと(じゃ)れるのだ。


 ふんすっっ!






『ミミズクと夜の王』、第13回電撃小説大賞で《大賞》受賞した、紅玉いづきのデビュー作。



床が拭き掃除しささる(床を拭こうと思っていたわけではないが、状況が自動的に掃除してしまう)


しょ、しょや(でしょ、でしょう)。そうでしょうの意味合いで使う。しょやだと少し怒り気味の感情のこもった言い方。


はたく(叩く、殴る)

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