貧乳少女とヒマラヤンとの会話みたいなやつ
少し北海道弁入ってる箇所がありますが、か~るく読み流していただいてかまいません。
後書きに解説があります。
あたしは玄関で靴を脱ぎ捨てた。
スリッパを突っかけんの忘れて、白いソックスのまんま、廊下走ったから、床が拭き掃除しささる。
「ただいま~、ミミズク。ご機嫌いかがかな~?」
居間に飛び込み、スクバを放り投げると、カウチに寝そべってたヒマラヤンを胸に抱き上げる。
この子は毛足が長くて、耳と足先が黒っぽい。
ちょっとばかし目付きがきつくて、顔はキジトラみたいな毛柄になってる。
だから、血統書付きじゃないけどそこがいい。一目惚れだ。
なんかミミズクに似てるからそう名前付けた。
ラノベで『ミミズクと夜の王』って本があるんだ。
大分前の作品らしいけどさ。御伽噺みたいな感じする、幻想的でめっちゃわや。
小さな奴隷の少女が「夜の森」を彷徨ってるシーンから始まんの。
おっかない森の暗闇の中を、裸足の貫頭衣か、ワンピースか、膝丈くらいの白い衣裳の裾が、蝶々みたいにふわふわひらひら、動いてるみたいないなイメージが残って忘れらんない。
あくまでイメージね。足に鎖付けられてし、そんなかろやかに歩けないだろうから。
絶望の果にここに来るまでの回想シーン、ぽろぽろ泣いちゃったよ。
それでもって、美しい魔物の王に自分のことたべてほしいってお願いするんだ。
「崩壊と再生の物語」だったかな。
好きな本だったし、そっから名前もらった。
まあ、少女は自分こと「ミミズク」って名乗ってたけど、ちっちゃくてかわいくてさ、うちの子みたいに目付き悪くないと思う。
「無乳」
抱きしめられたミミズクは、萌黄にちかい浅葱色の眼で、迷惑そうにあたしを睨んで文句をたれた。
「むっ、無じゃないし!? あたしの胸はAなんだから!! つつましくて貧しめだけど、ちゃんとあるっしょや!!」
あたしは思わずミミズクを手放し、自分の胸を隠すようにしながら掴んで寄せた。
「無~っ」
ミミズクはそっぽ向いてあくびをし、後足でバババッと耳掻いてる。
「無視するな~っ! おのれ、許さぬ~っ!!」
あたしは猫吸いの体勢に入らんとした。
「着替えて来なさい、制服に毛がつくでしょ!」
ママから”待った”がかかり、教育的指導が入ってしまう。
雑誌で後頭部をはたかれ、脳震盪おこしそうになった。
「おっ、押忍です」
ここは素直に戦略的撤退だ。
あたしは二階の自室への階段を登る。
まずは着替えだ、そして……。
思う存分、ミミズクと戯れるのだ。
ふんすっっ!
『ミミズクと夜の王』、第13回電撃小説大賞で《大賞》受賞した、紅玉いづきのデビュー作。
床が拭き掃除しささる(床を拭こうと思っていたわけではないが、状況が自動的に掃除してしまう)
しょ、しょや(でしょ、でしょう)。そうでしょうの意味合いで使う。しょやだと少し怒り気味の感情のこもった言い方。
はたく(叩く、殴る)




