不干渉
結果として、
スフェライオス穏健派は彼ら自身の手で母星へ戻ることになった。
意識はデータとして記録され、
プロトアーカの磁気制御下で外宇宙を横断する。
復号地点は、母星中枢域。
「……その手法を選んだか」
淡々とした声が、
スフェライオス拠点空間の深層に響く。
「想定の範疇ではあるが――
よく実行したな」
それは、
プロトアーカが保持する穏健派の表象データを確認した、
プロトアーカ本体の評価だった。
感情はない。
称賛でも、非難でもない。
ただの事実確認。
スフェライオスと法術師。
どちらに与するか。
異世界の管理者は、その解を演算できなかった。
文明と文明の衝突において、
最適解は常に複数存在し、
そのいずれもが未来を保証しない。
だから、
プロトアーカは一つの選択を行う。
――スフェライオス側が、
胞構造空間群へ進出しないよう、
押しとどめる。
干渉は最小限。
拘束は行わない。
ただ、進路を塞ぐ。
「観測は続行する」
その言葉だけを残し、
プロトアーカ本体は再び沈黙した。
──ともかく穏健派の表象データは転送される。
肉体は持たない、だが同一性は保たれる。
少なくとも、彼ら自身がそう信じる限り。
それで十分だった。
娯楽侵攻の贖いは、これからだ。
主戦派の罪ではあるが、
それを止められなかった者たちにも責任はある。
穏健派は、
自分たちの文明を自分たちの手で変える道を選んだ。
時間はかかる。
世代もまたぐ。
だが、それでもやる。
◇◇
胞構造空間群は、この決断に深く介入しない。
空間管理者、法術師連合、
そしてプロトアーカ。
三者は合意する。
・スフェライオス母星への直接干渉は行わない
・文明再編に対する軍事介入は禁止
・交流は、個人規模・限定的なものに留める
・空間的距離は維持する
和解。
だが、完全な融和ではない。
距離を置くこと自体が、
最善の選択だと判断された。




