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手段
問題は一つだった。
外宇宙――スフェライオス拠点空間へ、
どうやって穏健派を送り届けるか。
胞構造空間群側が直接輸送すれば、
母星へ到達する前に攻撃を受ける可能性が高い。
強行突破も不可能ではない。
だがその場合、
送り届けた先で穏健派がどう扱われるかは想像に難くない。
――守るための輸送が、
結果として彼らを危険に晒す。
その袋小路を破ったのは、
プロトアーカの端末だった。
「私が担おう」
静かな提案。
プロトアーカは、自身の権能――磁気操作を提示する。
それを記録装置として運用する案だった。
意識情報をデータ化し、
スフェライオス母星で復号する。
SSD――
その語が最も近い。
だが当然、問題が残る。
同一性保持権。
それは、
「記録された意識は、本当に“本人”なのか」という問いだ。
無機生物として法術師たちとは異なる価値観で生きるプロトアーカ。
そして、穏健派スフェライオス。
両者は、その問題を理解したうえで、
同意した。
時間をかけてでも、
自分たちの文明を内側から変える。
そのために、
“今の自分”を一度、託す。
選ばれたのは、
最も危険が少なく、
最も遠回りな道だった。




