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撤退
迎撃は成功した。空間の泡立ちも神坂と黒羽の空間操作で抑え込まれている。
だが、終わってはいない。
第3艦隊、およびそれ以降のスフェライオスの連合艦隊がまだ存在する。
惑星防衛を担っていた法術師たちは、飛行術式を起動し、ある地点へ向かう。
目標は恒星系外縁に布陣する敵艦隊。
そんな中。
「ここまでやっても攻めきれないのか。
力不足だったかな? 母星のみんなは楽しめてる?」
恒星系全域に、声が響いた。
いや、正確には違う。
外宇宙にあるスフェライオス母星へ向けた、大出力通信だ。
傍受を恐れる素振りは一切ない。
視聴者を優先する――スフェライオス文明の性質そのものだった。
しばらくその通信が止む。コメントでも確認しているのか。
その間にも連合艦隊は肉薄する法術師たちに光の雨を放っている。
例えよそ見しているように見えても彼らは超文明の戦闘兵器。
迎撃は片手間で行える。
結果、スフェライオス艦隊は撤退を選んだ。
負け惜しみともつかない声を残して。
「参ったよ。降参だ。
じゃあ、僕らは撤退するねー」
恒星系に静寂が満ちる。
スフェライオスの吐き出した光の雨も徐々に薄まって周りは純粋な星空に染まった。
「終わったのか?」
拍子抜けした法術師たちが困惑しながら宙域を漂う。
──いや、まだだ。
「全員。1-1SACに集合せよ」
舞台が変化しただけだ。




