表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/27

空間異常

空間歪曲。

黒羽は第2艦隊を殲滅したのちに、

神坂はスフェライオス第3艦隊の突入の看破と同時に。


極めて多量のそれに気が付いた。


「さあ、第3艦隊を援護しよう。

──総力戦だ」


スフェライオス第4艦隊~第10艦隊のワープアウト。


星のようなきらめきが約50。


それはスフェライオスが遂に総力戦に踏み切った、

最大戦力の実力行使と見えた。


しかし問題は戦力だけではない。


大質量を転移させるための大規模な空間歪曲。

それはとある許容値を超えた。


──ついに空間が泡立つ。


沸騰した水のように発生し続ける空間の気泡。

空間の気泡、すなわち膨らみ。瞬間的な、かつ強烈な斥力。


それを最初に感じたのは、法術師側。

空間管理者の経験のある法術師全員。


「空間が泡立った……!」

「想定範囲の特定、急げ!」


惑星表面に発生したら大被害だ。

単純に地上の生物にとって脅威。

しかも、最悪のケースはそれではない。


「惑星地殻領域への空間異常は真っ先に検出!」

地殻運動、プレートの接合部に衝撃が加われば。


「破局的な地震は絶対に防ぐぞ!」


──都市部直下型地震すらあり得る。


◇◇

それらの組織的な迎撃、惑星を守る姿をまぶしそうに眺めるプロトアーカ。

いや、あくまで幻視だ。

いまだ眼前の存在は、空間にアクセスする存在として不定形な靄となって漂っていた。


「守護者……か」

しかし、もれる感慨に満ちた声、この空間に満ちる穏やかさ。

どうにも、目を細めて我々法術師たちを眺めているように認識された。


ふと、疑問がわき出てくる。

神坂

「……なぜ、手を出さない。

お前がスフェライオスの創造者なら、ここで終わらせられるはずだ。

……いや、いつでもその機会はあったはず」


プロトアーカ

「終わらせる、という語の定義を確認したい。

文明の消去か。行動原理の破壊か。

それとも、観測不能状態への遷移か」


定義。

いかにも管理者的な返答だ。

すべてを分類し、把握してからでなければ先へ進まない。


神坂

「……全部だ。

少なくとも、これ以上侵略は起こらない」


プロトアーカ

「侵略は確かにしないだろう。しかしそれは“結果”だ」


一拍。


「私は、改めて“手段”を問うている」


手段?

一瞬、違和感が走る。


まるで——

自分の子を“どう終わらせるか”を選べる立場にあるかのような言い方だ。


……いや、違う。


神坂は気づく。


この存在は、終わらせる/終わらせないを感情で分けていない。


神坂

「……滅ぼせるのに、やらない理由があるのか」


プロトアーカ

「ある。

それは“できない理由”ではない。

“選ばない理由”だ」


神坂

「……聞こう」


プロトアーカ

「スフェライオスを完全に消去した場合、

観測できる文明は、急激に減少する」


神坂

「……それだけか?」


プロトアーカ

「それだけ、という評価は理解できない。

だが、君の思考様式ではそう受け取るだろう」


——返されている。

こちらの価値観を前提にした“翻訳”だ。


だが、それだけではない。

神坂は直感する。


それだけじゃない。何か隠している。

──恐らく自身すら知覚できずに。


神坂

「お前は、あいつらを“失敗作”と呼んだな」


プロトアーカ

「訂正する。

“失敗作”という語は、君たちの言語体系に合わせた近似表現だ」


神坂

「近似表現か。わずかに意味が乖離していると?

……要は本心じゃない?」


プロトアーカ

「本心、という概念を私は持たない。

ただ、設計意図と現在状態の乖離は存在する」


神坂

「設計意図との乖離ね。

それを、人は“教育の失敗”って呼ぶ。

お前、人の親っぽいぞ」


プロトアーカ

「そうだろう。

だから私はその語を否定しない」


否定もしないし肯定もしない。


神坂

「……なら、なぜ俺たちを攻撃せずにいる。

信用できると思ったのか?」


プロトアーカ

「信用という語も、定義が必要だ」


神坂

「……」


プロトアーカ

「君は感情を保持したまま、

それを判断基準から切り離そうとしている」


神坂

「管理者だからな」


プロトアーカ

「その矛盾は、多くの文明で破綻を招く。

だが君は、破綻を自覚したまま運用している

……興味深い」


神坂

「褒めてるのか?」


プロトアーカ

「評価している。

観測価値が高い、という意味で」


神坂

「俺はお前を信用する。

だが信頼はしない。疑い続ける」


プロトアーカ

「信用と信頼が分離された語であることを確認。

——推測、終了」


「合理的だ。

無条件の信頼は、未来予測精度を下げる」


神坂

「……お前も、俺を疑うか?」


プロトアーカ

「常に。

それは敵意ではない。

維持行動だ」


神坂

「なら、どう動く」


プロトアーカ

「私は直接介入しない。

ただし、観測・演算・座標補正は提供する」


神坂

「後方支援か」


プロトアーカ

「君たちの語彙では、そうなる」


神坂

「……利用されてる気分だな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ