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黒幕への謁見

◇◇???視点


待っていた。


かの者、我が興味の対象の復活を。


──ワームホール越しの向こうの空間の掌握も進んでいる。


そろそろ、顔合わせをしに赴こうではないか。


俺、私直々に、向こうの空間の肌感覚を味わいに。

──かの者、彼に会いに。











◇◇神坂視点


……その瞬間、別方向から“もっと大きな歪み”が走った。


空間曲率、増大。座標接続閾値を超過。


再構築されたばかりの思考、

上位空間管理者、広域空間群管理者としての経験は、それを即座に感じ取った。



今までの艦隊ワープアウトとは質が違う。

空間そのものが、泡立つようにふくらみ始めている。

また何か来る。


虚空が、空間が、座標が裂けて、異界とつながる。

複数のワームホールが形成された。

しかし、何も出てくる様子はない。


「見事だ、この空間で初めて出会えた生物よ、異界の文明の守護者よ」

突如、周囲に声が響く。



空間そのものがそれにひれ伏すように揺れ、振動となって、生身の鼓膜に届き、声という情報となる。

敵艦隊の“通信”とは全く異質。

直接意思を発振してくる。


──熱、電磁波、読心術(※1)、反応なし。

詳細位置が不明。


神坂をして、いや、胞構造空間群の歴史上こんな経験はない。

すなわち法術師として初めての事象、経験だった。


その警戒をそれは穏やかな言葉で応じる。


「まだ若い宇宙……か。

水素に満ちた恒星、全天に絶え間なく感じるガンマ線バースト……

すべてが私にとって懐かしい。」

今までのスフェライオスのように、こちらの神経を逆なでしてくる態度ではない。


「私の宇宙は、すべてが静かになって久しい。

だからこそ、この騒がしさが愛おしい。

まだ生命の匂いがする。

私が過ごした“終わりゆく宇宙”とは違う」

その言葉は奇妙に穏やかだった。

まるで、手を広げて愛おしそうに空間を感じる存在を幻視するほどに。


だが、だからこそ──逆に不気味だ。


「これは喜ばしい……。

そうだ、喜ばしい」


宇宙が、静かになって久しい。

宇宙の騒がしさが喜ばしい。

完全に“人間の尺度”ではない。

それどころか生物であるかも怪しい。


そして名乗らない。

先ほどまで交戦していたものたちならば“Vtuber”の如くテンション高く自己紹介してくるはずだ。

だが目の前の存在は、違う。


「何者だ?」

問うと、すぐに返答があった。


「ああ。自己紹介を忘れていた。

──俺は、私は、君たち、汝らにとって侵略者である“スフェライオス”を、

益無き侵略を繰り返す歪んだ文明を作った……製作者、親、もしくは黒幕。

“プロトアーカ”という」


「スフェライオス」「プロトアーカ」。それが、敵の名前。

ようやく明かされた敵性勢力の自称(※2)。


「さあ、俺は、私は名乗った。

──君たち、汝らのことも教えてくれ。」


「……。

この空間、後背の文明惑星を守る、

空間管理者、法術師連合所属、第1広域空間群管理者、

神坂だ」


「“カミサカ”……。

周囲の通信電波から取得した言語モデルから類推……。

“神坂”、か。ようやく知れた、君の名を。」


「俺の?」


「ああ。

……そうだ。俺、私も、我が創造物たち、スフェライオスも。

みな、君の情報を求めていた。


情報。……それには力量も含まれる」


おっと?怪しい流れになってきたぞ。


「まずはあいさつ代わりだ。

ブラックホールすら……良く手になじむ」


空間が歪む。神坂の周囲に数十は下らない数の黒き波が虚空に浮かぶ。

それらは遠隔の座標と同時に接続される。


視界が光に埋め尽くされ、ただの白一色となる。

現実感すら失った直後に熱源を探知。


熱量と粒子の槍が、数十のその歪みから飛び出してくる。

天文学的な事象、ブラックホールの降着円盤(※3)。

それを空間転移で持ってきた。


「──っ!

相手は空間そのものかよ!?」


上下左右、前後から熱量と光の奔流が迫る。


降着円盤、その構成物質の指向性ジェット噴射。

遠方から空間ごと移動してきたそれは、光速度に迫る速度と、

その状況下での他の粒子との摩擦熱によって蓄積した熱量を孕む光の槍となる。


その脅威度は、先ほどのスフェライオスたちがつくった「恒星風の槍」とは大きな隔たりがある。


問題は飛び出してきた結果だけではない。

移動方法も問題だ。

その方法、ワームホール自体は法術師たちも使用しているが。


「空間歪曲を乱発しやがって……!空間が泡立つぞ!」

しかし数十もの物量ともなると「空間の泡立ち」(※4)が問題となる。


……空間転移による回避を封じられた。

それどころか空間を修復する側に回らないとこの空間が崩壊する懸念すら存在する。


“プロトアーカ”は静かに告げる。


「恐れるな。これは試金石だ」

声は不思議と怒っていない。冷酷でもない。

ただ──宇宙の観測者が、顕微鏡越しに細胞を見ているような温度。


「このくらい、凌げるだろう?

この宇宙で“初めて出会えた”生命よ、異界の文明の守護者よ」



──空間を修復する。亜光速の光の槍を回避しながら。

それが空間管理者として、この瞬間神坂が義務付けられたすべてだ。


舌打ち。


それは、プロトアーカの「試金石」は、まだ始まったばかりだった。



◇◇

※1

■読心術について

読心術には4種類の手法が存在する。

1.眼球に干渉。思考に際し発生する電位、さらにそこから発する電界が対象の体表に出てきたものを視認する。

2.魔力(ベクトル干渉媒体)を対象の脳領域に射出、透過させる。思考電位による魔力の挙動の差が発生するため、そこから脳活動マップを作成する。

3.非言語サイン(アイ・アクセシング・キュー)の視認。

4.空間干渉の際に発生する時空震、重力波が、対象の脳組織で共鳴、共振する。その影響で変化した重力波を観測する。


──これらはすべて、単一の意識、かつタンパク質ベースの脳構造を想定した手法である。


※2

■注釈

──ここまでの神坂視点のナレーションでスフェライオス表記が出てきていたのは便宜上。

彼ら法術師たち──未来を知るxectや交戦中の神坂を除く──はその名前をここで初めて知った。


※3

■ブラックホールの周囲にあるもの

1.降着円盤

飲み込まれつつある物体は原子以下まで分解され、強い重力場に沿ってブラックホールの周囲に円盤を形成。

この際、極限環境下での粒子同士の摩擦により高エネルギーの光を発する。

2.ジェット噴射

物質をある程度飲み込むとブラックホールの極からジェット噴射を発し始める。

「ブラックホールのげっぷ」って言い換えてもいい。

というかディスカ〇リーチャンネルではそう言ってる。


※4

■空間が泡立つ

さて、ここで空間転移の思考モデルを提示します。

空間というゴム膜を想定してください。このとき、ゴム膜に対する垂直方向は4次元以上の座標軸です。

離れた二点を近づけたいとき、その二点に指を突き立て、そのまま下に引き伸ばします。

次に、そのままゴム膜の平面から十分離れたらゴム膜を変形させている指を近づけます。

はい、二点間が接触しました。あとはそのまま移動します。


問題はこれを同時多発的に行った場合。

4次元方向にずれた「トンネル」は、そのまま形状を自ら復元しますが、

数が多いと、それは復元しきらず大小さまざまな泡を残します。

この泡は、やがてゴム膜(三次元空間)に戻ってきます。

水面に浮かんでくる泡のように。

やがてそれは弾けます。

すなわち、「空間が局所的に弾ける」。

こわーい。


◇◇

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