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鎧袖一触

◇◇


惑星から恒星を起点として120度、公転面に沿って回した位置、

惑星から距離にして5AU。


そこに構えるスフェライオス第3艦隊。

それは恒星光を鈍く反射する星々として、公転面に垂直に散開している。


3回にわたる対惑星ミサイルの波状攻撃。


恒星風を「戦略」「クラスター」核ミサイルで収束したプラズマの槍を、

身一つでかつ、同時攻撃である核ミサイルを使って迎撃したさまを見届け、

それを凌いだ侵攻対象に対し彼らの士気、いや知る欲求は最高潮に達していた。


それに含むのは好奇心。

求めるのは必死の抵抗。


悪意を孕む第4の攻撃を射かけようとしていた。


「もっと抵抗を見せろ」

「手札を見せろ」


遠方の惑星に注目する彼らは、


──懐に転移してきた法術師への対応が遅れる。


◇◇


空間を裂いて上位空間管理者、神坂が帰還する。

転移した座標は艦隊左翼、公転面に対し、北極側の端。


──2ミリ秒後、《思考加速》を起動。


BMI、拡張脳が思考電位を加速演算し始める。

その直後、熱源を探知。

その数8。


──58ミリ秒後、第3艦隊の対惑星ミサイル、第4群の発射を確認。


加速中。目測として15ミリ秒で40メートルを飛翔した。

現在平均秒速3000メートル。弾道計算。


迎合点算出終了。《魔力の弾》8連射。


どうせ碌に進まない。迎撃できるのは30秒後。

主観時間に直して30000秒後だ。


艦隊の本体を叩く。


──112ミリ秒後、飛行術式最大推力。

戦艦直上から接近。

タングステンロッドを生成開始。


──145ミリ秒後、ブラックホール機関があると思しき、

マイクロブラックホールレベルの空間歪曲を照準。

発射。


奇襲は終えた、《思考加速》終了。

単純に弾着、決着にかかる時間まで伸長されるのを嫌ってのことだ。

必要があればまた発動する。


──その0.5秒後。

艦隊左翼のスフェライオス巡洋艦の表面装甲にタングステンロッドが突き刺さる。

それは、摩耗しながら装甲を貫通。

機関部を撃ち抜いた。


そのまま沈黙した戦艦をすり抜け、次の戦艦を狙う。

すり抜けた背後で心臓部を撃ち抜かれた巡洋艦がEMPと重力波の爆発を起こす。


それを見るなんてことはしない。よそ見をせずに次の戦艦の重力中心に次弾を撃ち込む。

光が戦艦の芯を貫いた。


それを見届けて、そばを掠めるように通り抜ける。

次。


見えてきた目標は、これまでの、

いやこの艦隊のまだ撃破していないものを含めたどの戦艦よりも見た目が異なる。


シンプルな直方体。


疑問符を脳裏に浮かべていると、ようやく奇襲に気付いた戦艦たちの弾幕が襲い掛かってくる。

友軍の残骸と射線がかぶっているのに全く無頓着だ。



先の直方体から熱源反応。

吐き出されたミサイルは、特に高速なわけでも、高エネルギーを検知したわけでもない。

しかし「それ」にたいして悪寒が走った。


「それ」はこの宙域に生まれ落ちた直後、

今なお続く残存艦からの弾幕に撃ち抜かれて。


爆音。横から強烈な熱量と放射線。

……横?

ああ。第4群の対惑星ミサイルの迎撃が今だった。


それを確認し、異様な戦艦、そしてミサイルの爆心地を探す。

しかし、爆発も、爆発の残光もない。


──あのミサイルは爆発しなかった。


「なにかある」

その証左に先ほどから戦術核砲弾が飛んできていない。

あんなに使いまくっていたのに。


──あれは、さきほど神坂が死に追いやられた。


「脳を選択的に壊す異界物質」

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