悪意の落着
◇◇SAC視点
「第1群、戦術核砲弾、全弾迎撃!」
その領域では華々しい爆発が起こっているはずだが、観測できるのは数分後。
どうでもいいとばかりにTIFAは対処を続ける。
「第2弾のミサイル群の追跡はどうだ?」
「8発ともできてます……。──!?」
オペレーターの反応を不審がったTIFAが報告を促す。
「敵ミサイル、分裂!」
「分裂!?」
「8発の内3つが分裂、現在合計26!」
※一つあたり6発射出して追加される。
8+(3*6)=26
8*7=56
「……考慮すべきことが増えたな。
MIRVか?デコイか?どっちだ?」
「速力、全飛翔体に変化なし」
「ベロシティも同様」
「レーダー反射断面積、縮小しています」
──MIRVだ。
多弾頭ミサイル。分裂後の子弾がそれぞれの目標に誘導するタイプだ。
「残り5発も分裂する可能性があるな?
めんどくさ。近接防御に集中する」
「長射程のレイヤーの迎撃は?」
「一応しとくか。《精神オーバーライド》」
「精神接続、安定……。
迎撃コースを法術師群に転送する」
『……了解、取った』
次の瞬間、各法術師の身体が一斉に“弾かれた”ように動きはじめた。
空間に白い線が幾筋も走り、
それが分裂した核弾頭の進路を次々と横切る。
「迎撃術式照準、補正完了……!
あと二十秒で交差!」
「足りるか……?」
「……足りないかもしれません」
室内が静まり返った。
「残りの五発、分裂開始!」
モニターに赤点が一気に増える。
26 → 56。
「全弾誘導中……!
これ、惑星直行コースです!」
TIFAは息を呑んだ。
「近接防御に回せ! 長射程は切り離す!
法術師全員、惑星上空で迎撃に専念させろ!」
『……わかった。落とすぞ、全部だ』
◇◇
双方の、上下の、嘲笑しながら文明を蹂躙する意思と文明を守る意思が衝突する。
──嘲笑。法術師たちは、見えない敵のそれを聞いた。
敵ミサイル、螺旋軌道。迎撃をすり抜ける。
螺旋軌道で避けたミサイル群は、惑星を半包囲するように散った。
弾道は乱れているのではない。
“見せつけるために乱している”。
嫌でもそれが分かる軌道だった。
直後、怒声が法術師たちの通信に響く。
「呆けるな!弾道計算!
最悪海に落ちるものは無視!
陸に落ちるそれに火力を集中しろ!」
各自のBMIがうなりをあげる。
下に、光学欺瞞術式。上に、核弾頭迎撃。
首筋のBMIから煙を吐いているものすらいる。
それでも撃つ。
撃たなければ、下が死ぬ。
惑星の街の、誰かの生活が、あっさり吹き飛ぶ。
迎撃光が雨のように宇宙へ伸びる。
白い線が、星空へ逆流する激しい河のようにきらめく。
その瞬間だった。
BMIによって強化された法術師の視覚は、その違和感を鋭敏につかむ。
──反射光。
『……待て。何だこれ……?』
その正体を解析した法術師が息を呑む。
絶望の中で足掻く惑星上空の法術師たちは……、
ミサイルシーカー先端の、
そこにあるべき核装置ではなく、“黒い円形のレンズ”が映っていた。
カメラだ。
「──は?」
続けて、映像信号の送信を検知。
つまり、56の瞳に見られている。
ただそれだけだった。
それは、慈悲ではない。
──見られている。笑われている。楽しまれている。
法術師たちの血管が、同時に沸騰した。
「核ですらねえのかよ……!」
「ふざけるな……!」
感情のままに、力を、後背を守るはずだった力を攻撃術式に変えて、深宇宙に放つ。
遊ばれている。
『……気づいたか?』
『ああ。こいつらは──』
怒りとともに、侵略者の性質を理解した。
「こいつらは、手加減すら、観察すらしてくる」
理解した瞬間、
惑星上空の空間は、法術師たちの憤怒で震えた。
◇◇
civilgazer
《絶望が間近に見れる》
《残念!カメラ弾頭弾でした!》
《必死だったねー》




