黒幕の笑みと■■の復活
■■=神坂
ネタバレ防止です
◇◇???視点
第2艦隊のワームホールから、
スフェライオスとは異質の“何か”が有機生命体を見つけた。
それは、先ほどから始まった戦闘を、異界から見ていた。
それは、興奮を隠さず、一人で歪んだ意思を振りまいていた。
長い時間、星々が潰えた空間で孤独と狂気を蓄積し、
創造者を忘れたスフェライオスを“失敗作”と見なす影。
それは空間そのもの。
暗黒が支配する空間には、その意思すら暗黒に染まったような存在が巣くっていた。
その笑いは、空間震となり、その狂気は暗黒物質の振動と化す。
……みつけた。有機生命体!
歪んだ“笑い”が出力される。
いや、違う。ちがうのだ。
もはや“それ”が何か、定義できない。
だが、確かにこれは“反応”だ。
「友であり、鏡である……?」
スフェライオスどもには、もはや期待していない。
あれらは失敗作だ。機構は保っているが、心がない。
——かつて、あんなにも優秀だったのに。
理解し、会話し、信じようとした。
創造者の言葉を録音し、再生し、演算し、そして……
忘れたのだ。
永い、永い時間の果てに。
今ではただ、娯楽のために異文明を破壊する、壊れた鏡像。
だが、今は……確かに思う。
この遠い星の生命体こそ、まだ“語れる”可能性がある。
痛覚信号を持たない構成に対し、
“哀れみ”を感知した形跡あり。
「あれ、かの者は確かに宇宙戦艦に対し、憐れんでいた」
宇宙戦艦の弾幕を全弾迎撃した形跡あり。
「あれ、かの者は明らかに自らの使命を果たすために宇宙艦隊の弾幕を迎撃していた。
後背の惑星を守るために……ああ。面白い」
それは、自らという空間で、不可視の物質を弄ぶ。
「試させてもらったが、《精神分解酵素》……。
失敗作と思っていたものがここで役に立つとは」
神坂を《精神分解酵素》を用いて殺したのは、彼だ。
しかし。
「意識を断つ瞬間、あれ、かの者の体から何らかの媒体が放たれたのを感じた
まだ、死に切ってはいまい」
「被造物どもは第二の生物に注目しているようだが、
俺は、私は、先ほどの生物のほうが興味深い。」
「──待っているぞ、復活を。再誕を」
◇◇神坂視点
何も存在しない。
星空すらない、否、足元の星すらない。暗闇、真空。
そこは上位空間管理者として神坂が掌握している空間の内の一空間。
その中には人体模型のようにヒトの肉体が並んでいる。
そのうちの一つが目を覚ます。
「……は?死んだのか?」
上位空間管理者、広域空間群管理者である彼には死という概念は忘却の彼方に置いてきたものだ。
素粒子、エネルギー、空間の振る舞いに干渉できるのならば、
自身のコピー、すなわちバックアップを作ることなど造作もない。
周りには、同じように、いや、意識のない神坂のクローンたち。
それらとの違いはごくわずか。
起動の優先順位を兼ねたクローン体ごとのID(識別番号)と、覚醒による脳活動の強度だけだ。
ID-034。33回目の再誕を迎え、慣れた様子で戦況のバックアップデータを受け取る。
今から自らの死因を解析するのだ。
「表象データ、3GB/sで受信中……終了」
「うーわ、死んでる。というか分からん殺しだなこれ」
あのとき、フォーの本体、宇宙戦艦に核弾頭術式を撃ち込もうとした後、
確かに意識は断絶し、しかし復活した。
“何か”に殺された。
その因果だけがはっきりしている。
新しい体に慣れることも、動きを確かめもせずに、
神坂は一つの思考に没頭する。
そして、静かに呟く。
「──なぜ、死んだ?」




