応援
◇◇SAC視点
神坂の死を観測して、彼を管制していたオペレーターが一瞬凍りつく。
半狂乱になってTIFAに報告を試みる。
「神坂樹が……神坂樹が……!」
オペレーターの声が震える。
その報せにSACの空気は凍り付いた。
──そこに彗星軌道予測シミュレーションのアラートが重なる。
「アラート発令! 二年後に基底世界・文明惑星に彗星落着予想!」
「後だそんなの!」
TIFAの怒号が室内に響く。
彼自身、
“神坂が目の前で死んだ” という事実をまだ認めていない。
──認めてしまえば、足が竦む。
上位空間管理者なら当然のように自己バックアップを取っている。
そう信じているからこそ、TIFAはモニタから目を逸らさない。
だから彼は、SACを指揮し続ける。
しかし。
「敵艦隊の第3群、ワープアウト!」
「まだいるのかよ! 今度はどこに!」
「……恒星系主星から5AU……文明惑星から10光分」
「基底世界、文明の目視圏内です!」
「連合にレッドアラート! 第1広域空間群全体に応援要請!
ここだけで対処できん!」
「一級法術師、二級法術師! 宙域で行動できるものは惑星上空で欺瞞術式!
十分以内――いや、三分で現地人から空を隠蔽して見せろ!」
状況は、確実に悪化していく。
「敵艦隊から飛翔体!」
「三十分後に到達!」
「弾頭は!?」
「分析結果……核弾頭」
「~~っ! 放射能汚染しか能がねえのかよ、奴ら!」
◇◇
惑星上空に空間歪曲。
複数の法術師がワープアウトしてきた。
「応援現着!」
『状況は把握している。
各自の判断で行動するぞ?』
どのみちこの管制室より現場の判断の方が信頼できる。
「ああ、頼む」
『光学欺瞞術式展開!
……こちらは任せろ』
「被覆率上昇」
「惑星上空で欺瞞中、
及び手すきの法術師から入電!」
『迎撃、いつでも撃てるぞ。
コース指示を求める』
「了解、《オーバーライド》でいいな?」
「各砲弾の追跡は?」
「できてます!座標送ります」
──各法術師座標、および各自習得済みの攻撃術式の弾速把握。
敵飛翔体座標、ベロシティ把握。
迎撃コース算出。
《精神オーバーライド》。
各法術師のBMIにアクセス。
迎撃コース、迎合点を刷り込み開始。
認識補正。
重力レンズ、空間歪曲を加味。
3,2,1──
発射。
◇◇
「迎撃術式群、迎撃コースに乗っています。
全弾迎撃の見込みは十分」
それを聞いたTIFAは一仕事終えたとばかりに、
近くの椅子に腰かける。
「敵艦隊、散開!」
「熱量、排気ガスを確認、噴進弾か?」
「えっと、ミサイルってことか?宇宙戦艦から?惑星に?」
「弾頭は核!各飛翔体は拡散しつつ航行中。
しかし姿勢制御、弾道制御ができると考えたほうが良いかと」
「最終目標は惑星か」
「第1群、戦術核砲弾、迎撃術式群と10秒後に交差!」
「第2群、ミサイル群、姿勢制御!惑星に指向!」
◇◇惑星の民間人の視点
その日のことは覚えている。
星が増えて、流れ星になったあの日。
子供たちがはしゃいでいたにもかかわらず、
胸の奥ではあの光たちに不穏なものを感じたことを覚えている。
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しばらくして、空が割れた。
ひび割れた空から、幾つか白い星が見えた。
なぜか、「こっちの景色が真実だ」と感じた。
白い星たちは、流れ星に対し逆さの流れ星を放って、
上下から衝突した流れ星たちは上空に光の花を咲かせていた。
光の花に照らされた白い星たちは黒く浮かんでいて。
昼のまだ明るい空を白黒に彩っていた。
一部のものたちは白い星たちのことを「あれは人だった」と言っている。
眼がいいのか、注目を浴びたいのか。
あの現実離れした光景を見て、頭がおかしくなっているとさえいわれている。
あれが人だったのならば、あれはあの光の花から私たちを守っていたのか
私たちを背にとんでもない重圧がかかっていたのだろうか。
もしあれが人だったのならば、いつか聞いてみたい。
そう思った。




