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気が付いた
戻ってきたのは、ノートだった。
学生時代に書いていた日記。
夢のこと、なりたかったもの、
今読むと恥ずかしくなる言葉ばかりのノート。
捨てたはずだった。
それが、机の引き出しにあった。
ページをめくると、
最後の数ページだけ、見覚えのない文字があった。
私の字だった。
――もう一度、書き直してもいい。
――まだ、終わったことにしなくていい。
その瞬間、気づいた。
この町が戻しているのは、
物ではない。
忘れたままにしてしまった
「可能性」や「選択肢」や「本当の気持ち」だ。
この町では、忘れ物が戻ってくる。
戻ってきてほしくないものほど、
丁寧に、少しだけ形を変えて。
私は今日、町を出る。
机の上には、鍵が置いてある。
この町のものじゃない。
――たぶん、私はそれを忘れる。
そして、
もう戻ってこない場所へ行く。




