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Youthful Love Story

My heart flutters

「初めまして。東京から来ました、笠岡昴(かさおかすばる)です。よろしくお願いします。」

彼との出会いは中学2年生の頃だった。180センチほどの身長で顔が拳くらいに小さかった。それに加えて、鼻が高くて切れ長の目をしたイケメン。きっと女子のほとんどが彼に一目惚れしてしまっただろう。彼の自己紹介が終わった後、休み時間になるやいなや彼の机の周りには人が集まった。

「昴くんは東京からなんでこんな田舎に来たの?」

「昴くんモテそうだけど、彼女さんいるの?もしかして遠距離恋愛?」

クラスで全く目立たない地味な存在の私はあくまでも遠くから彼のことをちらちら見ていたのだが、彼はあんまりはっきりと質問に返答していないようだった。ただ黙って微笑んでいるだけのように見える。彼は最小限の言葉しか発しない寡黙な人なのだとそんな印象を持った。

彼が転校してきてからあっという間に1週間が経った。今日は席替えをすることになり、みんな朝からソワソワしていた。私は窓際の1番後ろの席がお気に入りだったから少し残念だった。先生がくじ引きをして新しい席が決まった。歓喜の声も落胆の声も聞こえてくる中、私は自分の名前だけを確認した。喜ばしいことに今の席から移動していないではないか!私は心を躍らせて自分の席に戻った。

しかし私は重大なことを確認し忘れていた。隣の席が誰なのか見ていなかったのだ。私がちらっと横を見ると、そこには笠岡昴がいた。男子が数人彼の周りに集まっていて、私のことを見ながら何かこそこそ話しているようだ。きっと地味な子だと笠岡昴に情報提供しているのだろう。

放課後のショートホームルームが終わって私が荷物を背負って帰ろうとすると、「ねえ。」と低い声が私を引き止めた。後ろを振り向くと、笠岡昴が目の前に突っ立っていた。今思えば、私はまだ彼と一言も交わしたことがない。私が何も言わないで首を傾げると、彼は無表情のまま口を開いた。

「あの…笠岡昴です。よろしくお願いします。」

私は一瞬キョトンとしたが、あわててお辞儀をした。

「えっと、井上月菜(いのうえるな)です。こちらこそよろしくです。」

「月菜…月菜か。名前、月菜っていうんだね。」

彼が何度も私の名前を言う度に私の胸の鼓動が速くなっていくのを感じた。私が小さくうなずくと、彼は微笑んで「じゃあ、また来週。」と教室を出ていった。

席が隣になったおかげで、私は彼といろいろな話をするようになった。寡黙な印象だったが、彼は話すととても面白くてシュールなお笑いが好きなようだった。授業中に彼はペン回しを何回成功させられるか数えていたり、ノートに海の生物のイラストを描き始めたり、それを無表情で堂々とやってるから見てるこっちまで笑えてくる。

「昴くんって本当に変だよね。見た目はアイドルみたいなのに行動は小学生なんだもん。」

「そう?僕、小学生好きだから嬉しいよ。」

「ちょっと。褒めてるわけじゃないからね?なんかズレてるんだよな。」

私は今までこんなに学校が楽しいと感じたことはなかった。彼はそんなこと思っていないだろうけど、彼のおかげで私の毎日が輝いている。クラスメイトたちは「あの2人は付き合ってるの?」などと噂を流していたが、そんなのはどうでもよかった。彼は私にとってかけがえのない大切な存在になっていた。

席替えしてから1か月が経つ頃。帰り道でいつも通り「また明日ね。」と挨拶を交わすと、彼は改まった表情で私の方に身体を向けてきた。私も反射的に身体を向けると、彼は少し間を空けてから話し出した。

「月菜…僕、実は男子のクラスメイトに頼まれてたんだ。月菜と友達になってほしいって。」

そうか、私はいつも1人でいるから友だちになってあげろと席替えの日に言われてたんだ。昴くんが話しかけてきたのはただ頼まれただけで、今までのことは友だちごっこだったんだ。まるで通りすがりの人に一発殴られたような衝撃が私の身体を走った。それでも彼は私の目を反らさずに話を続ける。

「でも、僕はそんなことで月菜と仲良くなったわけじゃない。僕は本当に月菜と話したいと思って話しかけたし、親しくなりたいから一緒にいるし。誰が何を言っても、このこと信じてほしいんだ。」

私の頬に涙が伝ってくる。彼は私の頭に手を置いてにっこりと笑った。

「月菜、ありがとう。僕は月菜と話す時間が1番輝いてる気がしてるんだ。楽しいし、なんだか心が落ち着くし、月菜って本当に素敵な人だなって毎日思うよ。」

彼の美貌を改めて見ると、自分の心臓が飛び出しそうになる。

「私も…私も昴くんとの時間が1番輝いてる。昴くんのことが…昴くんのことが大好きだよ。」

私がはっきり言うと、彼は頬を赤らめて私を抱きしめた。私は彼の優しい温もりを感じながら彼の背中に手を回す。西に傾く夕日の光に照らされながら、私たちはしばらくそのままでいた。


つづく

寡黙で心優しいイケメン男子の笠岡昴くんと不器用ながらも素直で明るい清純派女子の井上月菜の高校生恋愛模様、これからもぜひぜひ見届けてくださいね♪

何だか心が若返りますねぇ~(笑)

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