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8-2

記者会見の会場は騒然となる。

それもそのはずだ。

何故ならブックカートでやってきた謎の3人組が現れたのだから。

「うわああああ、何だあれ!」

「ひ、人だ。人が乗ってるぞ!」

記者の人たちは驚いていた。

けれど、1人だけ冷静に物事を判断してる人が居た。

「日陰ちゃん?」

姉だけが、そのことに気づいた。

「せーのっ」

明美さんと純太君が僕のことを降ろす。

けれど、それは乱暴な方法だった。

シンプルに傾けるというもの。

「げふっ」

僕はそのまま地面に倒れこんだ。

「ちょ・・・日陰ちゃん大丈夫なの?」

姉が僕のことを心配する。

「平気、うん、大丈夫」

僕は弱弱しくも立ち上がる。

伝えることがあるんだ、僕が言わなければならないんだ。倒れるわけにはいかない。

「怪我してるじゃない」

「これは・・・今できたやつじゃないから」

「どうして来たの・・・日陰ちゃん」

「罪を背負うべきは僕なんだよ、お姉ちゃん」

「違う、そうじゃない・・・私も悪いんだ」

「お姉ちゃんにだけ責任を押し付けたくない」

「日陰ちゃん・・・」

「皆さん、騒がしくしてすみません。

でも、伝えなければならないことがあるんです」

「どういうことだ?」

記者の人たちが騒然となる。

「僕は・・・僕は高橋日陰って言います。

ここに居る高橋日向の妹です」

僕は宣言する。

「あの子が妹の・・・」

「それじゃ、質問しましょう。

週刊ハローの溝口です」

記者の男性が話しかけてくる。

「何ですか、溝口さん」

「お姉さんが妹さんの文才を利用して、メディアで成功したというのは本当の話ですか?」

「いいえ、違います」

「では、真実は何でしょうか」

「真実は・・・僕が・・・姉を利用したんです」

「違う・・・違うんだよ皆・・・日陰ちゃんは・・・妹は何も悪くないんだ・・・責任は全部私にあるんだよ」

姉は今にも泣きだしそうだった。

それはとても可愛そうだったが、これから僕は姉を傷つけなければならない。そうしなければ姉を救えないのだから。僕はその覚悟を持ってここにやってきた。

「どっちが正しいのか分からなくなってきました」

記者は混乱してる様子だった。

無理もない、姉と僕で意見が食い違ってるのだ。

どちらを信じていいのか分からないのだろう。

「姉の言い分には証拠がありませんが、僕にはあります」

僕はそう宣言する。

「証拠?」

記者の人は興味深さそうに尋ねる。

「それは・・・これです」

僕は自分のしてるマスクを外して、その素顔を晒すのだった。

「あれは・・・」

「うげぇ・・・」

「何あれ・・・気持ち悪い」

記者の一部は嫌悪感を示す。

それも無理はない。僕のこの肌のシミを見て驚いてた。若い人間では出来ない肌のシミ。通常は年を取ってから出るものだ、でも僕はそうじゃなかった。若いにも関わらずそのシミが出たのだ。今、そのシミを記者たちに晒した。

「僕は・・・小説を書くことが好きでした。アニメや、ドラマなどでキャラが可愛そうになると、こっちの方がいいのにとハッピーエンドを想像しては、そっちの結末を勝手に書いては1人で楽しんでいました。でも、ある日、そうしてることが退屈に思えてきました。そこで、ふと思ったのです。世間に僕の小説を見て欲しいという欲求が湧いてきました。もしかしたら、僕にも才能があるんじゃないかって、そう確かめたかったんです。でも、勇気が出ませんでした。それは何故か、このシミの所為です。このシミは他の人とは違うもので、人に受け入れて貰えるかどうか分からないものでした。だから、世間に小説を出して見てもらうことに抵抗感があったのです。そんな僕を見て、姉は心配してくれた。姉は何かあったら何でも協力してくれると言ってくれたんです。そこでふと、僕は悪魔の閃きを思いついたんです。それが、姉を・・・僕の本の著者にすることだったのです。僕が表舞台に出なくても、姉が代わりに演じてくれれば僕の文才の才能は認めらつつも、顔を隠して活動できると思っていたんだ。飽きるまでそうしようって思ってたんです、ですがその考えはとても甘く、こうして世間にバレる結果となりました」

「質問・・・いいですか?」

記者の1人が質問してくる。

「どうぞ」

「確かに嘘はバレました、ですが姉が嘘をついたということであって、貴方の素顔の秘密はまだバレてなかったハズですよね。それなのにどうして表舞台に立ったのですか?黙っていればバレなかったかもしれないのに」

「ネットで・・・姉が・・・加害者だと思われていたのが・・・我慢できなかったんです」

「え?」

記者の人は少し驚く。

「姉は善人なんだ、顔も綺麗で、ご飯も作ってくれて、一緒に風呂だって入ってくれる。僕が弱ってる時には抱きしめてくれるんだ。そんな人が加害者だって世間に責められていたら、貴方は黙っているんですか?最愛の人が苦しんでるんだ。別に喧嘩しようってわけじゃない。ただ、誤解は解きたいって思うのが人の在り方じゃないんですか?」

「それは」

記者の人が戸惑う。

彼の中にきっと家族や恋人の顔が浮かんできたのかもしれない。

「悪いのは僕なんだ、心が弱い僕なんだよ。

だから姉を責めるのは止めてくれ、お願いだ。

姉を責めないでくれ、僕が悪かった。

責めるのは僕にして欲しい」

僕は頭を下げた。

そして、その瞬間が一斉にネット上に公開されて、かつテレビでも放送された。

カメラマンたちのフラッシュが何度もパシャパシャと焚かれて凄く眩しかったのを覚えてる。

「日陰ちゃん・・・」

隣で聴いていた姉は、心配そうに見ていた。

「・・・」

記者たちも真実を聞いて、どうしたらいいのか考えてる様子だった。

「あふん」

言いたいことを言い終えて緊張感が解けてしまう。

そのせいで、僕は倒れてしまった。

そして気絶する。

「日陰ちゃん!誰か救急車!」

「・・・」

恐らくは運動不足の所為だ。

今まで走ったことないのに急に走ったから。

脳に酸素が行きわたらなかったのだろう。

もしも次に目覚めたら・・・少しは筋トレでもしようかな・・・そんなことを思いながら意識が途絶えて行ったのだった。











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