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7-2

チャイムの音が鳴る。

一体、誰だろ。

そんなのどうでもいいか、僕には関係ない。

「よぉ、邪魔するぜ」

「あ、明美さん?」

「自分も居ますよ」

「純太君」

「今日、どうしたんだよ。

学校来ない何てよ、まぁ、大体理由は分かるが」

明美さんがそんなことを言う。

「別に・・・大したことない」

僕はそんなことしか言えなかった。

「大したことないって顔かよ。

俺には、この世の絶望を知ってしまったって感じの顔に見えるぜ」

「実際、そうだよ。世間なんて勝手なものだ。

今までさんざん褒めてくれたのに、何か失敗すると褒めてくれた以上にこちらに辛く当たってくる。どうしてここまで攻撃的になれるんだろうってぐらいに」

「そういうのが分かってて、有名人になったんじゃねぇのかよ」

「分かってたよ、でも、辛いモノは辛いよ!

有名人だろうと痛いんだ!心が傷ついたら痛いって叫ぶのは可笑しい?来るのが分かってても、痛いモノは痛いんだよ・・・ナイフで刺されたら分かってても痛いじゃないか・・・どうしてそのことに誰も気づいてくれないんだ」

「・・・」

明美さんは黙った。

僕の言い分にも一理あると思ってくれたのだろうか。

「それで・・・その・・・日陰さん・・・あの報道は事実なの?」

純太君が聞いて来る。

「何が?」

僕は惚けてみせる。

「しらばっくれるなよ、分かってるんだろ?」

明美さんは少し怒ってるようだった。

「さぁ、何のことだか」

僕は知らないフリを続ける。

「分かってるだろ、お前が有名な作家様かって聞いてるんだよ」

明美さんがそう告げる。

「だったら?」

僕は投げやりな言い方をする。

「何でそんな言い方なんだ、お前の事だろ」

明美さんが苛立ちながらも、何処か我慢してるかのような声を出す。

「だって、どうでもいいんだもん」

僕はため息を吐く。

「はぁ?」

明美さんは苛立ちを段々と隠せなくなってくる。

「僕には関係の無いことだ、そう。関係ないんだよ」

「お前の事だろうが、姉が、お前の事を搾取していたかどうかってテレビだけじゃなくて、ネットでも議論してるんだ、そのことに関して言うことがあるだろうが」

「事実じゃない」

僕はそう告げる。

「そっか、事実じゃないのか。

だよな、あんなに優しそうな姉だ。

お前から搾取するのは想像できない」

明美さんの怒りが和らぐ。

「逆なんだよ」

僕は事実を告げようとする。

「逆?」

明美さんは不思議そうな顔をする。

「僕が、姉を搾取していたんだ」

僕はもう、どうにでもなれやという気持ちだった。

「おい・・・どういう意味だ」

この言葉を聞いた明美さんは一瞬だけ和らいだ空気が一瞬で緊張感のあるものに変わる。

「姉を矢面に立たせることで、僕の作品の価値を高められるって思ったんだ。だって、そうだろ。僕と違って姉は明るくて美人だ、誰にだって気安く話しかけて、優しくて、誰だって好きになる。そんな姉に文才があるなんて世間が知ったら興味持つって思ったんだ」

「じゃあ・・・今・・・姉貴がネットで叩かれてるのはお前の作戦の所為だって言うのか?」

「そうだよ、それで、何か文句ある?」

「てめぇ!」

明美さんが握りしめた鉄よりも多分硬い拳で僕の頬目がけて殴りかかってきた。

運動神経の悪い僕は当然のことながら避けることは出来ずに命中する。壁にぶつかって、背中が痛い思いする。前にしたツッコみのように、落ちた先がベットという配慮は一切なく、冷たい地面に僕はだらしなく落下した。

「ぐぇ」

痛い。

人に殴られるって、こんな感じなんだ。

なんて何処か人ごとのように感じていた。

「前に言ったよな、俺は卑怯な奴は嫌いだって。今のてめぇは俺の大嫌いな奴になってるんだよ!」

「あぁ、そう。それで?」

「少しは言い訳したらどうなんだ、えぇ?」

明美さんは胸倉を掴む。

「言い訳したら何か変わるの?」

「いい加減にしろよ、お前」

「明美さんは何も分かってない」

「はぁ?」

「僕はこんな人間なんだよ、逃げ癖があって、自分の顔にコンプレックスを持って、ネットではいきがってみて、何より僕は嘘つきなんだ。良かったね、僕の本性を知れて」

「てめぇとはやってけねぇ」

明美さんは部屋から出ていく。

わざとらしく、扉をバンと強く閉じる。

苛立ちを凄く感じる動作だった。

「あの・・・日陰さん」

純太くんがどうしていいか困っていた。

「帰って」

「え?」

「悪いけど、帰って。1人になりたいの」

「うん・・・その・・・元気づけられなくてごめんね」

純太君はそんなことを言って帰る。

「・・・」

僕は布団に閉じこもることしか出来ない。

何だよ・・・僕を放っておいてくれよ。

すると、またチャイムが鳴る。

なんだ、次は一体誰なんだ?

玄関には行かず、外を覗こうと窓ガラスから顔を出す。

「おい、中に居るぞ!」

「すみません、週刊誌の佐藤ですが」

家の前には沢山の記者が来ていた。

「ひぃっ」

僕は布団に隠れる。

「姉のゴーストライターって本当ですか?」

「姉に搾取されてるって本当ですか?」

そんな声が外から漏れ出る。

近所迷惑とか気にしないで大声で言ってくる。

家には居られない、そんな気になってくる。

「くそっ」

僕は記者が集まる玄関とは逆の勝手口から出ようとする。

「やっぱり、後ろを張ってた甲斐があった」

「ちょっと取材良いですか」

勝手口付近にも数名が待機していた。

「すみません、僕は何も知りません」

僕は急いで逃げ出す。

「おい、追いかけろ!」

走っても追いつかれる。

逃げ場が無いと悟った僕は慌ててスマホで、タクシーを呼ぶ。

「あの、タクシー」

急いでタクシーを呼んで、隠れる。

「お客さん、どちらに?」

「この場所に」

「分かりました」

タクシーの運転手に住所を伝えて送ってもらう。

救いだったのが、タクシーの運転手は僕に何も聞かずに目的地まで送ってくれたのは嬉しかった。無神経な人たちとは違うのはありがたかった。







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