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そこは煌びやかな所だった。
多くの人で賑わっており、
その誰もが綺麗な人たちばかりだった。
女性はドレスを着て、男性はスーツを着て洒落ていた。
会場にはシャンパンタワーにシャンデリア。豪華なビュッフェに、シルクのテーブルクロスが敷かれたテーブル。そして、とあるテーブルには僕の名前と姉の名前が書かれたネームプレートが置いてあった。恐らく金で出来ていそうな品だった。
「これ、持ち帰っていいのかな」
僕は思わずそんなことを言う。
「ダメだよ、日陰ちゃん」
姉に叱られる。
「よく来たね」
そこに居たのは裕也だった。
「裕也さん、こんにちわ」
「聞いたかい、ワシらのドラマの視聴率」
「すみません、まだ分からないです」
姉はそんなことを言う。
「聞いて驚かないで欲しい、なんと40%超えだ」
「えぇ?」
姉は驚いていた。
隣に居た僕ですら驚いたのだ。
主演ヒロインの姉はもっと驚いただろう。
「君のお陰だよ」
「そんな私なんか演じただけで」
「謙遜するなよ、君が居なければこのドラマは成り立たなかった」
「裕也さん」
「他の人たちも、そう思うだろ?」
他に来ていた有名人たちもグラスを上げて合図する。
「何だか照れますね」
姉は顔を少し赤くしていた。
「とんでもない、皆、君のお陰だって言ってる」
「あはは・・・そうなんですか」
姉は微笑む。
「これ、見て」
裕也はスマホを姉に見せる。
「これは」
「ドラマの感想だよ、普段ネットなんてのは悪評が目立つのに、今回ばかりは高評価ばかりだ。皆、君を認めてるんだ」
このヒロイン綺麗、ストーリー最高、思わず泣いちゃった、ドラマ史に残る傑作だ、キャラに凄く共感できる、応援したくなるヒロイン、ラノベ原作のドラマなんて今まで興味なかったけど今回だけは違った、面白かった。そんな数々のコメントが目に入る。
「嬉しい・・・頑張った甲斐があった」
姉は涙を流しそうになる。
「ドラマ、高視聴率おめでとう」
突然、クラッカーが鳴らされる。
「え、え?」
姉は戸惑うばかりだった。
「本当は後でやるつもりだったんだけど、日向ちゃんが泣きそうだから急いでやっちゃった」
裕也はそんなことを言う。
「ありがとう・・・私のために」
「君が居なければ、この作品は成り立たなかった、この場に居る全員が認めてることだ」
「嬉しい」
「まだ、あるよ」
「え?」
「垂れ幕、お願い」
裕也が言う。
すると、上から垂れ幕が落ちる。
そこにはsun&shade&sistersの作品に乾杯と書いてあった。
「あ・・・僕の分も」
「嬉しい・・・私・・・こんなに幸せでいいのかな」
姉は号泣していた。
「いいんだ、君は凄く努力していたからね。認められていいんだ」
裕也は姉の事を抱きしめる。
「しゃーっ」
僕は急いで突き放す。
「おっと、ごめんよ、つい」
裕也は離れる。
「姉には近づいたらダメ」
僕が姉を抱きしめる。
「やれやれ、姉思いだな」
裕也は苦笑する。
「良かったね、日陰ちゃん」
「うん・・・良かったって思うよ。
お姉ちゃん」
姉はぽろぽろ涙を流す。
本来ならば逆だと思うが、
今日だけは僕がハンカチを持って姉の涙を拭いたのだった。
「ケーキもあるんだ、良かったら食べて行ってくれ」
天井まで届くのではないかと思われるコック帽を被った女性が荷台に乗せてケーキが入ってるであろう箱を荷台に乗せて運んでくる。その箱はとても大きく、横5m、縦7mはあると思われた。
「それでは、ケーキopenです」
裕也がそう言うと、スタッフが箱についてるリボンを思い切り引っ張る。すると中から僕の好きなベリー系のケーキが出て来た。白いケーキは良く見るが、赤一色で驚く。
「うわぁあ」
僕は目を輝かせる。
「妹ちゃんはベリー系が好きだって聞いてたからね、そうしたんだ」
「お姉ちゃん、食べていい?」
「いいと思うよ」
姉は微笑む。
「この場に居る全員で食べるために職人に作らせたんだ、だから当然、日陰ちゃんも食べていいんだよ」
裕也はそんなことを言う。
「食べたい、食べたい!」
僕はテンションが上がってしまう。
「じゃ、切りますね」
スタッフの人が脚立を持ってきて、上からカットしていく。
「わくわく」
僕は目を輝かせて、ケーキカットの瞬間を楽しみにしていた。
「はい、どうぞ」
パティシエのお姉さんにケーキを渡される。
「やった!」
僕は急いでテーブルに戻る。
そして、姉を待つことなく先に食べる。
「もう、日陰ちゃんこういう時は動き早いんだから」
「うまぁ」
幸せな気分になる。
ベリー系の爽やかな甘みが僕を天に連れて行ってくれる気がする。
「良かったね、日陰ちゃん」
姉は僕の方を見て微笑む。
「うん!」
僕的には非常に満足したパーティーだった。来て良かったと心から思えた。腹も満たされて、パーティーは解散となる。
エレベーターを降りると、すでに執事の恰好をした運転手が待っていた。
「お待ちしておりました」
「うそぉ」
どうしてこう、タイミングよく。
「エレベーターに乗ってる時にホテルの方が教えてくれたんです」
執事はそう答える。
「あ、なるほど」
僕は納得した。
「それでは、どうぞ」
行きと同じように扉を開けて貰って車に乗る。そして、家まで送ってもらった。
「運転ありがとう」
姉が家に着いたら執事にそう伝える。
「いえいえ、仕事ですから」
「あ、ありがとうございました」
僕も礼を伝える。
「機会があれば、また乗せてあげたいですね」
「その時はぜひ、お願いします」
姉は運転手にそう伝える。
「失礼します」
執事は1人、リムジンに乗って夜の街に消えていったのだった。
「僕、寝るね」
「うん、わかった」
僕は部屋に戻る。
「・・・」
ベットの中で1人、思う。
今日は何だか夢みたいな1日だった。
こんな日が毎日続けばいいのに。
そんなことを思って眠りについた。
撮影が終わり姉の話題になる→作家として成功し顔出しにも成功してる→凄い才能だと周りのスタッフは全員で彼女をおだてる→それを聞いて満更でもない姉→その時に妹は酷い疎外感を覚える→スタッフの目に映ってるのは姉だけであり自分は一切見えてないことに→妹は1人で帰ることに→姉から連絡が入る→終わったから一緒に帰ろうとのこと→妹は喫茶店に居る旨を伝える→再開する姉と妹→姉は申し訳なさそうにする→自分ばかり褒められてと→妹はいいのと告げる→姉が褒められるのは妹としては嬉しいと→本当と聞き返す→本当だと妹は断言→姉は言う→本当は自分も褒められたいのではないかと→妹は言う→私には似合わないと→姉は少し寂しそうな顔をする→妹は話を変える→そして一緒に喫茶店で苺ラテを飲もうと言う→姉は同意するのだった




