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5-1

それはなんて事の無い1日の始まりだった。テレビを惰性で見ていた時だ。面白いから見てるとかではなくて、なんとなくつけてニュースか何か見てるような、ぼーっとした時間。

そんな時だった、ふと連絡が来る。

僕は何の気なしにとる。

「あ、日陰?暇?」

いきなり誰だと思った。

「だ、誰?」

知らない女性からの電話だ。

「明美さん?何で僕の電話番号を」

教えた記憶は無かった。

「先生に聞いたら、教えてくれたぜ」

全ての学校がそうかは分からないが、家の学校では緊急時の連絡先を教えなければいけない義務がある。そこで僕は自分の電話番号を書いてしまったのだ。どうせ、かけてくる人なんていないだろうと軽い気持ちだったが、少し後悔してる。

「・・・」

僕はうなだれる。

個人情報保護法とか知らないのかね君らは。そんな気分になる。

「それでよぉ、暇か?」

「まぁ、何か用事があるってわけじゃないけどさ」

「それじゃ来いよ、場所はメールで送るから」

「行くとか、行かないとか言ってないんだけど」

「じゃーな」

ぶちっと連絡が切れる。

明美さん、話を聞かないな。

さて、どうするか。

待ってるって聞くと行った方がいいような気もする。でも、向こうが勝手に待ってるのだから別に行きたくないのならば無理に行く必要も無いように思える。

「日陰ちゃん、皿洗うから早く食べちゃって」

姉が台所でじゃぶじゃぶと音を立てる。

「うん」

僕はフレンチトーストもどきを食べる。何でもどきかって言えば、通常フレンチトーストは食パンに卵と牛乳を混ぜた液を浸して食べるものだが、僕の家ではパン粉だからだ。僕が発案した訳ではなく、ネットの誰かが思いついたレシピだ。それを姉が作ってくれただけの話。トッピングには当然のことながら苺を乗せる。ブルーベリーなんかも一緒に乗せて豪華さを上げてるが。

「誰からの電話だったの?」

「えぇっと」

「答えにくい?」

「そういうわけじゃ」

「もしかして彼氏?」

「そ、そんなんじゃないよ」

彼氏・・・欲しくない訳ではないが。怖さが勝る。今は家なのでしてないが、外に出る時は必ずマスクをしてる、それはこの顔のシミを隠さなければならないからだ。いざ、そういう行為になった時にこの顔を見せなければならないと思うと怖い。だから、今は彼氏とかは考えられない。

「えー、じゃあ詐欺?」

「んー、明美さん」

「あ、そうなんだ」

「そう」

「何か大事な話?」

「なんか遊ぼうって」

「行ってきたらいいじゃない、せっかく誘ってもらってるんだし」

「そう・・・しよっかな」

「あんまり乗り気じゃない?」

「そういう訳じゃないんだけど、すぐに決断が出せないの」

「そっか、でも、あんまり待たせるのもあれだし、早く決断しないとダメだよ?」

「分かってる」

「それなら良かった」

「お姉ちゃん、お皿」

「ん、ありがと」

僕は姉に皿を渡す。

そして、部屋に戻って考える。

行くべきか否か。

別にさっと答えを出せばいいのだが、

僕は考えてしまう。

考えるのが癖なのかもしれない。

すぐに答えを出すのが苦手なのだ。

ぱっと、決める人は僕には理解できない。

その答えで本当に正しいのだろうか?

考える前に行動して悪い結果になったらどうしよう。

そういうのを考えると、すぐには動けないのだ。

とはいえ、あまり待たせるのも悪いだろう。

なので、僕は連絡を返すことにした。

(行く)

メッセージを飛ばした。

これで後は返事を待つだけ。

(来るって思ってた、じゃ、場所送るから)

住所を送られる。

なるほど、ここか。

(了解)

僕は返事する。

(あと、純太も来るから)

(いつの間に連絡先を・・・)

(日陰の連絡先よりも手に入れるの簡単だったぜ。

あいつは友達伝いで手に入れられたからな。

日陰は全くって言っていいほど友達が居ないから大変だったぜ)

(う、る、さ、い!)

僕は怒りをぶつける。

いいじゃないか、友達が居なくたって。

人は死ぬときも一人だし、生まれた時も一人だ。

双子は別だけど。

でも、そんなのはレアだし。

いつの間にか皆友達作ってるし、学校の授業でやって欲しい。

友達を作る時間とか。

そういうの教えてくれたら僕だって、早い段階で友達を作れたさ。あぁ、そうに違いない。教えてくれない先生たちが悪いのだ。

(それじゃ、待ってるから早く来いよ)

そういって明美さんは連絡を切った。

もう、行くと連絡してしまった。

行くしかないだろう。

試しに、行ってみるか。

楽しい日になればいいが。

いつもの黒いワンピースに、黒い手袋。

そして顔を隠すためのマスクを装着する。

「あ、やっぱ出かけるんだ」

姉が話しかけてくる。

「うん、悩んだけれど行くことにした」

「楽しんできて」

姉は微笑む。

「分かった」

「はい、これ」

「何これ」

僕は姉から1000円札を三枚渡される。

「お土産よろしく」

「苺でいい?」

「アイスがいいな」

「分かった」

「余ったら日陰ちゃんの小遣いにしていいから」

「そっか」

「そう」

「それじゃ、行ってくるね」

僕はパンプスを履いて、出かける。

これもまた黒色。

「車とか注意してね」

「分かってるよ、赤信号で止まれでしょ」

「それも大事だけど、ノーブレーキで爆走する人も居るから。

信号を確認するだけじゃ危険は回避できないの、人を見ることも大事よ」

「はーい」

「それじゃ、行ってらっしゃい」

「行ってきます」

僕は扉を開けて外に出るのだった。








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