3-6
それは翌朝の出来事だった。
今日は学校に行こうと思ってた。
が、それはそれとして。
気持ちよく寝ている時の話。
「日陰ちゃん・・起きて」
「え?」
時計を見る。
すると、時間に余裕があることに気づくのだった。
「起きてってば」
「まだ余裕あるじゃん・・・もう少し・・・寝てたい」
僕は2度寝しようと思った。
人間、寝ないと活動できない生き物だと思う。どんなに優れた人物だろうと疲れていては動くなんてことは出来ない。
だから僕も天才と同じように疲れるし眠くなるのだ、なので寝るのはしょうがない。
「お友達が待ってるの」
「えぇ?」
「良かったね、日陰ちゃん」
姉は笑顔を向けてくる。
お友達・・・お友達?
はて、僕にそんなものは居ただろうか?宅配のお兄さん友達というオチだろうか?それだったら理解できる。残念でした~っと姉にからかわれて終わり。そんなことを想像しながら玄関に向かう。
「はいはい、〇mazonでしょ。
分かってますって、サイン書きますよサイン・・・えぇっと」
僕は顔を見る。
すると、そこには想像してない人物がいるのだった。
「よぉ」
そこに居たのは明美さんだった。
「ふぉおおおおお」
僕は変な声が出る。
「お前んちここだったんだな」
「な、なんで僕の家が」
「表札」
「あ」
僕の家の表札には家族分の名前が書いてある。日陰(僕)日向(姉)
夕日(父)朝日(母)なるほど、分かる訳だ。
「ってことで邪魔するぜ」
「ちょっと」
「大丈夫だよ、学校には遅れないようにするから」
「そういうことでは」
家に入らないで欲しいという僕の願いは届きそうになかった。
「こんにちわ、日陰ちゃんの友達?」
姉が挨拶をする。
「はい、大体そんな感じっす」
明美さんは低姿勢になってそんなことを言う。
「良かった、あまりにも友達を連れてこないから一生このまま何じゃないかって不安だったの・・・でも・・・こうして友達を連れてきてくれて・・・うわぁあああああん」
姉は号泣する。
「泣くほど?」
僕はそんなことを思う。
「お前・・・友達居ないのな」
明美さんに引かれる。
「い、いいじゃんか。
友達が居ないのは平和な証拠なんだから」
「なんじゃそら」
明美さんは不思議がる。
「原始時代、人はマンモスという巨大な敵に立ち向かう必要があった。それは1人で成し遂げることは困難だったに違いない。今ほど科学技術が発達してるわけじゃないのだから。だから人は協力して立ち向かわなければならなかった。それは共通の脅威であり、協力し合う理由だった。でも、現代では協力し合わなくてもいい、何故ならば平和だから。戦う理由が無いんだ・・・人は協力し無くても良くなった、だから友達を作らなくても良くなったんだ」
「面倒くせぇな」
「僕の理屈を一言で片づけるな!」
僕は憤って見せる。
「それより、お前の部屋はっと」
「あ、勝手に・・・」
「お客様、こちらで~す」
姉はバスガイドの恰好をして、勝手に僕の部屋を案内するのだった。
「ダメ!」
僕は身体全身を使って、防御する。
「なんで隠すんだよ」
明美さんは気になってしょうがなさそうだ。
「ここはとにかくダメ。
他は良いから」
「そう言われると増々気になるな」
「お願いだからぁ・・・」
僕は明美さんを押しのける。
しかし、運動神経は向こうの方が圧倒的に上なので押し返された。
「お前の非力な腕じゃ俺は止められないよ」
「このぉおおおお」
僕は必死に押すが、のれんに腕押しとでも言うべきか。
全くと言っていいほど明美さんには通じなかった。
「お邪魔しますっと」
明美さんに強引に入られる。
「あぁ、ダメ!」
僕の秘密がバレてしまう。
これだけは・・・これだけは何としても阻止しなくてはいけないのに。
「これは・・・」
それは部屋中に張られた男の裸体が絡みあってるポスター。それが山のようにあった。どれこれも、裸、裸、裸。とてもじゃないが放送できるかどうか微妙なラインのポスターだった。
「あははははははは」
僕はもう笑うしかなかった。
そして、もうすでに知られてるので無意味だとは思うがポスターを片付けて押し入れに突っ込むのだった。
「お前・・・変態だったんだな」
明美さんがじとっとした目つきで見てくる。
「ち、違う」
「違わないだろ、沢山の男の裸見て興奮してたんだろ?」
「そういう訳じゃないんです」
「じゃ、どういう訳だ?」
「これは・・・その・・・」
僕は必死になって言い訳を考える。目の前の明美さんと納得させられるだけの言葉を僕は言うことが出来るだろうか?出来ないと、今後一生変態の烙印を押されるに違いない。
頭をフル回転させる。
学術的価値があって。
これも違う。
エロ目的ではなくエンタメとして。
どうみてもエロだ。
これも違う。
では、何て答えるべき?
僕が出した答えはこれだった。
「画商なんです!」
「画商?」
明美さんは不思議そうな目で見てくる。
「これは僕が欲しくて集めたのではなくて、家計を支えるために興味ないけど仕方なく保存してるんです!」
「何でお前の部屋で保存する必要が?」
明美さんに問い詰められる。
「倉庫代を借りるのも大変で、それで僕の部屋に」
「何で男の裸ばかりなんだ?」
「や、雇い主の趣向で」
「雇い主の名前は?」
「個人情報ですのであかせられません」
「・・・」
明美さんにじっと睨まれる。
「・・・」
さすがに無理があったか?
僕は内心ドキドキだった。
「そうか、お前も苦労してるんだな」
「理解してくれたんですね」
「学生なのに家計を支えてるなんて偉いぞ」
明美さんにポンと肩を叩かれる。
「信じてくれた?」
「あぁ・・・信じるよ」
「明美さん・・・」
「んな訳あるかい!」
明美さんに持ち上げられて思いっきり投げられた。ベットの上に投げられたのでダメージは0。なので暴力系ヒロインのツッコみではない。




