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3-4

僕は姉に群がるファンたちから逃げて喫茶店に入る。

すると、姉から連絡が入ってるのに気づく。

スマホにはこう書かれてた。

(今日は無理そう、ごめんね)

声の無い文字だけのメッセージが添えられていた。

僕はこれを見て、今日は万年筆を買うのは無理だなと諦めるのだった。

(別にいい)

僕はメッセージを返す。

(今度は上手く変装するね)

そんな風に姉から返ってくる。

変装してもバレるのだから、芸能人オーラって言うのだろうか?それは凄いと思う。

(別にいい)

(またいつか、出かけようね)

姉はそう言って、メッセージを締めくくるのだった。

せっかく出かけたので、何も無しってのも嫌だった。なので、僕はお気に入りの苺ミルクを飲むのだった。

「こちらご注文の品で~す」

女性の店員さんに話しかけられる。

「はい、ありがとうござい・・・ま・・・す?」

僕は女性店員の顔を見て驚く。

金髪ショートカットのあの子が居たからだ。

職場の制服を着ていて、胸のネームプレートに

”須藤明美”と刻まれていた。

「ふぁああああ」

僕は変な声を出す。

「エイリアンみたいだな」

明美さんはそんなことを言う。

僕は殴られると思い、店から出ようとする。

「さらば!」

僕は走って逃げ出そうとする。

けれど、運動神経の悪さが災いしてか、

店頭で思いっきり転倒する。

ダジャレみたいになってしまった。

「何やってるんだか。まったく」

明美さんは僕のことを捕獲する。

「ぎゃーーっ、助けて!食われる!」

「食わんわ!」

「エロいことされる!」

「人前でするか!」

「人前じゃなきゃするんだ!」

「変な受け取り方するなアホ!」

「じゃあ、何するんだよぉおおおおお!」

「普通に会計しろ」

「あ・・・そっすね」

確かに、その通りだと思った。

苺ミルクの代金をレジで支払う。

僕は財布に入っていた電子マネーを取り出す。

melonと書かれた電子カードだ。

主な使用場所は公共の乗り物のゲートを通るときに使うあれだ。こういう喫茶店でも使えるのは便利。

スマホでもいいのだが、わざわざサイトを開くのが面倒なので僕はこっち派である。

スマホに入れれば持ち運びも1つでいいから楽だと言う意見もあるが、逆に言えばスマホがダメになれば一気に全部ダメになるリスクもあるので、リスク分散の意味でも電子カードを持ち歩いた方が僕的には得があると考えてる。

「はいよ、会計終わり。

後は店を出るなり、おかわりするために居座るか好きにしな」

明美さんに開放される。

「ありがとう」

「別に礼を言われるようなことじゃねーよ」

「それでは・・・」

僕は店を出る。

「おい」

「はい・・・まだ何か?」

僕は怯えながら振り返る。

「俺さ、もうすぐ上がりなんだよ」

「えっと」

「だから一緒に帰ろうぜ」

「マジっすか?」

「あんだよ、不満そうだな」

「いえいえ、滅相も無い」

本当は胃が痛くなる展開だが、

逆らう勇気も無いので受け入れるしかなかった。

あぁ、なんて僕は弱いのだろうか。

心の中で涙するのだった。

「待ってろよ、先に帰ったら殺す」

「はい・・・」

僕は店の外で律儀に待ってるのだった。

「よう」

明美さんが店から出てくる。

「あ・・・どうも」

僕は下っ端みたいな挨拶をする。

「それじゃ、行くぞ」

「あの、荷物とかお持ちしましょうか?」

「何でだよ」

「いえ・・・何でも」

僕はつい、卑屈になって奉仕の精神が出てしまう。

「ったく、変なやつだな」

「すみません」

「俺の家こっちだから」

「では」

僕は反対方向に行こうとする。

「おい待て」

「な、なんでしょう?」

「お前の家、そっちなのか?」

「いやぁ・・・どうでしょう」

本当は明美さんと同じ方向だったが一緒に行くのは少し抵抗があったのだ。理由は怖いから。

「お前の家だろ、分からないわけ無いだろ」

「あはは、そうですね」

僕は笑うしかなかった。

「それで、何処なんだ?」

「えっと・・・僕の家は・・・」

僕は嘘をつこうと反対方向を指さそうとする。

「嘘ついたら、分かってるな?」

「う・・・」

僕は結局明美さんと同じ道を指さす。

「なんだ、同じじゃないか。

途中まで一緒に行こうな」

「はぃい・・・」

僕は落ち込みならが歩く。

しばらく街中を歩いてると、向こうからこんなことを言われる。

「何だか暗いやつだな」

「すみません」

マスクをしてるから余計に陰気な感じが出てるのかもしれない。

「別に責めてるわけじゃねぇよ」

「すみません」

「お前なぁ、すみません以外に言えないのか?」

「ごめんなさい」

「そういうことじゃねぇよ」

「ご、ごめんなさい」

「一周回って俺をおちょくってる?」

「そんな、滅相も無い」

何て言えばいいんだ?

僕の頭を必死に回転させて適切な言葉を探る。

けれど、あまりいい言葉は見つけることが出来なかった。

「もうちょっと、明るくできねぇの?」

僕は明美さんにめっちゃ責められてるような気分になる。

やっぱり、暗いってのは罪なんだろうか?

軽犯罪法違反の一覧には虚偽申告や身体露出などがあるらしいけれど、その中に陰キャであることとか書いてあるかもしれない。罰則は人との関りが上手に出来なくなると。多分だけど。

「それは・・・ちょっと」

暗い性格なのは持って生まれた性質だ。

草タイプのポケ〇ンに炎タイプになれと言われてるようなものだ。そんなの無理に決まってる。

「ったく、調子狂うぜ」

明美さんも困ってるようだ。

僕たち相性悪いなと思う。

多分、2度と付き合いないんだろうな。

「そ、そっすね」

まぁ、でも、そうなれば、この胃が痛いような状況も少しは緩和されるだろう。そう思えば、良い結果なのかもしれない。

「なんでそんなに自分に自信ねぇの?」

「さぁ・・・」

自分でも分からない。

気づいた時から暗い性格なのだから、

そういうものなのだろう。

「自分の事なんだから分かるだろ」

「そう・・・言われても」

多分、説明が上手な人ならば言えるんだろう。

でも、生憎と僕は得意ではない。

姉なら上手く言えるんだろうなって思う。

「ほぉ~ん」

明美さんは軽い返事をする。

「あはは」

僕は適当な愛想笑いしかできなかった。








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