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3-1

それは翌朝の出来事だった。

僕はいつものように、路地裏に入り妄想にふけっていた。いつもとは言ったが、本当は少し違う。というのも、今日は僕1人だからだ。

姉も誘ってみたが、以前に同行したから今回はいいやとのこと。少し残念だが、まぁ、1人でも楽しめるのだから別に無理に誘うことは無いだろう。そう思って、僕は裏路地を歩いて回る。それは突然の事だった。

怒声が響き渡る。

「ぶち殺すぞ!」

路地裏なのだから、こんな場面に出くわす可能性はいくらでもあった。けれど、不思議なもので今までそんなことはなかったのだ。だからこそ余計に驚く。

「ごめんなさい!」

僕はとっさの事で自分の事だと思い、

しゃがみこんで頭を抱える。

殴られるのだけは勘弁だと思っての事だ。

しかし、聞こえてきたのは声だけで、

その声の主はいくら経っても来ないのだ。

居ないのだから、僕が怒られてるわけじゃないと少し安心する。

でも、それはそれとして、少し気になる。

僕は何事かと思い、その怒声が響く方向へ向かったのだった。完全に野次馬根性だ。

あまり良い性格とは言えない。

それは分かってるけれど、好奇心が抑えられなかったのだ。

さて、声の主はどんな人だろうか。

そして、怒られてる人はどんな人だろう。

顔を見てみたい。

そう思って、影から覗く。

怒ってる人は恐らくチームなのだろう。

10人ほどの男性の集団。

全員が同じ格好をしている。

リーゼントで、学ラン。

どう見ても不良の集団だ。

それに対して、怒られてるのは女性だ。

金髪のショートカット。

恰好はジレベスト+パンツ+イヤーカフ。

身長174cm。

体重64kg。

そんな風に見えた。

おっぱいのサイズは平均的だろうか?

C~Dぐらいな感じ。

スラっとしたスレンダーな感じ。

「だから、言ってるじゃん。そんなの馬鹿馬鹿しいって」

女性は数人の男性相手でも物怖じせず話す。

「なんだと?」

男たちは苛立ってるのが分かる。

「通行料払えって、なに?」

「そのままの意味だ、ここを通りたければ払え。

払いたくないなら通るな、簡単な話だろ?」

「あんたらETC?」

「払う気あるのか?」

「あるわけないじゃん、大体何様なのさ。

勝手に通行止めしておいて払えってさ」

「仕事をしてるから、払えってのは当然の権利だ

ろ?」

「はぁ?」

男の言い分に女は理解できないという顔をする。

「貴重な時間を使って通行止めしてやってるんだから、払うのは当然の権利だろ?」

それが男の言い分だった。

「誰かに依頼でもされてるの?」

「いいや?勝手にやってるだけだよ、ボランティアなんだ」

男たちはぎゃははははと笑う。

「あ~、なるほどね。不法にやってるってわけだ。そっか、そっか。なら、遠慮はいらないな?」

女の目つきが変わる。

「てめぇ・・・何言って」

男は何かに気づいたようだ。

けれど、それはすでに遅かった。

「ふっとべ、バカ野郎」

女はリーダー格らしき男を吹き飛ばすのだった。

顔面に思いっきり拳がめり込む。

「ぼへぇ!」

男は吹き飛んで、

吹き飛んだ男を起点に、

男たちは一斉に倒れるのだった。

「カタストロフだ!」

女はガッツポーズするのだった。

「すっご~」

僕は感動していた。

男たちを一斉に倒せるだなんて。

僕には真似できないなぁと感度する。

「ん?」

女は僕の事を見つける。

「あ・・・」

やばっと思う。

じっと見ていたのがバレる。

この状況、相手はこう思ってるに違いない。

不良に絡まれてるのを見捨てたと。

男と女が1対1の場合なら、痴話喧嘩かなと思って助けに入らないのは理解できる。

けれど、男が複数で女性が1人という構図はどっちが悪いかと言えば男性の方が悪い方が多いと思う。必ずそうとは言い切れないが、どっちかといえばそっちの方が多いんじゃないかなって思う。

にも関わらず、僕は傍観者だった。

それはとても・・・印象が悪いよね?

「ちょっと、あんた」

金髪ショートカットの女が話しかけてくる。

「ごめんなさ~い!」

結局、僕は謝って逃げるのだった。

きっとあの人、怒ってるに違いない。

まぁ、僕が悪いのだけど。

家に急いで帰り、扉をバタンと閉める。

「びっくりしたぁ、どうしたのよ日陰ちゃん」

お姉ちゃんは塩せんべいをかじりながら僕のことを見て驚いていた。

「金髪が、こっちを見て、それで、通行料を払えって、でも、殴って、それで怖くなって、僕は逃げたんだけど」

僕は慌てて説明する。

「落ち着いて何言ってるか、さっぱり分からないんだけど」

「とにかく怖かったの!」

「分かった、それじゃ落ち着かせてあげるから傍に来て?」

姉に誘われる。

僕は火に誘われる蛾のようにふらふらとその胸に飛び込むのだった。

「うん・・・」

「ほら、落ち着いた」

「・・・」

姉に抱きしめられると、少しだけ気持ちが落ち着くのだった。それにしてもあの金髪の目が怖かった。同じ人とは思えない。

そんなことを思うのだった。





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