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2-5

僕は脱衣所に出る。

先に出ていた姉はすでに着替えてパジャマの恰好をしていた。

「ちゃんと拭きなよ」

「分かってるよ」

口ではそう言うが、

僕は全裸で外に出る。

「日陰ちゃん!」

「そのうち乾くから大丈夫」

「そういう問題じゃないでしょ」

姉の小言が聞こえるが、

聞こえないふりをして、

僕はささっと行くのだった。

そして、部屋に戻り準備する。

どうせ父はまだ帰ってきてないのだ。家に居るのは女性のみ。

裸だろうがどうでもいい。

勝手に乾くのだから、

拭く面倒は必要ない。

というのが僕の考え。

そして、そのまま自室にあるゲーミングチェアに座る。

最近お気に入りのゲームをするために、PCを起動する。

「さーてと、始めますか」

僕は指を鳴らす。

準備はOKだ。

戦いに行く準備は出来てる。

僕を待ってる人が居るのだ。

ゲームの内容はかくれんぼみたいなもの。見つかったら銃で撃たれるというそんなに難しくない内容。ただ、隠れる側は好きなものに変身できるのは面白い。それは現実ではできないだろう。

「始めますかじゃないでしょ」

「わぷゅ」

僕は顔に思いっきりバスタオルを被せられたので驚く。

「まだ濡れてるよ、ほらこんなに」

姉はバスタオルがどれほど湿ってるかを見せてくる。

「平気、平気。

どうせ暖房ついてるし、乾くって」

「そんなこと言って風邪ひくんだから」

「えー、面倒くさいだもん。

風呂に入るのだって面倒だけど、お姉ちゃんがどうしてもって言うから仕方なく入ってるんだから」

「毎日入らないと、変な病気になるんだから」

「はいはい、分かってますって。

それより、僕は見つかっちゃいけないんだ」

「ゲーム?」

「そう」

「はぁ・・・じっとしてて」

姉はため息を吐く。

「やった」

僕は喜ぶ。

「ほら、してあげるから」

「わーい」

姉は僕の頭にドライヤーをかけてくれる。

「不思議なものね、全くそういう髪質とか気にしてないのに綺麗なんだもの」

僕の髪を触る。

すると、水みたいに指先から髪が零れ落ちる。

顔は決してシミがあるので美人とは言えないが、髪はわりと綺麗な方だと自負はある。

だが、結局の所髪が綺麗でも顔が悪ければ意味は無い。

だから無頓着になったのだ。

「そうかな・・・ここが隠れやすいかも。植木鉢になろ」

僕は変身してゲームの中で隠れる。

「逆に綺麗だから気にしないのかも・・・?」

姉はドライヤーをかけながらそんなことを言う。

「味方と一緒の所に隠れよ。

1人より安心だもの」

「気持ちいい?」

「うん、最高」

ぼぉーーーっと風の音がうるさいが、僕は気にせずゲームする。

音が聞こえにくかろうが、

画面さえ見えてれば問題ないからだ。

「本当は私がやってあげるんじゃなくて自分でやってくれるとありがたいんだけどね」

「えー、お姉ちゃんがやってくれるからいいんじゃん」

「私ってば甘いほうかも。

少し・・・厳しくしようかしら」

「ダメだよ、お姉ちゃん。

私を甘やかさないと、私は死んでしまうわ!」

「死なないよ」

ドライヤーの音が止む。

そして、姉が僕の髪の毛をチェックする。ちゃんと乾いてるかどうか確認してるのだ。

「あぁ、見つかっちゃった。

交代の時間だな。よし、今度は責めてやるぞ!」

僕はマウスを遊ばせて気合を入れる。

「本当に羨ましい髪質。

私は気にして高めのシャンプーとか使ってるんだけど」

「この、えりゃ」

「あれ、もしかして・・・」

姉はふと閃く。

「日陰ちゃんって、どんなシャンプー使ってるの?」

「どんなって、家族なんだからみんな同じじゃないの?」

「私ね、輸入店に行って海外製の特別なやつ使ってるの」

「へー・・・あ、絵画に化けてたのか・・・どうりで見つけられなかったわけだ」

僕はマップ内を走り回ったけど、敵を見つけることが出来なかった。時間制限を過ぎたら、何処に居たのかゲームシステム的に教えてくれるのだが、そこで敵の位置がわかる。そうやって敵を見つけるために学習していく。

「フランス語で書かれてる、

おっしゃれ~なやつなんだけど。日陰ちゃん、何か知らないかな?」

「あー、そうかも。泡立ちが良いような気がしたんだよね。だからテンション上がってたっぷり使った記憶があるなぁ・・・あははは」

僕は能天気に笑う。

「最近、減りが早いなって思ったんだよね」

ゴゴゴゴゴゴと重厚な石門が開くような音がする。

「あれ・・・何だか嫌な・・・予感が」

僕は危機感を覚えて、背後を振り返る。

「ふしゅるるるる・・・」

鬼の形相をした姉が立っていた。

「見つかった!」

僕は思わず叫んだ。

「日陰ちゃん!」

姉は怒っていた。

けれど、手は出ない辺り優しさが残ってるなと思う。

「ごめんよ、安物を買っておいてくれ」

「本当にもう・・・気をつけてくれよ・・・あれは高かったんだ」

「気をつけるよ」

「それでよし」

姉はにこっと微笑むのだった。

そして、いつの間にかドライヤーが終わっていたことに気づく。

「よし、これでゲームに集中できるぞ」

僕は意気揚々と再開するのだった。

「服を着てから!」

姉は怒る。

そういえば全裸だったなと思い出す僕だった。








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