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PV。

僕は最初、この言葉を聞いた時に何かのプロモーションビデオかと思っていた。テレビや、映画を見て欲しくて1分くらいに映像をまとめて編集した、そういう作品だと思っていた。

でも、そうじゃなかった。

PVってのはページビューの意味だと知ったのは随分と後の話だ。

ページビューってのはネットでクリックしてもらった回数なのだとか。

つまりは、その数の多さがSNSでは戦闘力を決めると言っても過言ではない。

何で、そんな話をするのかって言うと、

僕が今見てるサイトでは、PVが2億を超えてるからだ。2億。文字数ではたったの2文字だが、

その戦闘力はとてつもないものだ。

日本の人口が1億人だと聞いたことがある。

なのにだ、その1億を超えてるということは、

海外の人からも注目を浴びてるということ。

日本だけでも凄いのに、海外の人すらも動かすその人物とは”高橋日向”

ナイスバディで巨乳の姉さん。

好きなものはアイス。

昔からモテる人。

いつも人の中心に居るような輝かしい存在。

文武両道。

恰好はジャケット+ホットパンツ+へそ出し。

身長168cm。

体重59kg。

暇なときは髪の毛を噛むことがある。

そんな人。

ちなみに僕が大好きな人でもある。

彼女は天才美少女ラノベ作家として、

ラノベ作家としては珍しく顔出ししてる人だ。

その効果もあってか、

かなりの顔写真が出回ってる。

小説家としての才能は勿論だが、

その美貌に人々は釘付けだ。

そして、SNSでは異常な盛り上がりを見せる。

彼女がコメントを発するたびに、

SNSでは様々な人たちの文章が飛び交う。

その中でいくつか抜粋しよう。

綺麗だ、エロい、可愛らしい。

小説で心が動かされた、読みやすい、思わず泣いた・・・そんな風に彼女を称賛する声が多い。

中には嫉妬の文章も無くは無いが、

それすらも彼女のPVの養分にしかならない。

もう、日向ヒナタの勢いを止められるものはラノベ業界には居ないだろう。

僕が好きな人は、本当に・・・凄い。

それに比べて僕はと思う。

今何処に居るか?

それは公衆トイレである。

公衆トイレにしては金がかかっており、

まるで高級ホテルの一室かのような美しい所。

僕はそんな所に居る。

とはいえ、

トイレであることに変わりは無いのだが。

僕はそんな日陰の場所で、

1人寂しくスマホを眺めてる。

日向は凄いなぁと思うだけ。

そんな惨めな僕。

一通り、日向の事を検索しまくって、

もう、これ以上追加の情報は得られないかなと思い、僕はようやくトイレから出る。

そして、ふと鏡を見てしまった。

あの美貌、あの綺麗なスタイル。

本当に素敵だ。

モデルみたいに。

僕はスタイルも負けてるって思う。

貧乳で、なんとも情けない。

でも、こっちはどうしようもないだろう。

僕は容姿に自信が無いのだ。

不細工ではないと信じたいが、

人から手放しで褒めて貰えるかと問われれば、

答えはNOだろう。

理由は顔にシミがあるからだ。

ある日、朝起きたら出来ていた。

最初は小さいモノだったが、次第に大きくなって今では大きくなることも無ければ小さくなることも無く、僕の右頬に居続けてる。

早く、このシミが出て行ってくれると嬉しいのだが、そんなことは起きない。

普通、年齢を重ねてから出来るものだと勝手に思っていたが僕に限って言えばそうじゃないらしい。この顔のシミが僕を醜いのではとコンプレックスを感じさせる。とはいえ、手術をするかと聞かれたら怖い。身体にメスを入れるのかと思うと勇気が出ない。というか、その前に10代の学生だし、そんな費用は出せない。それに手術が出来るものなのかも分からない。

あの、美しい日向と比べて僕はと思う。

このシミを隠すようにマスクをつけるのだ。

100円ショップで50枚入りのやつが購入できるし、

感染予防という建前があるので日常的につけても文句は言われにくい。

だから、日常的につけてるのだ。

このシミを隠すために。

僕は手を洗って、公衆トイレから出るのだった。

気温は18度くらいだろうか。

まだ肌寒いが、過ごしにくい季節ではない。

着こめばそれなりに楽しめる。

桜の花びらが舞ってる、そんな季節だった。

「眩しい・・・」

僕は手をかざして太陽の光が目に入らないように遮る。いつまでもこの日に当たってしまえばシミが拡大するのではと不安に思い、急いで陰に移動する。これが僕の日常。光(sun)から陰(shade)へ移動する。

僕の名前が高橋日陰。

好きなものは苺で、

嫌いなものはうるさい人。

恰好はワンピース+手袋+マスク。

身長153cm。

体重47kg。

意味は無いけれども、飲食店とかでたまに出されるストローのゴミなどを結ぶのが好き。

僕はそんな人だ。

大体、名前からして暗いんだよな。

名は体を表すとか、何とか。

だからと言って親のネーミングセンスを恨んだことは無い。というのも、名前自体はわりと嫌いじゃなかったりする。これが仮に明るい名前だったとしたら、例えば亜香里とかだったら、お前の名前明かりのくせして暗いなとか言われそうだし。だから暗い名前の方で良かったなと思うことも無くは無い。

僕はこれでいいのだ。

日陰を歩き、一生暗い人生を送る。

地味だが、平穏で何にも侵されない安寧の日々。

悪くないと思う。

ふと、スマホを見る。

すると充電がもうすぐ切れそうだ。

家に帰って充電しなければ。

そう思って、家に帰っていくのだった。










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