雨は、出会いと。
考えていられない。行こう。行ってから考えよう。
外は雨が降っている。しとしとと降っている。
玄関で靴を履き、傘を持って出かける。お母さんが何か言ってくる。
「みよ、どこ行くの?これから晩ごはんよ」
わたしは何も言わない。言ったら運命に逆らう気がした。玄関を開ける。
空は曇っていて、不安そうな顔をしていた····
傘を差しながら走って、駅へと向かう。駅から高校の最寄りまで行き、そうして店へと向かう。
これが、運命なのだろうか?運命と呼べるのなら、ひどい運命でいてほしくない。彼と知り合いになり、付き合って、デートをし、最初に夜を迎えて·······まさか結婚なんて、ううん、彼ならいいんだ。
色々考えても仕方がない。とりあえず店に着き、中を見渡した。端っこの紫のソファに彼は座っている。
気のせいか、自分が笑っているような気がした····
「どうしていきなり?」
わたしが言う。
「我慢できなかった」
「でも、どうして番号を?」
「友達から紹介してもらったんだ」
「······わたしのこと、どう思ってるの?」
「仲良くしたいと思ってるよ」
「そう。何か飲む?」
「とりあえずカフェラテを」
「わたしはブレンドコーヒー。」
夜は更ける。雨は相変わらずしとしとと降っている。どうしてだろう。まともに顔も見れない。少女だから、と思われるのは癪だ。もう大人だとわたしは、勝手に思っている。
「いつまで居るの?」
「さあ、君がいなくなるまで」
「そう。わたしのことはみよ、と呼んで」
「僕の名前は、小坂朔」
「······そう。わたしね、食べるのが好きなの。ハンバーグとかハンバーガーとか。男の子も好き」
「そう。僕は、女の子が好き。」
「ふーん。わたしね、君のこと···」
そこで目が覚めた。いえ、何でもない、こっちの話。
また寝る。
「僕は、小説好きで·····ジュブナイルとか」「ふーん。わたしもジュブナイル好きだよ」
「そう。僕は、昔、はやみねかおるを読んでて·····」
時は過ぎる。夜は更ける。客が来た。
カランと音がする。
女の子と男の子だ。女の子は、きれいな顔をしている。男の子は、帽子を被っている。
二人は、私たちからほど近いところに腰掛ける。
「それでね·····」
「待って!」
「········」
朔は、二人を警戒しているようだ。
「出よう」
「うん。」
女の子は、大体男の子に従うものだ。もっと話したいけれど、その店を出ることにした。
出るとき、店のヴェレイと言う看板が目に映る。
「ごめんね。あの2人が気になって」
「うん。いいの。あの、」
「うん?」
言えない。ライン交換しようって言えない。ええい、勇気を出せ!わたし!
「交換しない?」
そう言ってスマホを出した。
いいよ、と言い、わたし達はラインを交換した。やった!王子様とライン交換した!やる!わたしって。
夜寝る。家では母親が怒っていた。理恵と会っていたことにしてごまかした。