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第5話:なにか特別な感情を

 部屋からオレンジの光の明かりの光と可愛めの唸り声が聞こえる。

 部屋の中には一つの大きめの机に隣り合って学習するリオとアリシアがいた。

リオはなんにも問題なく勉強を勧めていたが、アリシアは少し前から疲労しており、とうとう机の上で腕を組み、寝転んでしまった。


「ううう。難しい...」


「うん?どれどれ...」


 俺がアリシアの見ているテキストを覗くと、そこには社会分野のページが開かれていた。

内容は3大宗教のページが開かれていた。確かにこの世界では学習が前世よりも遥かに遅く、前世ならば小学生高学年でもとけるような難易度でも学園1期生でならう。だが、その知識を知っているのは俺だけだ。それ以外の人たちは、そんな高度な知識なんて持っていないわけだから、解けないに決まっている。

あ、ついでに俺は大学を卒業しているし、言語も母国語合わせて4ヶ国なら喋られた。そのうち1つは使わなすぎて忘れかけてるけど。

アリシアは始動神ゼノという宗教の一つのページを指さしながら話す。



「この中の始動神ゼノの内容がわからないの。この神が生まれたときに天使という存在が生まれた。それはわかるんだけど、この神が生まれたときになぜ天使が生まれたのか...それが教科書に書いてないの!」


あ〜〜つまりは、結論はあるけど理屈がないから困っているんだ。

でもこれは結論は入試試験で使うけど、理屈とかは学園の学習で習うやつだ。


「ゼノが生まれたときに天使が生まれた。今回学ぶべきことはひとまずそれだけで大丈夫だよ。このあとの理屈は学園に入ったら学べるから」


小さいところのおまけスペースに2期生で習うって書いてるから相当理屈が難しいんだな...そう思った。


「う〜〜ん、でも仕方がないね。ずっと考えていても、情報がないから理屈なんてわからないよね」


さっきまで険しかったアリシアの顔が一気に緩まった。

緩まった顔はいつもの可愛いアリシアで、また微笑みながらお礼を言う。


「さっきのところ、教えてくれてありがとう」


「全然平気。もしまたわからないところがあったら聞いてきていいよ」


「うん、もし困ったらまた言うね」


アリシアはテキストを持って立ち上がり、本棚に向かってテキストをしまおうとする。すると、一匹のネズミが本棚の下からすっと出てくる。

自分たちの見えないところにいたんだろうなと思いながら、ネズミが逃げていくのを見ていると。


「ひゃっ!」


アリシアは驚いた拍子に本棚にぶつかってしまう。

すると、バランスを崩した本棚から、小さめの本がパラパラを落ちてくる。


「危ない!」


それだけなら良かったのだが、アリシアの上から本少し大きめの辞書のようなものが落ちてくる。あれが当たるともしかしたら脳に損傷ができて、一生脳の障害を患わってしまうかもしれない。脳の構造なら多少詳しい。前世の職業が薬剤師だったから少しだけ医学を学ばないといけない。

俺はすぐにアリシアのそばに行き、アリシアの腕を左手で掴み、自分の方へ持っていく。


ドンッ


辞書のようなものが落ち、その落下した音が聞こえた。それが落ちた場所には小さなくぼみができており、もしもアリシアが落下地点いれば、どうなっていたかはそのくぼみが示していた。


「大丈夫か?アリ...シア...」


「あ...ありがとう...」


気づけば俺の腕にアリシアの身体が密着しており、女の子の柔らかい感触が自身を襲ってきた。それでもアリシアは、先に感謝を伝えるためにお礼をした。顔が真っ赤だけど...

そして、お礼を言ったアリシアはゆっくりと俺の腕から離れた。


「ほんとに...助けてくれてありがとうね」


「ううん...アリシアが無事で良かったよ」


「ちょっと飲み物をとってくるね」


アリシアは顔を少し赤らめながら部屋から出て、ゆっくりと扉を閉めた。

嫌な思いをさせてしまったのだろうかと俺は思ったが、アリシアが助かったのならばそれでもやってよかったのだと思い、罪悪感を減らした。




「...ぅぅ...」


リオに密着されたときに、私は慌ててしまっていた。

その慌てようはきっとリオからしたら変だったのではないかと思ってしまう。

今まであってきた女の子も男の子も全員こんなに慌てている姿を見せることはしたことがない。


「たぶん、本が落ちてきたのが驚いたのかな?」


私はそれで、この感情を片付けることにした。

この感情は、きっと二度とないだろう。両手に2人分のレモンティーを持ちながら、私は再びリオの居る部屋に戻る。その時の私の表情は、いつもの私とは少し違っていた。

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