第24話:攻防戦
「死ねえ!」
「雷鳴!」
俺の剣は自分の目で追えないスピードで、アーゴへ向かって行く。
剣の先端部分にアーゴの蹴りがぶつかる。ぶつかる衝撃波は強力かつ高密度の辻風となり、自身の白いスカートをたなびかせる。
俺の剣はものすごい蹴りの威力によって押し戻されそうになる。
「くっ....」
剣を振る力が、蹴りの威力を守る方向へ進んでいき、威力を抑えるために剣先が震えていく。
なんとか剣を押し戻そうとはするが、状態は変わらずに悪化していくのみ。
なんで......
「ありがとう!リオ!」
何か...アリシアのような声が聞こえた気がした......
「ありがとう!リオ大好き!」
「凄いよ!リオ!」
この声ってどこから来ているんだ.....
これは、俺の記憶のことか....
「アリシア...私の名前はアリシア・ルーンよ」
昔俺に言っていた名前....あの頃は俺のことをあまり信用していなかったってことだよな.....だけど...やっと....名前だって知ることができたのに。
どうして....行っちゃったんだよ...俺を助けたんだよ........
なんで....俺達の幸せを壊したんだよ.......
「もう剣に力を入れることもできないのか?ならあの世に行かせてやるよ!お友達と一緒の所にな!」
アーゴは脚に気力を入れ直し、勢力を増し続ける。リオは剣を自分の胸で抑えながらなんとか守っている様子だ。
アーゴの力がリオを完全に上回った時、リオの剣は一気に顔へと進む....
「全て....お前のせいだ」
「はぁ?」
リオの顔に突き刺さろうとしていた剣の先端は顔に衝突....せず、静止した。
「なんで...動かない...」
アーゴは先程までのリオの変化と全く違うことをこの一瞬で感じ取り、剣にぶつけていた蹴りの威力を利用して真後ろへ飛びあがり、地面へ音を立てずに着地した。
アーゴは着地と同時に視線をリオへ向ける。だが、その場所へいたと思われる場所にはもういなかった。
「防波衝!」
アーゴは体を空中にあげ、180度回転をする。それとともに、腕を守りの構えにして、気力を腕に集中させた。
「がっ!!!」
アーゴの目には何も映らず、ただただなにかに吹き飛ばされていた。
受け身をしておけたことは、歴戦の格闘士だからできた芸当だ。
アーゴは地面に叩きつけられて、町の噴水広場へ吹き飛ばされる。
「っ地?!」
アーゴは背中に気力を集中させ、再び地面の衝撃を受け流す。
ただ、短時間で気力を使いすぎたせいで気力の集中が追いつかない....
「だはっ!」
背中の気を貫通して、地面に突き当たった。気力のお陰で威力は軽減することができたが、それでも背中の衝撃は完全に消すことはできない...それよりも....
「なぜ....腕を折れる威力を出せるんだ...」
左腕を自分側に、右腕をリオ側にして守った結果、右腕はかなりの負傷をしていた。
「なんで...さっきまでは弱いやつだったというのに!どういうことだ!」
アーゴは心の中に秘めていた焦りが今、飛び漏れた。
仰向け状態だった体をグルンと回転し、バランスよく足と地面を平行に着地する。
「さあ!俺も本気を出せよ!」
アーゴは足を地面に叩きつけ、強く叩くような音がする。地面はめり込み、黒色の靴が地面に半分ほど埋もれている。
目を前に出しアーゴは口を半開きで開ける。
「アリシア!お前は!俺の愛したものだった!」
リオが剣を持ち、再び音速を超えるスピードでアーゴへ行く。
アーゴは気を拳にためて、一気に気を解き放とうとする。
「お前さえ!いなければ!」
「.....くっそが!」
アーゴは左腕をリオへ放つ。ただ、先程よりも遅く、気力が全く通っていない。
もはや空元気のような....拳だった。
対して、リオは速度を落とさずアーゴへ進んでいく。剣を自身の身体と横になるようにして、再び居合い切りをする。
「くそが〜〜!!!!」
「うわあああ!」
リオが居合い切りをアーゴへ向かって放つ時、アーゴは拳を....出していなかった。
もう、無理だと悟ってしまったから........
ドサッ
人が倒れるような音がし、場は一瞬にして静かになる。
「はっ?」
一つの声が辺りの音をもとに戻す。
「なんで.....お前が....倒れているんだ」
リオは、剣を手から離しながら....うずくまって倒れた。
「う....ああ」苦しそうに胸を掴みながら、苦しそうに呼吸をする。
「ああ....」
行けると思っていた。特別な力が自身にあるのかと....勘違いしていた。
胸が痛い....怒りで呼吸をすることを忘れていたのか....それとも肉体が耐えられない行動をしたせいか....それとも.......
「ははっ」
自身の上側から間抜けそうな声をする。
それは最初に出会ったときのような上から見上げるようなトーンではなく、化け物を恐れるようなトーンをしていた。
「お前は....最初にあったときは本当に弱い女だと思っていた」
動け....お願いだから...早く........
無理やり筋肉を動かそうとしても、動くのは心臓の鼓動だけ...余計に胸が苦しくなり、胸を鷲掴む力だけが強まっていく。
「だが、蓋を開けてみてみれば、自身の固有能力もまともに使えない無能だ....本当に...無能だ!!!」
近くにあった噴水を蹴り、噴水の壁がガラガラと崩れる。
壊れた壁から水が溢れ出してきて、一瞬にして辺りが湿っていく。
腕に水分を感じて、手に生々しい感触を覚える。上を見ると、俺にめがけて拳が振り下ろそうとしている。
「さあ!これで終わりだ」
俺の体はその拳によって殺された......と....俺達は思っていた。
「ちっ!クソが!また新しいやつが出てきやがった!」
「....ファ....ファナック様....」
俺に向けて放ったアーゴの拳を、金色に光る剣で...流麗に受け流した。だが、アーゴは自身の拳が受け流されても、慌てることのなく常時の構えへ戻す。
ファナック様はどうしてここがわかったのか....ずっともう一人の男が来なかったことも違和感を覚えていた....
「お前......私はアリシアが殺されたことに強い怒りを感じている」
ファナック様は、歯を強く食いしばりながら睨みつけ、アーゴに向けて殺気を放つ。
だが、アーゴも殺気をファナック様に向けて放ち返す。
「老いぼれ!お前に何ができる!お前はこいつよりも強者としての独特な気が感じられない...良くてCランクの冒険者程度だ...」
「そう見えるのならば...それで良い。ただ....」
「私は娘を殺されていて、呑気に彼女の後ろで見守る者にはなりたくない」
ファナック様は威厳のあるような声で、ハキハキと喋る。
確かに戦闘能力ではアーゴよりも弱いとは思う...ただ。
精神は、きっと何万倍もある.....
俺は、その戦いの行方を見ていることしかできなかった。




