第22話:証
ダンッ....ダンッ...ダン.....
「ぐ....」
俺は比較的低い角度で吹き飛ばされて、やがて止まる。顔には地の冷ややかな感触が感じられた。
ただ、その感触は強い頭の痛みですっかりと忘れる。
目の上からつーと血が流れる感覚がする。
「....痛み?...」
痛み...先程の攻撃を喰らえば俺は即死だったはずだ。頭をえぐられて...たまたまミスをしたのか...いや、急所感知があるのだからミスをするはずはない....アリシア....
.....いや........そんなはずはない...
俺はいても立ってもいられず、思わず痛みを忘れて飛び起きる。
「あ...アリ....シア?.....どこだ...」
俺は少し横を見回し、アリシアを探す。まさか、俺をかばったのではないかと俺は考えてしまった。俺にとっての最悪の結末が....流石にあるわけ....
「..ッ...アリシア!!!」
俺が見る先には、頭からかなりの血を流して倒れているアリシアがいた。
左の頭は少し変形していて頭の骨が曲がってしまっている。
俺はアリシアのもとにすぐさま向かう。
「アリシア!ヒール!」
俺はアリシアのそばでしゃがみ込み、基本の回復魔法をアリシアにかける。かすり傷は少しずつ癒やしていくが、根本的な損傷部位が治らない....
「そんな.....アリシア....俺をかばって.....」
俺はとにかく何度も回復魔法をかける。なのに...効果が......
「リ...オ....」
「アリシ....ア.....?」
アリシアは俺の手をか弱い力で握る。
「アリシア...俺をかばって....ほんとに..ごめん...」
アリシアはニコッと微笑んで、一度長めの瞬きをする。
「リオ....あなたに...この剣を...あげる.....」
アリシアは腰にある剣をぽんっと触る。
「ほんとは....能力もあげたかったんだ......けどね...」
「アリシア...ごめんな......俺には弱い回復魔法をかけてあげることしか.....」
普段からもっと強い回復魔法を覚えていれば.....もっと強い魔法を使えれば....これじゃあ損傷の大きい部位を治すことなんてできない....うなだれるような後悔をする。だが、アリシアは
「あのね、私ね.....リオに...えて........良か...たよ」
側頭連合野に損傷が起こって....言葉がおかしいのか.....
それとも運動連合野のせいで口が動かないのか...それとも......
「私..ね....今とっっっ...ても幸せな気持ちなの」
「....な...何言ってるんだよ...体のあまりの痛みでエンドルフィンが分泌されているってことか....」
「う...う..ん.........ただ」
「死ぬ時にリオと一緒にいられるなんて...本当に.....幸せで...」
「俺は嫌だ!」
俺は心の底から溢れ出した気持ちをこぼしてしまう。
「アリシアは俺の大切で、本当に大切な人だ!だから.....」
「死んでほしくない......」
俺は思わず目が潤む。なんでこんなに幸せな時に....なんでアリシアばっかりがこんな目に合うんだ...こんなの........おかしいだろ..........
「リオ...」
「えっ」
アリシアは俺に抱きついた....本当に痛みを感じていないのか...アリシアの柔らかい体....本当にいなくなってしまうのか....複雑な感情が俺に巡る。
その瞬間、俺の唇に柔らかい感触を感じる。
俺は息が止まりそうになった。ただ、柔らかいアリシアの唇の感触が、俺の心臓の鼓動を躍動させる。そして、アリシアは唇を離し...にこりと目を閉じて.......笑った。
「大好.....き............」
「俺も....大す.....」
ドンッ...
その瞬間、アリシアはこ途切れた。さっきまでの柔らかい感触や躍動する気持ちが....この一瞬にして....消え去った。
「アリシア!!アリシア!!」
アリシアの息は急激の遅くなっていき、呼吸の音は消えていく。
地面に手をつけると、生暖かい感触があった。本当に大量の血をアリシアは流していた。
やがて息の音とともに、音は全て無のようになり...なにも聞こえない世界が....俺へ不安感を与えに襲いかかった。
心臓もゆっくり、ゆっくりと止まっていき、動きが消えた。
もう、ここからアリシアが戻ることはない。
アリシアのあの優しい顔は見られない。
もう....アリシアの声を聞くことはできない.......
彼女が生きた証は.....もう俺の記憶上にしかなかった。




