第21話:雷
地面の砂埃が舞い、雷が地面を伝う。雷が落ち、パリパリと雷がいろいろな方向に飛散する音が辺りに轟く中、俺達は強化バフをかけて、自分の力を高める。
「何ッ何で関係ない生き物に当たるの?!!」
「.....ちっ...危なっかしい娘だな」
「普通にBランク冒険者と同等の威力だ。女だとしても油断するな」
アリシアが撃ったライトニングが直撃...したはずなのだが、素手の男が拳を突き出して相殺していた。
「気術か!」
「きじゅつ?」
「御名答...だが...」
気術は体に多くの空気を取り入れて、一瞬だけ自分の力を倍増させる格闘技術だ。
...男がいない...どこに...
「俺の持っている主なスキルは急所感知と怪力、そして肉体強化系のスキルを6つ持っている」
「?!!はやっ...」
ほぼ目の前に男が音もなく現れる。男の拳の風を切る音が吹き付ける中、俺はすぐさまこの一瞬でできる自分の最高密度の結界を張る...が...それを簡単にヒビをつけ、ヒビが大きくなっていく。
「化け物かよ...」
このままでは結界が壊れ、衝撃がこちらまで来てしまう...俺はわざと壁の方へ体を飛ばして威力を緩和させる。
「ウィンド...いたっ」
「リオッ!」
壁に向かって風を逆噴射して、衝突時の威力を落としたが、あまりの威力によって威力を消しきれなかった....
「おお、これでもBランクの魔物を一撃で葬れる攻撃だぞ?耐えられてよかったな」
男はわざとらしくにやりと嗤う。
「それはどうも!」
俺は前にも使ったことのあるフレイムバインドを男に向かって放つ。威力は前よりも数段上のように見えて、魔力の密度が明らかに上がっている。
「ふははっ!また魔法か!」
俺の放った魔法を足で蹴って破壊していく。男に次々と向かっていくが、全て蹴り粉々に砕け散る。
「動くな!」
「いろいろな魔法を知っていたとしても使いこなせなければ勝てねえよ!」
束縛魔法....が一瞬の間も効かなかった。まだ使いこなせていないのか...それともレベル差がありすぎるのか....っ...とにかく何かを!
「遅いぜ!!波掌撃!」
まずいっ!......このままじゃ...死....
*
「はっ速い!」
一つの剣を避ける私...だが、それと同時にもう一つの剣が襲いかかってくる...
剣を間一髪で剣で受け止める。まだ剣の威力が高くない...それが救いだった...
「サンダーボール」
私は剣で受け止めた方ではなく、もう一つの手から雷魔法を放つ。
男は後ろに後退するしかない...少し形勢を戻せ....
「ダークボール」
男が言葉を放った瞬間にどこからか闇魔法が飛んで来て、放った魔法に衝突する。
威力はどちらも高いわけではなく、相殺し合った。
どこから飛んできているのかがわからず、あたりを見回すと、2冊の書物が飛んでいた。
「どうして...剣を両手で持っているのに魔法を使えるの...」
「どうしてか?」
「......魔法ではなくて魔術ってこと?」
私は『俺がなぜ魔法を使っていると思っているんだ...これは魔術なのにな!』っと男が思っている心情を読み取った。
「おお、ちゃんとわかっているじゃないか....では、魔術と魔法の根本的な違いは知っているか?」
「魔法は自身の魔力を利用し、イメージで生まれる...魔術は大気中にある魔素を利用し、方程式のようなもので生まれる....つまりは....!」
「そうだ!魔素は大気中のどこでもある。あれは俺の司令で動き、単独で行動する事ができる特別な存在だ!」
つまり、魔法であれば自身の魔力を利用する為、自分から魔法を放つ必要がある。ただ、魔術であれば、大気中にある魔素だ。だから、男の司令であの書物が魔素を取り入れて、放出することができる。
たった一人でもギリギリなのに...それに支援者が2人いるようなものなんて...
「本当に...強す...」
大きな音が響いた……その場所にはリオと男が戦っていた。だが、リオは劣勢で、男は威力の高そうな攻撃を繰り出そうとしていた。
でも、リオの詠唱はもう間に合わない……
このまま直撃してしまえば、リオは確実に死ぬ……
その瞬間、私は走り出していた。
「敏捷強化Ⅱ!敏捷強化Ⅱ!敏捷キ...」
バフを次々追加していき、足がパンパンになっていく。痛い....だけどね。
それでも、守らないといけないじゃん....
*
「遅いぜ!!波掌撃!」
「!!!」
まずい!!!この攻撃を喰らえば俺の体は確実に砕け散る....
一度逃げなければ........
だが、逃げられる時間はもう既に遅く...1秒も残っていなかった。
「肉体強!」
詠唱も確実に間に合わない....このままでは!!!
「リオぉぉ!!!」
「ァ!アリシア!来ちゃ」
その瞬間....何が起きたかもわからない衝撃が起こった。
頭のあたりに直撃して、虚空に吹き飛ばされる。
ドンッ!ダンッ!ダン!
地面に顔をついて...地面の冷たい感触を俺は感じる。
頭部にズキズキとする痛み...と.....
あれ?なんで....痛みがあるんだ??
「...かっ....」
俺は地面に這いつくばりながら、目を見開く.....
辺りは半壊しており、音などで気づいたのか、近くの住民の家には明かりが灯っていく。俺は明かりがある方を見......あ.....ぁ....
「あ...アリ....シア?....アリシア!!!」
アリシアは.....頭部を俺の比にもならないほど損傷を受けて....大量の血が流れていた。




