第17話:死の懐中時計
「リオ、リオってどこまでこの世界を知ってるの?」
「え」
アリシアに俺には前世の記憶があること、てか俺がゲームの世界の事を知っているということは言っていないはずだ。どういうことだ....いや、違うな....ただの私の勘違いでアリシアは別の話をしていたのか。
「この世界を知ってる?...私が医学とか勉強が凄くできるってこと?」
私はアリシアに再び問いかける。アリシアの質問の主語が漠然としすぎていて質問の趣旨が全く読み取れない。
アリシアは口をつむぎ、う〜んといった顔をする。どうやら違ったようだ。
少しだけ2人に無言の時間が続き、俺は少し何か嫌なことをしてしまったのかと考える。
「別に嫌なことじゃない。まず私の能力を知ってほしいの」
「能力?」
どうやら表情に不安の心が出ていたみたいだ。アリシアに見破られてしまった....
てか、能力?どゆこと
「私のステータス表...前に見たじゃん」
「うん。剣術があったり覚?みたいなスキルも」
アリシアは心臓のあたりに手を置き、私を見つめる。
はあ、っと一回深呼吸したあと、口を開けた。
「違う。あの能力は覚って言ってね。人の感情を読めるの」
えええええええ.........
俺は予想外な真実を知って、頭を抱える。
何回かアリシアのエッチなこと想像したことがあったけどバレてるのか。てか前世が男ってことバレたからヤバイんじゃ...最悪アリシアとの仲が悪くなるかもしれない。
「そんなこと絶対に思わないよ!てかたまにリオのエッチな姿も妄想したことあるし!!」
「ありがとう!うん?それはまじでか?!」
俺は嬉しい感情とか不思議な感情でよくわからなくなっている....とりあえず落ち着いて整理しよう。
「アリシアは人の心が読めると...」
「うん!」
「俺のことは別に嫌いになんてならない?」
「もちろんだよ!リオのことは大好きだよ!」
「たまにエッチな妄想もしたことがあると....」
「う.....ん...」
アリシアは顔を真っ赤にさせてしゃがみ込む。
「別にいいじゃん。リオが好きなんだもん」
「...あ、ありがとう」
アリシアは顔を真っ赤にしながら上目遣いでこちらを見てくる。くっそー。可愛いな。
「とっ...その前に、その覚という能力はどういう条件下で発動するものなのかな?私はその能力を《《知らない》》」
知らない能力...ゲームの中ではなかった能力だ。能力によっては発動をしていくと寿命を減らしていくような能力がある。それだったら能力を手に入れたものに出会う前に所持者は既に亡くなっているという可能性がある。常時発動のものもそうで、常時発動ということは例えばその能力をその頃からずっと使っているといつしかショートを起こす。ゲーム機だってずっと電源を消さずにしていれば壊れるだろ?
「...常時発動...って、私...そうかもしれない」
「えっ」
アリシアはさっきまでの楽しそうな雰囲気から一転、怯えるような顔になる。
つまりは、この能力を制御できていない。
アリシアは、ゲームの中で出て来ることはない...いや、あった、いたんだ。一人のヒロインと少しだけ仲が良かった。そのヒロインはいろんなクラスの人と知り合いで、優しいやつだ。そういえばアリシアは次席クラスにいたと思う。
ただし、アリシアは突如、学園を休むようになる。
もちろんヒロインはその時に心配をしていた。だから俺は安心させる言葉をかけてやっていた。
まあ、結局休み始めて1週間後、彼女に出会うことはなかった。学園に入学して間もないときだ。
つまり学園側も転校したとか退学したとかそっちでも通用する。だから大事になることはなかった。
「ゲームではアリシアは死ぬことが前提のモブキャラってことか!」
俺は本人がすぐそこにいるのにもかかわらず、思わず口に出してしまう。アリシアがどれほどいいやつかは知っている。どれほど笑顔が似合うかも...
ただ、でもだ!こんなにいいやつにあげる能力を知って...あまりにもこの世界が残酷だと思い...いやゲームを作った者...アリシアの末路をこのようなものにしたものへの怒り...だ。
とりあえず、タイムリミットは約2ヶ月だ。その日までに俺は...
「リ..オ....」
アリシアは俺の手を握る。どちらの手汗か、手のひらは湿っている。
彼女は目がうるおい始め、その1滴が床に落ちる。
俺はアリシアになにか励ます言葉を口に出そうとする。
だが、俺は声が出なかった。出せなかった。
俺には、アリシアに掛けてやれる言葉など何一つなかった。




