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20XX年10月7日午前 新潟県庁地下?F "人間側"との話…
あの人が 俺に近づいてくる…
うん。この人なんだけどね… そうre
「はじめまして。内閣総理大臣の 高田 善正です。」
はい。高田総理でした。思い出しました 名字だけは。
そして、まったく読めん笑顔。政治家としてはこれが正解なんだろうけどね〜…
「はじめまして。小林 和夫です。」
なるべく同じ様なつもりの笑顔を貼り付けて握手に応じた。
高田総理は俺の両手をしっかり自分の両手で握りながら…
まるで俺のが何者なのか、何を企んているのか看破するが如く真剣な眼差しで俺を診ていたが表情には決して出さず…
また、何かをつかんだ様でもなく、
一旦、鉾を収めるかの様に握手を解いた。
「さぁ では本日の会議の同席者であり、こちら側の皆を紹介しよう。」
ダメですよ。総理。
貴方達みたいに隠す技量なぞ俺にはありませんが、
何も隠せない・隠すものすら持って無い事を貴方みたいな人達に知らせるつもりはないんです。
「それでは順番に自己紹介してもらおうか。」
総理の差配に応じて中央左にいた人が一歩前に出て自己紹介をした…
「はじめまして。内閣官房長官の中井 剛です。」
と名乗り軽く頭を下げた。
「はじめまして。よろしくお願いします。」
と俺も頭を下げる。
次が、防衛大臣の大塚 貴男さん。続いて、経済大臣の山口 博さん。さらに、厚労大臣の皆藤 正義さん。
と、同じ様に挨拶され、同じ様に答礼した。
そして、最後に残った一人。
一歩前へ… では止まらず総理の隣を過ぎて俺の目の前まで しかも、満面の笑みと指先までピンと伸ばし、わずかながら左手が先になるかたちで握手を求めながら…
その表情と、なにより差し出された両手を見て 思わず俺も両手を出ししっかり握って握手に応じた。
「はじめまして。新潟市長の原 信之です。新潟市へおかえりなさい。」
ぎゅっと握られ手は力強くもあったが、とても温かく感じた。
「ありがとうございます。小林 和夫です。ただいまです。」
全身から変に溜まっていた力みが抜ける様な…、その代わりに清らかで温かい力が染み込んでくる様な不思議な感覚を覚えながら…
それでもこの人の温かさに応え様としっかり握手する両手に気持ちを込める。
一同が固まったまま俺達二人を見ていたが…
ここで またもや、気の利く女性職員による小さな咳払いに隣に立っていた県知事がまず我にかえり皆に提案した…
「自己紹介も済ましたし、ひとまず席に着いて話を進めませんか…?」
「そうだな。これからの予定もある。早速、認識共有を… というか、こちら側の事情説明をさせて貰おう。」
と、総理はじめ大臣方・知事・市長がテーブルの右側に並ぶ椅子に向う。
俺は、女性職員に案内され左側中央に引かれた高級そうな椅子に座った。
初めての座り心地。大臣椅子とはこれ程かっ!? 自宅で使っている 腰痛予防にもと お値段以上… の店で買ったお気に入りのゲーミングチェアとはレベルというか、ラベルが違う!?
「では早速だが… 」
「は はい。失礼しました。どうぞ…。」
俺を現実逃避から呼び出した総理に詫びて
真剣に話を聞く為、浅く座り直し両手をテーブルに置いた。
時間もあまり無いので要点を纏めて話してくれた。
詳細はあちらの方々から後程受けられるとの事だ。
で、総理の説明では…
今月の2日、総理を含めた此処に居る5人の大臣が集められ、皆が "神様" と認識する存在と遭った。
そこで信じられない体験をする事になる。( "神様" と遭ってる時点で・・)
そして "神様"からのお願い・依頼を受け、その報酬の一端を受けとった。
"神様" からのお願い・依頼の内の一つが、今日・俺を此処に連れてきて あちらの方々との会談までの手配と配慮を行う事らしい。
そして受けとった報酬の一端、 "神様" はサンプルと思い好きな様に調べ確かめていいし、後でテキストも渡されるとの事。
で、その報酬が・・
1.ポーション
2.魂魄玉
3.結界
うん。意味わかりません。
拒否反応ってか、頭の中で DANGER!! ALERT!! 混ぜるな危険!! 逃げてぇ〜!! など… 冷勢に!? しっかりパニックってる俺・・
でも… 俺もじいちゃん神様と逢うって約束したし。
周年祭に参加するんだから色々諦め、覚悟もし、既に なんじゃそりゃ!?体験は幾つも… 今更やね…。
政府は今、超極秘裏に、超法規的(ぶっちゃけ何でもアリ!!)にして "神様" から届いたテキストをもとに報酬サンプル?の分析中だが、調べ確かめるほど異次元で驚異的性能である事に疑う余地は無いものとなっているらしい。
しかし、渡されたのはあくまでサンプル。
実用性・有効性は計り知れないが、それには期限があった。
今後も継続的に恩恵に預かるには…
"神様" からのお願い・依頼。その他、飲める要望は総て飲んででも欲しい物ばかりだ。
県の立場としては、今のところ国からの要請(強制)に従っているだけの状態。
新潟市も表向きは県と同様。
ただ、市長は違っていた。
ここまでの説明でお昼になった。
控えていた女性職員の案内で昼食とお昼休憩を摂る事になった。
総理を含む大臣と知事はパワーランチの為に退席。
俺と残された市長は女性職員に連れられエレベーターで地上のかなり高い階の、信濃川を挟んで新潟島と、晴れてよく見える角田・弥彦山を見渡せる明るく広い角部屋に通された。
俺のリュックも女性職員により持ち込まれている。
先程の部屋にあった調度ではないが、充分立派な席に市長と対面で座る。
女性職員が…
「何かお召し上がりたい物はありますか?
よろしければ、バスセンターのカレーや、みかづきのイタリアン、ソースかつ丼も手配してありますし、勿論、その他のメニューもございます。」
「では、バスセンターのカレーで。」
俺の注文に微笑みながら軽く頭を下げ、市長を伺う女性職員さん。
市長は
「俺はソースかつ丼で頼む。」
と、親しげに注文した。
「承知しました。」
と答えて頭を下げ退室していった。
「さぁ 遠慮なく! この場は喫煙可能です。私もどちらかといえばヘビースモーカーです。」
そう言って置いてあった灰皿を俺に差し向けた。
「それでは遠慮なく。よければ市長もご一緒にいかがですか?」
そう言ってポケットからタバコとライターを出し、市長にも勧めた。
「これはありがたい。遠慮なく頂きます。」
満面の笑顔で差し出されたタバコを一本受け取る市長。
俺は先に市長のタバコに火をつけ、自分も深く煙を吸い込んだ。
ドアがノックされお茶を持った女性職員さんが3人分のお茶を置くと、市長の隣の席に座った。
「実は これは私の娘なんです。」
市長の紹介に…
「申し遅れました。県庁秘書課の原 恭子です。父がお世話になります。」
「ご迷惑掛けない様、私からもきつく言い伝えますが… なんせ本人が厚かましく無遠慮な者でして… 何故、市長に当選出来たのか家族皆、不思議がっています。
」
「既になにか・・」
じっと市長の手許を睨み…
「そのタバコは俺が頼んで差し上げたものです。俺 一人吸うのも躊躇いましたが、市長も愛煙家と聞き、ならばご一緒出来ればありがたいとお願いしました。」
「それより貴女は喫煙中の者との同席は大丈夫なのですか?」
「はい。私自身は吸いませが、まったく気になりません。小林様もお気になさらずお願いします。」
「ありがとうございます。安心しました。」
そして、さっきの市長の彼女への言い方にも納得出来た。
彼女が心配する市長の厚かましさは、受け取る側が市長の温かさと親しみとして強く感じるから上手くいってるのだろう。
その辺は家族にはあたり前で改めて感じるほどではないのかもしれない。
そんなことを想い… タバコを吸い終わりお茶を飲んでいるとノックに続いてドアが開いた。
ワゴンが2つ。男女二人により運び込まれ配膳される。
俺の前にバスセンターのカレー。
市長にはソースかつ丼。
そして、彼女の前にはみかづきのホワイトイタリアン。
うん。新潟の食の懐かしさたっぷりだわ。
見てるだけで美味しい。
「「「いただきます。」」」
食レポなどいらん。
知りたければつべこべ言わず食え。
どれも絶対に間違いは無い。
美味しく食べ終え、恭子さんが俺にはコーヒー、市長と自分用にお茶を出してる間に 俺はタバコに火をつけ、市長にもライターと一緒にテーブルの上で差し出す様に置いた。
懐かしく美味しい食事と、心置きなく一緒に食後の一服を楽しめる喜びをかみしめる。
わかる人だけわかってくれればいい。
誰がどう感じ、どう思い、どう動こうとも、俺に強制してこなければ構わん。
まったりと寛ぎタバコも吸い終わった時、市長から話しかけられた…
「今日はお互いに無理でしょうが、小林様の時間が空きましたら、一度ゆっくりお話させて頂きたいと思います。」
「此度の出来事に私が拘り始めた経緯から小林様には知って置いて頂きたいのです。」
「わかりました。この先どうなるのか予測もつきませんが、時間が取れ次第、必ずご連絡します。」
「それと、俺から市長へのお願いなのですが…。」
「なんでしょう?私に出来る事ならなんでも言ってください。」
「ありがとうございます。それではお願いします。その時の市長の判断で構いません。俺にはなるべく敬語は使わないでください。」
「市長とはなるべく親しく、出来れば腹を割って本音で話し合える様になりたいと思っています。それに貴方の方が年上だ。まったくの俺の我が儘です。それでもお願いしたいんです。」
そう言って深く頭を下げた。
「頭を上げてください。わかりました。他の人達との兼ね合いもありますから人前では周囲に合わせると思います。」
「今の様な状況ならもっとラフにいきましょう。恭子もそれでいきなさい。」
「お前にもこれから色々手伝って貰う事もあるだろう。小林さんが遠慮なくお前と意思疎通出来る方がいいだろう。」
「わかりました。それではこれから私も小林さんと呼ぶ様にします。」
「お二人ともありがとうございます。よろしくお願いします。娘さんの事は恭子さんと呼ばせてもらいます。場所柄は弁えますから。」
「うん。それで構わんね。」
「はい。それでいいです。」
「それではそろそろ全体会合のほうへ向かいましょう。ご案内します。」