表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ギャルの令嬢、書道を学ぶ

作者: 天ヶ崎紫翠

 高2の春、彼女は転校してきた。


 

 俺の名前は黒川|景雄。どこにでもいる普通の高校生である。

 今日は転校生が来るらしい。

 ガラガラ・・・とドアが開き入ってきたのは、ギャルであった。

 


 「はじめましてー!白石ひかりでーす!よろしくでーす!」


 

 やたら元気がいい。正直、ギャルが苦手だ。どう接したらいいかわからないからだ。

 そんなギャル、、いや白石ひかりの席は俺のとなりになった。


 

 「どもー!きみ名前は?」

 「黒川・・・景雄です。」

 「へー!よろしくね黒川ー!」

 「あ、うん。よろしく白石さん。」


 

 白石はすぐにクラスで友達を増やしていった。

 たまたま聞こえてしまったのだが、父は大企業の社長をしているらしい。

 いわゆる、「令嬢」である。

 とてもそんなふうには見えない。ギャル令嬢だ。

 

 

 4限の書道の授業後、白石から話しかけられた。


  

 「黒川めっちゃ字うまいじゃん!」

 「いや、たまたま小学生のころから習ってただけで・・・。」

 「わたしも字うまくなりたいなー!書道教えてよ!」

 「あ・・うん・・わかった。」

 「そしたらー、放課後ちょっと時間ちょうだい!」


 

 さすがギャル。コミュ力抜群である。

 俺はギャルと放課後に二人きりになった。

 

 

 「白石さん、今日書いた作品見てもいい?」

 「はーい!あ、ひかりでいいよ!みんな下の名前で呼んでるしー!」


 

 ひかりの作品は、中の下といったところだ。

 しかし、どことなく俺の筆質に似ている気がした。


 

「ひかりはどうして俺から書道を学びたいと思ったの?ひかりなら、ちゃんとした教室で習ったほう

がいいんじゃない?」

 「わたしは、黒川から書道を習いたいと思ったんだよね。黒川の作品にわたしは魅力を感じる。」

 「どんなところに魅力を感じたの?」

 「わたしの家は芸術作品がいっぱいあるんだー。高級なアート。現代美術品。そして有名な書道家の

作品も。

  黒川の作品は、線の強弱がはっきりしていて、個性が出ていていろんな人を魅了すると

思ったんだよね。」

 

 

 ひかりは、やはり令嬢だったのだ。ギャルなのに。

 俺の作品は確かに個性的だ。いわゆるアンチ「書写」である。

 だからこそ、ひかりの言葉には、少し痺れた。

 

 

 「実はわたし・・・書道で日本一を目指してみたいと思ってるんだ!」

 「日本一?なかなか壮大だな。」

 「うん。実はお父さんからある課題を受けているんだよね。それは何の分野でもいいから

日本一になること。」


 

 日本一になれていない俺からしたら、複雑な心境であったが、少しうれしかった。

 

 

 「わたしは勉強では一番になりたいと思わなかったんだ。でも黒川の作品を見たときに

書道で勝負したいと思ったの。」

 「実は俺、いま日本で二番目なんだ。ひかりの作品と俺の作品は筆質が似ている。

だから俺はひかりを日本一にしたい。俺は影となって、ひかりを輝かせたい。」

 

 

 こうして、ひかりと日本一を目指す特訓が始まった。

 目標は、春の学生コンクールで日本一になることだ。


 




 

 マンツーマンで書道を教えるため、俺とひかりは書道部を立ち上げた。

 顧問の先生は絶望的に書道が絶望的に下手だったため、二人だけの活動となった。

 

 

 ひかりには基礎から徹底的に教え込んだ。

 筆の持ち方。墨の濃さの調整。教書を見るポイント。

そして、たくさんの枚数を書くことだ。

どんな人間でも、枚数をこなした人間が上手さに比例するのだ。

 

 

 ひかりの見た目は、ギャルだ。

 でも、書道に関しては驚くほど真摯に向き合っている。

 このとき、俺は心は令嬢なんだなと思った。

 

 

 だが、俺には違和感というか、気になることがあった。

 それは、作品を書くときに音楽を聴きながら、ノリノリで筆を動かしているのだ。

 

 

 「ひかりって音楽聴きながら作品を創るんだね。」

 「うん!そのほうがテンアゲで書けるじゃん!」

 「どんな曲聴いてるの?」

 「クラブミュージック!(ドヤッ)」

 

 

 クラブミュージック・・・やはりギャルである。

 



  

 とある日、ひかりの作品を見たときに、違和感を感じた。

 それは、ひかりの作品には「伸び」がないことだ。

 筆質には人の性格が表れるという。

 ひかりは、実は繊細だったのだ。本質は令嬢なのだと、このとき理解した。


 

 「ひかり、ちょっといい?」

 「ん?どうしたのー?」

「なんか悩み事でもあるのか?」

 「・・・うん。やっぱり日本一を目指すことは重圧なんだよね・・・。」

 

 

 俺はこのとき、親のことで悩んでいると思った。

 なぜなら、俺も親から日本一になれと言われたからだ。

 同じ悩みを抱えている、俺はひかりの心に共感した。

 

 

 「ひかりは、ひかりが書きたい作品を創ればいいんじゃかな。人生は長いんだ。

  っていっても俺まだ16歳だけどな(笑)」

 「そうだよね・・・!黒川・・いや景雄やさしいね!ちょっといいやつじゃん(笑)」

 「俺もお前と同じ悩みを抱えているんだ。一人では日本一になれなかった。でも二人なら掴みとれる

  と思ってる。日本一を。」

 「二人なら、、、それいいかも!いっしょにがんばろ!!」



 ひかりの家は、父、母、ひかりの三人家族で、特に父はひかりに対して教育熱心のようだ。

 そのプレッシャーから、ひかりはギャルになってしまったようだ。

 見た目はギャルでも、心は純白なんだとこのとき俺は思った。

 

  

 こうして、白と黒、光と影の作品作りは始まる。

 同時に、ひかりと景雄の心が「灰色」へと向かっていく。

 

 

 そして時は流れ、春の学生コンクールに、ひかりは作品を提出した。


 



 

 3学期の終業式日の放課後、俺はひかりに屋上に呼ばれた。正直ドキドキする。

 

 

 「今日は伝えたいことがあるの。わたし日本一になったよ!内閣総理大臣賞!」

 「すごいな!さすが俺の弟子だな!」

 「うん。とてもうれしい。お父さんもとても喜んでた。でも、もう一つ伝えたいことがあるの。」

 「ん?」

 「わたしは、景雄のことがすき。書道をとおしてたくさんのことを学んだよ。そして、景雄のことが

  すきってこと。」

 「俺もひかりのことがすきだ。だいすきだ。」

 「ありがとう。とってもうれしいよ。わたしは、これからも書道を続けたい。景雄と一緒に。」

 「俺もひかりと書道を続けたい。これからも、ひかりを輝かせたい。」

 

 

 俺とひかりの心は、「灰色」から「虹色」へと変わったのだ。

はじめて書いてみました。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ