68/224
35年ぶり
「どうぞ。入ってくんなはれ」と秋丘が
声をかけるとドアが開き始めました。明美
さんは、もし海斗くんだったらイヤだなと
思い、部屋のスミに隠れました。
「いやあ、アキやん。急に来てごめんよ」
そう言って現れたのは髪の薄い太った中年
の男でした。
「ああ!お前は鬼やんかあ!」
秋丘は驚いて椅子から立ち上がりました。
彼が鬼やんと呼んだのは、大相撲妖精協会
の会長の鬼沼河童之介でした。
秋丘「いやあ、何年ぶりになるのやあ」
鬼沼「中学を出て以来の35年ぶりやろ」
秋丘「でも、よくここがわかりましたな」
鬼沼「白浜海斗くんが名刺をくれてな。そ
れでわかったんだよ」
秋丘「ああ、そうやったんか。あんさん、
急に来よるさかい、お茶もないでえ」
すると、部屋の隅に立っていた明美さんが
声を上げました。
明美「社長。私が買ってきます」
秋丘「ああ、ほな、頼みますわあ」
秋丘はそう言うと、財布から5千円札を
出して明美さんに渡しました。明美さんは
鬼沼に会釈をして出かけていきました。
ー下に挿絵がありますー




