Oath of Silence
Oath of Silence
クメリア視点
秘密の夜から数日。僕らは特に変わりない日々を過ごしていた。他の皆の動向に注意してはいたが、誰も現状に疑問を抱いた様子もなければ思い出したような素振りもなかった。アイルも相変わらず飄々としていて、あの夜思い出したことが全部悪い夢だったんじゃないかとすら思った。それでも僕の左目の傷は残っているし、キーナの首筋の傷も消えていない。残念ながら夢などではないのだ。
僕とキーナは殺される前の記憶を辿り、なるべく同じ行動を取ろうとしていた。理由は単純。アイルに怪しまれないようにするため。今は昼過ぎ。前回のこの時間は研究所内を散歩していたはずだと、二人で渡り廊下を歩いている。
「……ねぇ、クメリア。」
隣を歩くキーナが不意に口を開いた。その声色からはどことなく不安が感じとれる。
「ん?どうしたの?」
「……私達、このままで大丈夫なのかな。」
彼女が不安がるのも無理はない。このまま何もせずにいればいつかまた同じ日がやってくる。僕らがこうして思い出し、苦しんでいることも全て無駄になってしまう。また皆を無駄死にさせてしまう。かといって、焦って行動したところで身の安全は保証できないし、思い出した時の負担が大きいため皆の精神状態も心配だ。課題は山積。軽く詰みかけているのが現状である。
「大丈夫じゃないと言えば大丈夫じゃない……かな。」
そう言えば、隣から感じる不安のオーラがより一層濃くなった。そのまま僕らは無言になる。沈黙が重い。普段だったらこんなこと絶対にありえないのに。
そうしてとぼとぼと廊下を歩いていると、どこからか人の声が聞こえた。前回はキーナと喋りながら歩いていたから気づかなかったのだろう。
「オノロンと……カルナスだ。研究室から聞こえてくる。」
キーナにはより鮮明に聞こえているようで、さっきまで俯いていた顔が前を向く。そうしてそのままオノロンの研究室へと近づいていった。すかさずその背を追う。勿論、音を立てないように。
ドアに限りなく近づけば、確かに中からはオノロンとカルナスの話し声が聞こえた。僕らは耳に意識を集中させ、中の会話を盗み聞く。
しかし、余程小さな声で話しているようでなかなか聞き取れない。キーナに口パクで「聞こえた?」と問えば、口パクで「聞こえない」と返ってくる。さすがに盗み聞きは良くないし、もうお手上げかと思ったその時。
「でも……!私達は、人間じゃあないんです!」
オノロンの声で、はっきりとそう聞こえた。声が聞こえた驚きで、その文言を直ぐに理解することは出来なかった。今、彼は何と言った?
すぐにキーナの方へと視線をやれば、僕と同じように突然のことに驚いているようだった。僕はキーナの手を引き、一度研究室のドアの前から離れる。
「……大丈夫?キーナ。」
そう尋ねれば白い顔をして
「今……人間じゃ、ないって……!」
弱々しくそう呟いた。
やはり聞き間違いではなかったらしい。オノロンは確かに「僕達は人間では無い」と言ったのだ。
こういうショックは未だ慣れない。それはキーナも同じで、殺された記憶を思い出した時のように酷く震えていた。そんな彼女を見ながら、ショックに慣れることはなくともどこか冷静な自分がいた。結局のところ、二人して取り乱しても自体は前に進まない。キーナや他の皆をこの混乱と恐怖の中から救うためには、僕が気をしっかり持たなければ。どこから湧き出てくるのかもわからぬ使命感に駆られ、キーナの手を握る。
「ねぇキーナ。この前の話、オノロン達にしてみない?」
「でっ……でも!この間は、僕達だけの秘密だって……!」
「言ったよ。けどそれじゃ何も解決しないでしょ?」
「それはそうだけど……。」
大方予想通り。慎重な彼女はこの提案を渋ると思っていた。確かに判断を間違えば、自身や皆の命が危ぶまれるかもしれない。けれど判断を見誤ってタイミングを逃し、また同じことを繰り返すことの方が僕にはよっぽど恐ろしかった。僕はもう、これ以上何かを失うのはごめんなんだ。
「大丈夫、よく思い出して。僕達を殺したのはアイルだし、オノロンもカルナスも敵じゃない。僕達は皆被害者なんだ。協力出来るはずでしょ?」
「う、うん……。」
「大人の二人に先に思い出してもらうのが一番いいと思うんだ。そうすれば他の皆に説明するのも落ち着いてできる。」
「……確かにそうだね。」
「それにあの二人、僕達が人間じゃないなんてとんでもない話をしてたんだ。僕らが殺されたのにまだ生きてる理由とか、記憶が無くなってることとか、きっと人間じゃないってことと何かしら関係してると思わない?」
「何かしら……って、何がどう……?」
「それはわからない。けど、無関係とも言い難いでしょ?」
そう。その点を踏まえても、やはりこの話は早急にオノロンとカルナスに話すべきなのだ。説明のつかない事態が多い中、何かしらの理由になりそうな『人間ではない』という事実。どういうルートかは知らないが、彼らはそれを手に入れた。ならこちらが持つ別の事実と組み合わせて、事を前に運ぶ他ない。それが出来れば、きっと大きな前進だ。
「……クメリアの言いたいことはわかった。話そう。オノロンとカルナスに。」
キーナはしばらく考え込んだあと、僕の目を見てそう言った。そこには先程までの恐怖心が見え隠れしているが、それに勝る程の覚悟が見て取れた。
「ありがとうキーナ。……それじゃ、行こうか。」
僕は彼女の手を再び握り直し、彼らがいる研究室の前へと向かった。
「……ここからは僕がやる。キーナは後ろにいてね。」
それだけ声をかければ、彼女はこくりと頷いた。
なるべく自然に。怪しいと思われないように。落ち着いて話を聞いてもらえるように振る舞わなければ。一瞬たりとも気を抜いてはいけない。頭のてっぺんから爪先まで、全神経を集中させて。
深く息を吸って、吐く。一つ軽い深呼吸の後、目の前の扉を三回、きっちりノックした。
運命というこの盤上をひっくり返す戦いが、ようやく始まった。
カルナス視点
「私達は、人間じゃあないんです!何者に作られたのかも、私達が一体何者なのかもわからないんです……!」
静かな部屋に二人。響くのはオノロンのそんな絶叫だった。
話があると言うので研究室に来てみれば、そこで待っていたのは説教などではなかった。あったのは、それよりももっと冷たく残酷なまでの現実だ。
オノロンが見つけた、黒く焼かれた怪しい本。この本の存在によって、俺達が人間ではないことがめでたく証明されてしまった。俺達にとっての当たり前が、音を立てて崩れた瞬間だった。
脳内に入り込む情報量が多く、若干の目眩すら覚える。オノロンも、自分で説明しておきながら内心非常に混乱しているようで、説明中ずっと眉間に手を当てていた。あいつ特有の、ストレスが溜まっている時の合図だ。
重い沈黙に耐えきれず、何か声をかけようかと口を開く。するとドアの向こうから、コンコンコン、ときっちり三回、ノックの音が聞こえてきた。突然の来客に驚いて息が止まる。
オノロンの方を見れば同じく驚いているようで、ドアの方をじっと凝視していた。外にいるのが誰かわからない以上、なるべくこちらの気配を悟られないように注意を払う。場合によっては、先程までの会話が聞かれているかもしれない。子供達でも分が悪いが、これがアイルだったら尚更厄介だ。
「……誰だ?」
「……わかりません。カルナスはそこにいてください。……私が出ます。」
限りなく小さい声で言葉を交わせば、オノロンはいつもの作り笑いを浮かべてドアへと近づいていった。
一呼吸の後、オノロンがドアノブに手をかければ「オノロン、いる?僕だよ!」とクメリアの声がした。ドアノブにかけられた手はそのまま動きを止めたが、声は続く。
「いきなりごめんね、こっちにはキーナもいるよ!……カルナスも、そこにいるよね?」
やはり先程の会話を二人に聞かれていたのだろうか。もしもの可能性に胸騒ぎがする。
「実は二人に話したいことがあって……。ね、ドアを開けてくれない?」
声はそこで止んだ。オノロンと俺は目を見合せる。大方、考えていることは同じだろう。
少なからずこちらの数がバレている時点で、ドアを開けることを拒むことも、適当な誤魔化しをすることも怪しさを増す要因にしかならない。だから一先ずドアを開け、二人を招き入れつつ適当に話を濁して帰す。これがこの状況を乗り切るための最適解だ。オノロンもそれをわかっているようで、こちらに一つ頷いた後ドアを開けた。
「……出るのが遅くなってごめんなさい。お二人揃ってどうしたのですか?」
ドアの外に向かって、オノロンの明るい声が響く。声の主はきちんとそこにいたらしい。何やら会話する声が聞こえてきた。
「とりあえず中で話すよ。いいよね?オノロン。」
おじゃましまーす、と言いながら、クメリアとキーナが入ってきた。奴らと目が合えば、「こんにちは、カルナス!」と声をかけられる。
その時、普段の奴らには感じない違和感を覚えた。表情が硬いというか、どことなく緊張しているような、そんな雰囲気。他の奴らからそうしたものを感じることは多々あるが、こいつらからは初めてだった。それが尚更、違和感を掻き立てる。
一方のオノロンも目を細めながら「えぇ、もちろん。あまり大したお構いは出来ませんが、それでも良ければ。」と言い、後ろ手でドアの鍵を閉めていた。
二人が椅子に座れば、俺達も二人の方へと向き直って座った。皆一様にして、クメリアから次の言葉が発されるのをじっと待っていた。その空気を知ってか知らずか、奴は口を開く。
「あのね。僕達は大事な話をしに来たんだ。すごく苦しい話かもしれないし、信じられないかもしれないけど、最後まで聞いて欲しい。」
今までにないほど真剣な眼差しが俺達を捉えた。
「まず……これを見てもらえる?」
そう言うとクメリアは眼帯を外した。今まで気にしたことは無かったが、そういえばこいつは眼帯をしていた。その下にあるものが、いとも簡単に顕になる。
思わず息を呑んだ。隣からも同じような気配を感じる。
「……これ、なんだと思う?」
黒い点を中心とした、青黒い、痣。それが、クメリアの左目にあった。一体いつからこんな大怪我を隠していたのか。思い返せど思い当たる節がない。訳が分からず混乱する。そんな俺達を横目にクメリアは話を続ける。
「これと同じ傷が、オノロンはお腹……カルナスは右太腿にあるはずなんだけど。確認してもらえる?」
今度は何を言い出すかと思えば、随分と突飛な内容だった。そんな傷、自分の太腿になんてあっただろうか。それに、クメリアがなぜそんな事を知っているのだろう。疑問は募るが、答え合わせはそこに傷があるかを確認した後だ。オノロンもそれをわかっているようで、無言で壁の方へと近づいていった。俺もそれに倣う。
ベルトを外し、そっとズボンの中を覗き込む。薄暗くてわかりにくいが、右太腿中央辺りに青黒い何かがある。恐る恐るそこに手を伸ばせば、指先が瘡蓋のようなものに触れた。ある。クメリアの言う通り、右太腿にあれと同じ傷がある。これは一体どういうことなのだろうか。
「……んで、これがなんだってんだよ。というかそもそも、お前はなんでこんな事知ってんだ?」
クメリアの方へと向き直れば、オノロンもこちらへ戻ってくる。浮かない表情から察するに、奴の腹にも同じような傷があったのだろう。そんな様子の俺達を他所に、クメリアは再び口を開く。
「それは、僕が全部を思い出したからだよ。僕だけじゃなくてキーナも思い出してるけど。」
「全部?何言ってんだお前。」
「まぁまぁ。とりあえず落ち着いて座ってよ。」
そう促され椅子へと座れば、奴は大袈裟に一つ深呼吸をした。まるでこれから重大発表でもするかのような素振りだ。
何となく、次に続く言葉が良くないことだということはわかっていた。状況から考えて、明らかにいいニュースではない。せめて自分くらいは努めて冷静でいられるよう、心積りをして次の言葉を待った。
しかし、その心積りも徒労に終わる。こんな話を聞かされて、正気を保てる奴なんているのだろうか。いるとすればきっとそいつは化け物だ。どう考えたって正気の沙汰ではいられない。少なくとも、俺には到底受け入れ難く、理解不能だった。
「その傷はね……それは、僕達が殺された時のものだよ。……僕達、皆アイルに殺されたんだ。」
クメリアの声が重く、低く、静かに響く。その声に誘発されるように、まるで頭の中を掻き回したような嫌悪と悪心を感じた。
「なに、これ……っ!?痛い、痛い…………!」
アイルの手に握られていたものは、確かにイゾルカの腕に深々と突き刺さった。その場にいた俺達は何が起こったかすぐに理解出来ず、一瞬の間ができる。しかしオノロンだけは違った。奴だけはイゾルカの緊急事態に咄嗟に身体が動いた。奴がそのままの勢いで騒動を起こした張本人であるアイルに掴みかかったところで、俺はようやく動くことが出来た。すぐに子供達を守らなければと思い、奴らを自分の後ろへと誘導する。アイル一人くらいなら自分だけでもギリギリ何とかできると思った。いくら力がないとはいえ、あいつよりは若干年上。オマケにどうせお互い鍛えてもいないし、奴に至っては万年寝不足不健康体。完全に抑え込むことは無理でも、体力消耗と時間稼ぎくらいにはなるだろう。割と本気で、そう思っていた。
しかし、その見立ては甘かったらしい。普段のアイルからは想像もつかない機敏さで動き、気づいた時にはもう太腿に針が刺さっていた。まるで何度も練習したような、無駄のない動き。目の前の光景に理解が追いつかない。そんな約立たずの思考を先に襲ってきたのは激しい痛みだった。痛い。辛い。怖い。そのどれもが言葉にはならない。そうして視界はどんどんと暗くなっていく。
あぁ、そうだ。ようやく思い出した。俺は、俺達は。結局誰のことも守れずに、あの日確かに殺されたんだった。
気づけば、涙が零れていた。それは、アイルの怪しさに気がついていながら、最悪のことを想定できなかった自分への不甲斐なさか。残された子供達を守ることが出来なかった後悔か。はたまた、アイルの凶行に対する恐怖か。きっとそのどれもが入り交じった涙が、とめどなく溢れては床に落ちた。らしくないのはわかっている。しかしそんな事などどうでも良くなるほどに、情けなかった。悔しかった。恐ろしかった。どうしてかずっと忘れていた事実はあまりにも重く、とてもではないが受け止めきれなかった。
その時感じた、温かい何か。視界が暗くなり、抱きしめられているのだとすぐにわかった。俺の図体をすっぽりと覆ってしまうほど大きく、それでいてこんなことをするやつなんて、この場に一人しかいない。
「……今、私は何も見ていませんから。あなたが泣こうが笑おうが、この瞬間だけは、誰も見ていません。」
余計なお世話だ。普段だったらきっとそう言って突き飛ばして、小言の一つや二つ言ってやるのに。どうしてか、今はそれが出来ない。
「……ごめんなさいカルナス。私はアイルを怪しんでいたのに、疑うだけで最悪を想定していなかった。」
どうして。どうしてお前が謝るんだ。そんなの俺だって同罪だ。腹が立って仕方が無いのに、俺は未だこいつの腕を振り払えない。
「イゾルカのことで頭がいっぱいで、他の子供達やあなたの事を、何も考えていなかった。……私も一緒になって子供達を、あなたを守らなければいけなかったのに。」
それだってお互い様だ。お前は俺よりも年上だし、力もある。大丈夫だと慢心したが、結果はどうだ。結局全滅したじゃないか。本当ならあの場でお前を行かせずに、二人で子供達を守るべきだったんだ。
「子供達にも、あなたにも辛い思いをさせてしまいました。……本当に、ごめんなさい。」
何度も、何度も。オノロンは俺を抱きしめながら謝り続けた。途中何度か抵抗しようと思ったが、面倒くさいし力も入らないのでやめた。ひたすら謝り続けることでしか、こいつは自分を許せないのだろう。どうしようもない奴だと思った。けれどそれがオノロンなのだ。
俺には、あの時手を引けなかった負い目もある。それに今だけは、俺も何も見ていないから。ほんの少しの間だけ、こいつの我儘に付き合ってやろうと思った。
「……なぁ、もういいだろ。」
しばらく経ってそう声をかければ、少しずつ温もりが消えていく。視界が明るくなって、目を開けるのが辛かった。
オノロンは何も言わず、ずっと下を向いていた。そこにいつもの貼り付けた笑顔はない。どうせこいつも泣いたんだろう。目元が赤い。
「……シケたツラすんなよ。」
「……ごめんなさい。」
「求めてんのは謝罪じゃねえよ。」
「……ごめんなさい。」
「だーっ、もうっ!!」
こんなのじゃ埒が明かない。永遠にこれの繰り返しなんてやっていられるほどこっちも暇じゃないのだ。
バチン、と小気味いい音が響く。オノロンの頬を俺が両手で叩いたのだ。奴は突然のことに驚いて目を見開いている。その顔が随分とアホ面で思わず笑いそうになった。
「いつまでもウジウジ謝ってんじゃねぇよ!お前は何も悪くねぇだろうが!」
「で、でもっ……!」
「うるせぇ黙れ!謝ってる暇があるならこの先のこと考えろ!また同じこと繰り返す気かお前は!?」
そう言えばハッとして目を見開く。そう。思い出した事実に向き合うことは当然だが、これを繰り返さない。俺達が今すべきことはそっちだ。落ち込むのも思い悩むのも好きにすればいいが、そうして下を向き続けて同じことを繰り返しては元も子もない。何も変えられずに同じ過ちを犯すなんて、そんなの馬鹿のすることだ。
「……っ、そう、ですね。確かに、あなたの言う通りです。」
ようやく俺の言いたいことを理解したのか、奴は頬に添えられた俺の手に触れた。そうしてそのままその手を下に下ろしたかと思えば、勢いよく引っ張られる。想定していなかった動きに驚き思わず体勢を崩せば、俺は再び奴の腕の中に収まった。
「おい!いきなり何すんだ!!」
「すいません。でも、なんだかとても嬉しくって。」
「は?何言ってんだお前。」
「あなたは私が思っているより、ずっとずっと大人でした。……私はただ嘆き悲しみ、狼狽えることしか出来なかった。でも、あなたがこうして冷静でいてくれたから。迷うだけの私を導いてくれたから、今やるべき事に目を向けられました。それが、私には酷く嬉しいことなんです。」
「……そうかよ。」
「ええ、そうですよ。……だから、ごめんなさいではなく、ありがとうございます。カルナス。」
「わかったから早く離せ!」
耳元で聞こえた快活な笑い声。声色から察するに、少しはいつもの調子を取り戻したらしい。何ならいつもより少し元気かもしれない。こいつのこんな笑い声を聞いたのはいつぶりだろうか。
「二人とも……大丈夫そう?」
その様子を見ていたクメリアとキーナが心配そうにこちらに伺いを立てる。もちろんまだ受け止めきれない部分もあるが、大方話の内容は理解したつもりだ。
「あぁ。大丈夫だ。」
「私もです。……長らくお待たせして、すいませんでした。」
「ううん。こんな事、すぐすぐ理解なんか出来ないよ。ショックを受けるのは当然。気にしないで!」
クメリアの表情は先程と比べれば少し明るい。先にこの事実に気づいていたこいつらは、きっともっと辛い思いをしていただろうに。改めて考えると恐ろしい。
「それじゃ、今後の事だけど……。」
クメリアはそのまま話を進める。そこに俺達も加わって、今後の事を検討し始めた。
この先に、どんな未来が待ち受けているかなんて、誰にもわからない。それがどんなに苦しい道のりだとしても、同じ過ちは犯さない。それだけは絶対に誓おう。今度こそ、俺は皆を守り抜く。静かなる信念が、確かに俺の心を突き動かし始めた。
了




