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此処を先途と救済を  作者: よるのすきま
第二章 真実への道
17/23

The Secret of the Garden

クメリア視点



夜。時計の短針は十時を指し示している。

(今日までにまとめておきたいことは済んだし……明日やりたいことのリストも完璧!)

「あー……今日も楽しかったなぁ。」

そんな独り言が静かな部屋に落ちる。ベッドの上で天井を見上げていれば、そのまま眠ってしまいそうだった。

しかしこのまま寝てしまえば、部屋の電気がつけっぱなしになる。前にも何度かやった事があるが、部屋の電気をつけたまま眠るといつの間にかオノロンがやってきて、そっと部屋の電気を消してくれる。それだけならいいのだが、次の日ニコニコ笑顔のオノロンから、くどくど長いお説教が待っているのだ。別に強く怒られるわけではないが、それのおかげで前日に決めている今日やるべき事のスケジュールが崩れる。それだけは勘弁して欲しい。

そうならないためにも部屋の電気を消そうと上体を起こす。その時、はらりと何かが落ちた。

白くて薄い、何か。最初、それが何かすぐにはわからなかった。しかし位置的に、それは自身から落ちた物だ。恐る恐るそれを拾い上げる。

それは眼帯だった。自身の左目を覆っているはずのそれが、今自分の手の中にある。



気がついた時から、左目は見えなかった。生まれつきなのか、どこかで怪我をしたのか、理由はわからないがずっと眼帯をつけている。それに、特段疑問を抱いたこともなかった。別に不自由していることも無いし、見えないということすらあまり認識していない。自分にとっては、右目から見える景色が全てであり、見えにくいだとか不便だと感じることは無かった。

特に病気がある訳でもない。理由はなんであれ、とりあえず眼帯をつけていた。何となくしっくりくるし、「眼帯をつけていること」に対して、疑問なんて抱かなかった。最早体の一部のようなものであり、着いていることすら気に止めていなかった。

それが、勝手に落ちたのだ。改めて手の中にある眼帯をまじまじと見つめる。自分は、どうしてこれを着けていたのだろう。自分は、どうしてこれに何も感じなかったのだろう。自分は、どうして片目が見えないのだろう。

不思議だった。今ここで起きている全ての事象が、自身の好奇心を沸き立たせる。知りたい。眼帯を着けていた理由も、目が見えない理由も。それを知ることによって、何かが始まりそうな予感がする。先程の眠気はとうに消え去った。今あるのは、新たに掴んだ疑問たちだけ。このワクワクの種を目の前にして、眠ってなどいられるものか。

こうしてはいられないとベッドから飛び降りる。まず手始めに何をしようか。そうだ、と思い付き、鏡を取り出した。

せっかくの機会。今まで見ることが出来なかった自身の目を見てみたいのだ。右目はライムグリーンだが、もしかすると反対はそうじゃないかもしれない。いわゆるオッドアイというやつだ。キーナはまさにそれで、レモンイエローとベイビーブルーの綺麗な瞳を持っている。キーナはあまり嬉しがってはいないようだが、自分からしたらとても羨ましかった。あわよくば自分も彼女のような特別な瞳が欲しかった。

そんなことを考えて、鼓動の高鳴りを感じながら鏡を覗き込む。



「……え。」

そこに映った自分は、大層驚いたような、拍子抜けしたような顔をしていた。それもそのはず。そこに映る閉じられたままの左目、瞼の上に、傷と痣があるからだ。

傷といっても切り傷ではない。切り傷なんかよりも、自分はこの傷を見慣れていた。これは──。

「注射、痕。」

そう、注射痕だ。日頃実験などで皆を被検体として注射をしたりして、この傷は見慣れている。それが、どうして眼帯に覆われていた瞼にあるのだろう。自分で自分に投薬した記憶はない。ましてや、こんなところになんてするはずなかった。だとしたら、誰かに?キーナも時々皆に投薬しているが、こんなところに刺すはずがない。それ以外に注射を使っている人なんていなかったはずだ。

おかしい。何かがおかしい。少しずつ心臓の音が煩くなる。手が震え、呼吸が早くなる。覚えのない注射痕、それを隠すかのような眼帯、思い当たらない犯人。少しずつ、当たり前だと思っていたものが崩れていく。

この傷には、今日までの日々を壊してしまうような、何か大きな秘密が隠されている。直感でそう感じた。触れたくない。触れてはいけない。それでも、触れなくてはいけない気がした。

鏡に映ったその傷に、そっと指先で触れる。その瞬間、ズキリとした痛みに襲われた。驚いて思わず左目をおさえ目を瞑る。その時、脳内に映像が流れこんできた。



血まみれになった床。動かなくなっていく皆。残されたのは自分とキーナだけだった。足音が近づいてくる。背中に冷たさを感じた時にはもう遅い。背中に感じる壁の冷たさと、自分達を抱きしめる「その人」の温かさに挟まれて、頭がおかしくなりそうだった。そうして間もなく、見えないうちに左目に激痛を覚え、困惑と恐怖の中少しずつ命が尽きるのを待った。

訳が分からなかった。悪い夢でも見たかのようだった。でも違う。これは悪い夢なんかじゃない。そんなものよりもっと酷い、悲しい程の現実だ。僕は、僕達は忘れている。この悪夢を、この悲劇を忘れている。理由もわからずアイルに無惨に殺されたという、真実を。



脳内でそれを理解した瞬間、冷や汗がどっと噴出した。手は震え呼吸は浅くなり、わけもわからない涙が頬を伝いとめどなく溢れてくる。あっという間に、恐怖と混乱で自身の脳内は埋め尽くされてしまった。

どうしよう。どうすればいいのだろう。真実に気づいたとはいうものの、それが自身の思い過ごしかもしれない。それが事実だと立証する術はない。アイルを問いただすとして、その行為が安全だという保証もない。気づいたところで、自分がこの後どうすればいいかなんてわからなかった。

突然の出来事に呆然とする。ようやく感じた部屋の静けさが、より一層不安を駆り立てた。

と、突然。

「……クメリア?大丈夫?」

壁を三回叩く音とともに、キーナの声が聞こえてきた。その音と声によって静寂は打ち破られた。はっとして壁に近づく。

「……ごめんキーナ、うるさかったよね。大丈夫だけど、大丈夫じゃない……かも。」

掴んだ真実が、事実かどうか確かめたい。混乱の中で確かめる術などないと思っていたが、一つ思いついたのだ。それを確かめるにはまず、キーナをこの部屋に呼ぶ必要がある。

「えっ、ど、どうしたの……?具合でも悪い……?」

酷く心配そうな声を出すキーナ。それもそのはずだ。いつも元気なことが取り柄な自分がいきなり大丈夫じゃないなんて言うのだから、きっと只事ではないと思っているに違いない。

「……そうだけどそうじゃないっていうか……。……ねぇ、今から僕の部屋に来れない?」

「えっ、今から?いいけど……。具合が悪いならオノロンとか呼んだ方がいいんじゃないかな……?」

「ううん。とりあえずキーナに聞きたいというか、話したいんだ。お願い。」

できるだけ彼女に怪しまれないように(といっても、もうかなり怪しまれているだろうが。)部屋へと誘う。この時間であれば他のみんなも寝静まる頃だろう。それに事が事だから、慎重に考えたい。今この部屋に呼ぶべきは、頼れるペアのキーナだけだ。

「わ、わかった。今行くね。」

それだけ言うと、彼女の部屋から声はしなくなり、パタパタという足音も遠ざかっていった。



その後数秒もしないうちに、僕の部屋のドアを静かに開けて、キーナが入ってきた。

「クメリア……大丈夫……?」

ごめんねキーナ。嘘をついた事も、これから伝えることがあまりにも恐ろしくて悲しいことも、全部、全部、本当にごめん。心優しい君は、もしかしたら耐えられないかもしれない。それでも、伝えなくちゃいけない。繋がなきゃいけない。向き合わなくちゃいけない。きっとそれが、僕達に課せられた使命だと、僕はそう思うんだよ。

「……あのね、キーナ。」

僕は、不安に揺れる彼女の瞳を捕えた。これが、この世界の真実だと信じて。




キーナ視点



夜十時を半分と少し過ぎた頃。もうそろそろ眠らなければ、明日の生活に支障をきたすかもしれないと寝床へ潜り込む。今日もいい感じの疲労感を感じながら、明日はどんなことをしようかと考えては微睡んでいた。

今日もクメリアと沢山遊んだ。二人でエヴァンスの作っていたお菓子を盗み食いして叱られ、かくれんぼのために研究室の中をウロウロしていればオノロンに「何をしているのか」と声をかけられた。そのうちそこへ暇を持て余したイゾルカがやってきて、エヴァンスがお菓子を、オノロンが紅茶を用意してくれてお茶会をした。もちろん、ウリムもカルナスも呼んで。けれどアイルは来なかった。イゾルカが呼びに行ったらしいが、返事がなかったんだとか。

兎にも角にも楽しかった。みんなと過ごすこの日々がとても楽しい。このまま幸せを噛み締めながら眠りにつける、はずだった。

隣の部屋──クメリアの部屋から、声がするのだ。声といっても笑い声などではない。呻き声のような、途切れ途切れの声。

この部屋の隣にはクメリアの部屋があって、壁に近づくと音が聞こえる時がある。私のベッドは壁際にあるので、尚のこと聞こえやすい。時々笑い声や独り言の声が聞こえる時があったが、今日のような声は初めて聞いた。心配になって壁に近づく。

「クメリア……大丈夫……?」

いつもしているようにノックを三回した後、そう声をかけた。いつもであれば、こうやって話しかければ元気な声が返ってくる。しかし返ってきたのは

「……ごめんキーナ、うるさかったよね。大丈夫だけど、大丈夫じゃない……かも。」

という、聞いたこともないような気弱な声だった。どうしたのだろう。どこか具合でも悪いのだろうか。未だかつてなかった自体に狼狽える。

「えっ、ど、どうしたの……?具合でも悪い……?」

とりあえずは体の具合が悪いのかもしれないと思い再度声をかける。すると少し間が空いた後

「……そうだけどそうじゃないっていうか……。……ねぇ、今から僕の部屋に来れない?」

と、これまた想定外の答えが返ってくる。いよいよ本当に何かがおかしいようだ。

「えっ、今から?いいけど……。具合が悪いならオノロンとか呼んだ方がいいんじゃないかな……?」

「ううん。とりあえずキーナに聞きたいというか、話したいんだ。お願い。」

色々と聞きたいところではあるし、体調が悪いなら私よりオノロンを頼るべきだ。しかしクメリアの声はだいぶ切羽詰まった様子だし、何か私に用があることも感じ取れた。ここは早期解決のためにも、クメリアの部屋へ行くしかない。

「わ、わかった。今行くね。」

そう言ってベッドを飛び降りる。なるべく音を立てないようにして、自室を後にした。



ぐるぐる、ぐるぐる。移動中脳裏を過ぎるのは様々なことだった。

クメリアは、お腹が痛いくらいではあんな声を出さない。気持ちが悪ければ相談せずにトイレに行くだろう。熱があったら素直にオノロンの所へ行くだろうし、怪我をしたなら軽いものは自分で治療する。あの声からはどちらかと言えば、体調が悪いというより困惑や恐怖が感じ取れた。ともすれば何かしら相談事の可能性が高そうである。不安に駆られつつ、足音を立てないよう細心の注意を払いながら彼の部屋へと入った。

「クメリア……大丈夫……?」

部屋に入り扉を閉めてそう声をかける。クメリアは煌々と照らされた室内で一人、こちらに背を向ける形で蹲っていた。私の声に気づいたようで、ビクッと肩を震わせた後こちらに振り返った。こちらを向いた彼は俯いていて表情が読み取れない。本当にどうしたのだろうか。不安になってもう一度声をかけようかとした時。

「……あのね、キーナ。」

彼から発された、酷く震えた小さな声。あまりにも聞いた事のない声に驚いて、伸ばしかけた手が止まった。

宙に浮いたままの私の手は、クメリアの手に掴まれる。その手も少し震えていた。そのまま彼は私の手を自身の頬へと寄せる。そのままその手を少し上へとずらせば、指先に布の感触が伝わってくる。クメリアの眼帯だ。そのまま彼は私の手を上へとずらし、眼帯を外させた。

今まで気に留めたこともなかったが、そういえば彼はずっと眼帯をしていた。その眼帯の下を見たことはなかった。特別見たいとも思わなかったし、本人が気にしていないようなので私も気にしていなかった。その眼帯の下でずっと隠されていた瞼が顕になった時、私は思わず息を呑んだ。

傷だ。左瞼の中心から少し右寄りに、ほくろのような黒い点がある。それを中心に、青痣のようなものが広がっていた。あまりにも痛々しい傷だ。一体いつから眼帯の下にこんな傷を負っていたのだろう。

「……びっくりさせちゃったよね、ごめん。」

そう言うと、クメリアは自身の頬に添わせた私の手を離した。離された手は重力に従って下へと落ちる。驚きと困惑で脳内が占拠され、続く言葉が出てこない。一方でその傷はいつできたのか、何をしてそんな傷ができたのか、傷に関する疑問が次々と浮かんだ。

「……これが何か、気になるよね?……大丈夫、ちゃんと思い出させてあげる。」

彼の様子がおかしい。そんなことは随分前から感じていた。そうではない。それ以外の何かが、自分自身をも不安にさせる。次第に鼓動が早くなり呼吸も浅くなる。下へと落ちた手はカタカタと震え始めた。次第に脳が恐怖で支配されていく。何となく、次に彼から発される言葉を聞きたくないと本能的に感じた。しかし、酷く震えたこの手で耳を塞ぐことは叶わなかった。

「……この傷はね、アイルにつけられたものだよ。」

「え……?」



「……確か……この辺りかな。」

そう言うとクメリアは困惑している私の首筋へと手を伸ばす。その瞳にはいつもの明るさはなく、声もずいぶん暗かった。私の首筋で何を探しているのか、ここからでは目視することができない。されるがままに身を任せていれば、やがて「……見つけた。」とだけ呟いて、首筋から手を離した。

「……見つけたって、何を……?」

恐る恐るそう尋ねれば、クメリアはまっすぐ私の目を捉えた。

「僕のこれと同じ傷だよ。やっぱり、僕の思い違いなんかじゃなかったんだ!」

興奮気味にそう答えるクメリア。言っている意味が全くわからない。

「……って言っても意味がわからないよね。ごめん。」

まるで私が思っていることがわかっているかのような口ぶりで謝りながら、未だ困惑の中にいる私の手を引いてベッドへ座らせた。

「……ねえキーナ。これから僕が話すことはあまりにも信じられないかもしれないし、恐ろしいことかもしれない。でも、全部本当のことなんだ。なるべくゆっくり話すから、落ち着いて聞いてほしい。」

クメリアはいつになく神妙な面持ちでそう切り出す。この先の話を聞くのは恐ろしい。けれどそれを知らないままでいることも、彼が掴んだ何かを阻むこともできなかった。クメリアが覚悟を決めたのなら、私だって腹を括ろう。そんな意思を込めて、クメリアの目を見て頷いた。

「……まず、さっきも言ったけど、これはアイルにつけられた傷なんだ。」

「アイルに……?それは、いつ?なんで……?」

「これは、僕たちが殺された時。なんでかはわからない。」

「こっ……!?」

腹を括るとは言ったが、想像していない言葉の出現に驚く。そんな私をよそに彼は話を続ける。

「そう。僕たちはアイルに殺されたんだ。外への扉を見つけている時だよ。キーナが壁にカードリーダーが埋まっているのを見つけて、でも誰のカードでも開かなくて……。イゾルカがアイルを迎えに行って連れ帰ってきたときに、地下の廊下で突然みんなを襲ったんだ。覚えてない?」

そんなことを突然言われても、そんな記憶は私の中にはない。アイルがそんなことをするようには思えないし、そんなショッキングなことがあれば忘れるはずがない。かといってクメリアは至極真面目な顔をして話しているし、こんな悪趣味な作り話をするとも思えなかった。

「お、覚えて……ない……。」

「そっか。……ちょっといい?」

そう言うと彼は私の手に触れ、そのままその手を私の首筋へと当てがった。

「この傷も、その時につけられたもの。ねえ、これに触れて何か思い出さない?」

そう言われ、指先へと神経を集中させる。少しの間触れていれば、やがて瘡蓋のような何かの感触があった。

「……ほら、見てごらん。僕のこれと同じでしょ?」

クメリアは、私にも見えるように鏡をこちらに向けた。

首筋にあった、小さな注射痕と青い痣。それは、クメリアの左目にあるものと同じだった。鏡の中を見つめていれば、触れている箇所がじわじわと熱くなってくる。やがてズキリとした痛みを感じ、思わず目を閉じた。



最初の犠牲者はイゾルカ。次に殺されたのはイゾルカに近づこうとしたオノロン。その次はみんなを守ろうとしたカルナス。ウリムを庇ったエヴァンス。エヴァンスのそばから離れなかったウリム。そして、私達。何が起きたかすぐには理解ができなかったし、理解したくもなかった。そうだ。クメリアの言う通り。私達は殺された。アイルに殺された。それはこの記憶と傷が証明しているのに、どうして今まで忘れていたのだろう。どうして私達はまだ生きているのだろう。どうしてアイルは何食わぬ顔でいられるのだろう。わからない。わからないことだらけだ。唯一わかることといえば、これがどうしようもない現実だということだ。

全てを思い出して、両の瞳から涙がこぼれ落ちる。恐怖と混乱で体は震え、うまく息を吸うことができない。クメリアの様子がおかしかったのはこのせいだったのだ。こんなこと、思い出せば誰でも普通ではいられないだろう。クメリアは狼狽え震える私の体を抱きしめた。そんな彼の腕も震えている。

「……っごめん、怖かったよね。でも、僕たちはこれを思い出さなきゃいけないと思うんだ。向き合わなきゃいけないって、思うんだよ……!」

耳元から聞こえる彼の声が上擦っていく。彼も泣いているのだとわかった。

「……ねえ、キーナ。」

「……なあに、クメリア。」

そういうと、彼はそっと体を離す。

「……このことは、みんなには言わないでくれる?」

「え……?」

「アイルに殺されたことは事実だけど、なんで殺されたのかとか、このことを誰も覚えてないこととか、僕達が普通に生きてることとか……。わからないことが多すぎるんだ。そんな時にむやみに動いてアイルを刺激したら、また殺されかねない。」

「い、言われてみれば……。」

「でしょ?だから、このことは僕達だけの秘密にしよう。」

「うん……。」

「大丈夫。いつか必ず他のみんなにも相談するから。」

クメリアは不安がる私の肩を掴んでそう答えた。確かにクメリアの言う通りだ。焦って大騒ぎしたってみんな簡単には信じてくれないだろうし、アイルがもう一度同じ手を使って私達を殺してしまうかもしれない。そんなことになったら元も子もない。焦らず、じっくり。実験結果を待つのと同じように。

「……わかった。私達だけの、秘密。」

とてつもない大きな秘密を共有しながら、私達は眠りにつく。この選択が、この出来事が、私達の何かを変えると信じて。




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