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此処を先途と救済を  作者: よるのすきま
第一章 愛すべき日々の記録
13/23

1.1.1111

目を開く。正確に言えば、開いたのかどうかは定かではない。暗かった視界が明るくなっただけなのか、それとも目を開けただけなのか。わからなかったし別にどうでもよかった。

「やぁ、随分酷い顔をしてるね。」

突然「あいつ」が、俺に向かって話しかけてくる。文句を言ってやりたい気持ちとは裏腹に、そんな力はどこからも湧いてこない。

「あはは。睨まないでよ、怖いなぁ。僕は、君をそんなふうに造ったつもりはないよ。」

煩い。こいつの言葉が、脳内で反芻され響く。一体どの面下げて、今更俺の前に現れたというのか。

「アイル。君は少し考えすぎなんじゃない?まぁでも、君にみんなを守ってねってお願いしたのは僕だから、あまり偉そうなことを言えた立場じゃないけど。」

あの時と同じようにヘラヘラとした薄ら笑いを浮かべて、長ったらしく話をしている。声が出ない。

「君の言いたいことはよくわかるよ。今になってわかったところで、もう遅いんだけどね。」

だったら何だというのか。今更お前が俺たちの元に現れることも、帰ってくることもないというのに。

「苦しいね、アイル。その苦しさを背負ったまま、君はどこまで歩ける?」

そういうと、「あいつ」は消えた。全てにおいて無責任で、全ての元凶。俺達の生みの親。

「……んな事、知るかよ……。」

誰もいない空間に一つ、言葉が落ちた。



「アイル!」

名前を呼ばれ振り返る。見ればそこにはイゾルカをはじめ、皆が揃っていた。

「何モタモタしてんの?早くこっち来なよ!」

そう言われ、おもむろに一歩踏み込んだ。

ぱしゃり。水を勢いよく踏んだ時のような音がする。下を見れば、一面の青、青、青。驚いて顔を上げれば、その青の中に皆が沈んでいくのが見えた。

「ま、待って……!!」

急いで駆け寄り手を伸ばす。しかしその手は誰にも掴まれることなく、皆は青い水の中へ力なく沈んでいった。沈む瞬間、耳元で

「アイルの嘘つき。」

という、誰のものともわからぬ声が聞こえた気がした。



嫌な汗を感じて起きる。案の定夢だったようだ。むしろ夢で良かったと胸を撫で下ろしながら、額の汗を拭う。

こうして久々に眠ってみれば、悪夢に魘され目が覚めるのにももう慣れた。 今が何回目のループで、どのシーンなのか定かでは無いが、正直それすら興味がなかった。もう、全てがどうだっていい。

眠れなくていい。安心できなくていい。笑えなくてもいいし、泣けなくてもいいから。せめてこれ以上、何も変わらないでくれ。




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