第11話 王都防衛戦⑦
《雷神の》
《風神の》
《《鉄槌!!》》
2人がそう言い終わるのと同時に雷と合わさった巨大な竜巻が敵陣の中央に降り立ち、相手の兵士たちを次々と飲み込んでいく。更に数発の雷が敵陣を襲い、敵の悲鳴がそこかしこから聞こえる。
相手の悲鳴が徐々に聞こえなくなり、巨大な竜巻が跡形もなく消え去り、雷雲が遠ざかっていくと、2人の周囲は先程までの争いがまるでなかったことのように落ち着いた空間が広がっていた。
「あー、疲れた。これで俺たちの任務は完了だな。」
うーん と伸びをしながらヒカルが言うと、
「…そうだね。あとは後ろの3人に任せようか。」
と、少し困ったような呆れたような様子でフウマが答える。敵は恐らく木っ端微塵に消し飛んでしまっただろうけど。まあ、やってしまってものはしょうがないし、編集で何とでもなるだろう。何とかしてくれ。そんなことを思いながら、フウマは雷雲が去り、晴れ渡った空を見上げた。
◆ ◆ ◆
「えー、結構派手にやってるねぇ。俺にはああいうのは無理だよ?」
フウマ、ヒカルの居る地点から後方に少し進んだ場所で、紫色のツインテールの毛先をクルクルと弄びながらシオンは少し困ったように呟く。
「でもまあ、俺には俺のやり方があるから。」
と不敵な笑みを浮かべながら、シオンは向かい来る敵を目指して歩き出した。
「隊長、前方に人影が!!」
ヒカル、フウマとの戦闘を回避してきたであろう敵部隊が、紫のツインテールをなびかせながら向かって来る少年の姿を捉えたようだ。
「数は?」
「ひ、一人です!」
「何!?我々の部隊相手に一人だと?舐めおって!」
隊長と呼ばれた人物の問いかけに隊士の一人が答えると、彼の表情がみるみるうちに怒りの表情に変わっていく。
「隊長!」
「今度は何だ!?」
「敵が…消えました…」
「何!?そんなバカなことがあるか!」
「本当です!見てください!」
と先程とは別の隊士が前方を指さしている。確かに、先程まで前方に居たはずの人影が消失している。と次の瞬間、前方から強風が吹き付け隊士たちの視界を奪う。腕で顔を覆うようにして強風を凌ぎ、再び目を開けると、先程人影が見えた場所から無数の蝶が隊士たち目掛けて飛んできた。
「うわ、何だこれ!?」
「蝶の大群!?一体何処から!?」
「くそ、邪魔だ!前が見えないじゃないか!」
そう言いながら隊士の一人が所持していた剣を抜くと他の隊士たちも次々と剣を構え、ひらひらと舞う蝶を切り裂いてゆく。すると突然、
「ヒィ!う、腕が!」
と剣を振るっていた隊士の一人が悲鳴を上げた。彼が剣を握っていた腕は腐食し、爛れてしまっている。その声に続くように、うわあ!?、何だ!?という声が次々と上がる。
「どうした!何があった!?」
隊長と呼ばれた人物が悲鳴のする方を見ると、剣先や身体に紫色の液体が付着した隊士たちが慌てふためき、悲鳴を上げている光景が目に入る。どうやら先程自分たちが斬っていた蝶は、斬られた瞬間紫色の液体となって飛び散り、付着した部分を腐食させているようだ。
「総員、攻撃中止だ!むやみに攻撃すると危険だぞ!」
彼がそう叫ぶと、隊士たちの周りを舞っていた蝶の群れが一斉に方向を変え、一つの地点へと集まり人の形を作りはじめる。
「とっさの状況把握と冷静な判断。どうやら君はとても有能な指揮官みたいだね。でも残念、どうやら今回の勝負はここまでみたい。」
「何!?どういうことだ!?」
完全な人型に戻ったシオンの言葉に、隊長と呼ばれた人物が驚きと困惑が入り交じった表情で問いかける。と、その直後、ぐっ という呻き声とともにその場に倒れ込んでしまう。
「この蝶の鱗粉にはね、毒があるんだよ。だから仮に君たちがこの蝶を攻撃しなかったとしても結果は変わらなかったと思うよ。」
ひらひらと自分の周りを舞う蝶に向かって彼が左手の人差し指を差し出すと、1匹の蝶がその指先にとまる。その蝶に向かって話しかけるように言ったあと、自分の周りを見渡した彼は、倒れ伏す敵の姿を見て 「って聞こえてないか。」と呟いた。




