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いつかの記憶

烈火の如く燃え盛る華が咲き誇る荒野を、桃色の髪の幼い少女を左の小脇に抱えた青年が走っている。それはまるで、迫り来る "何か" から彼女を守ろうとしているかのようだった。


「ねえ、あなたは "しにがみ" なの?」


突然、今までされるがままになっていた少女が突然口を開く。 それもそのはず、銀色の長髪をたなびかせながら走る彼は、汚れてはいるが白色の軍服のような衣類を身に纏っており、幼い少女の目にはとても死神には見えなかった。


「さあな」


そう答えた青年の声色が少し強ばっていたことには気づかず、思い通りの答えが得られなかった彼女は続けて質問を投げかける。


「じゃあ、"しにがみ" じゃないの?」


「さあな」


結局、彼の返答はどちらも変わらず、彼が何者であるのかは幼い少女には分からなかった。しかし、長い前髪で左目が完全に覆い隠されているところを見ると、いつかどこかで耳にした "せきがんのしにがみ" にとてもよく似ている……ような気がした。



そんなことを記憶の片隅から掘り起こしていると、突然、青年の足元がまばゆい光に包まれ、ガラガラっという大きな音と共に地面が崩壊し、少女は宙に投げ出された。


突然の衝撃で瞑っていた目を開けると、光に包まれ上昇していく自分とは対象的に、光の輪に向かって仰向けに下降していく彼と目が合った。彼の表情は先程とはうって変わって穏やかで、自らの天命を受け入れているようにさえ見えた。そんな彼の口元が少し動いたように見えたのは、少女の気のせいだったのかもしれない。それでも彼女には彼が


生きろ


そう言ったような気がした。




「ーーーーゃん」

「ーーーちゃん」

「アリスちゃん!」


自分を呼ぶ声で現実へと引き戻される。どうやら机に突っ伏して居眠りをしてしまっていたらしい。


「ごめん、寝ちゃってた」


寝起きの目を擦りながら、アリスと呼ばれた少女が返事をする。


「その様子じゃ仕事、全然片付いてないんじゃない?」


図星だった。現に彼女の目の前には大量の書類が積まれたままになっている。


「あはは… あ、そんなことよりどうかしたの?」


「そんなことって」


仕事を "そんなこと" で片付ける彼女に呆れつつ、話を続けることにする。


「ほら、前アリスちゃんが言ってたやつ、目星ついたらしいよ」


「本当?」


「うん」


「今行く」


「仕事は?」


「後でやる」


予想通りの反応に半ば呆れつつ、わかった と返事をする。彼女の机の上に目をやると置きっぱなしになったままの書類の山が目に入る。


(これは私たちが手伝わないと終わらないやつだな。今夜は徹夜になりそう。みんなにも声かけておくか。)


ふう、とため息をつく彼女を置いて桃色の髪の少女は目的の場所へと歩いて行く。

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