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運命は神のみぞ知る

「へい」


「はい」


「「すいませんでした」」


男2人が謝罪をする。1人は筋骨隆々のエルフ。もう1人は何の特徴もないが顔の整った普通の少年。


「マイケルてめー!!状況考えて行動しろよな!?」


目の前の金髪ロングサキュバスが怒る。息で口元の黒いベールがゆらゆらする。


「ここ逃したら本気で殺りあえないじゃないか」


マイケルは大真面目でそう答える。


「復讐でカタルシスを溜めるってのは重要なんだ」


ゴン!


リトの鉄拳


「痛!」


「お前の自己中な行動で状況がややこしくなったじゃん!」


リトはもう一度マイケルの石頭を叩く。


ポカッ!


音的に頭部に能力を施行(せぎょう)したのが推測される。





「ごめん」


正直、話す事がない。一方的に裏切られたと勘違いした挙句、アイツらを。いや仲間を殺そうとした。完全に俺が悪い。なんで俺はいつもこう空回りするのだろうか。やること全てが裏目に出ている。やはり不死身は災いの


「おい、あまり気負うなよ」


マイケルが心配そうな顔を見て話す。


「そうだよ。大体、神導者(しんどうしゃ)が悪いんだから」


「いやしかし仲間を信用できなかったのはダメだと思う」


仲間の行動の意図を理解できてなかった。いやあれは理解してたけど信じようとしなかっただけなのかもしれない。リンゴだって服だって疑念はたくさんあっただろう?自分の行動を信じ、味方の気持ちをひた隠しにし、俺をただ単に自分を肯定したかったのかもしれない。



心底、気持ちが悪い。



「なぁ!クヨクヨすんなよ!俺らはお前の境遇について知っているから大丈夫だ。そう考えてしまうのも無理はない」


「裏切られるって辛いよね。僕も分かるよ」


視界がぼやける。今度は能力とかじゃあない。この原因は人間の性質だ。


みんな。優しいな。


「ギャハハ!コイツ泣いてら!!!」


面白そうな物を見る目で俺を見るマイケル。


リトが間髪入れずに頭を叩く。


「しかし裏切られた気分にさせてしまったのは私達にも非がある。魔王城において神導者の侵入を許した挙句、シロを守れず、ヤツらの言う通りにするしかなかった。そして、その上魔王を捕縛された」


「捕縛?」


「んー少し難しい話になるぜ」


マイケルが説明を始める。


神都政府(しんとせいふ)は革新派と保守派で分かれている。革新派は全種平等を保守派は現体制の維持を理念とし、活動している。革新派と保守派はお互いの理想を掲げ、権力闘争を繰り広げている。だが困ったもんだ。保守派の方が人員が多いから革新派は無理に手を出せないし、保守派も同じく被害を出したくない。ついでに革新派の教皇様は無能力者のようだから革新派は攻撃しにくいだろうな。で、その上で盤面を覆すジョーカーは俺ら魔族陣営だ」


「つまり猫の手も借りたい両陣営の彼らは魔王城に潜伏し、魔王を殺すなんて馬鹿なことはしないはずだ。魔王を捕縛し、不釣合いな交渉をするってのが今回の奇襲の全容だ」


「しかし」


「しかしだ。全種平等の理念を掲げる革新派がシロを無限地獄に陥れるか?」


確かに矛盾だ。おかしい。


「そう!これは全種平等の理念に相反する!だから今回の奇襲を画策したのは恐らく保守派だ」


そこにリトがツッコミを入れる。


「でも神導者が今回侵入したんだよね?それって革新派が襲ってきたってことじゃないの?でもそこまでマイケルが考えてない訳じゃないでしょ?私の理解が正しいなら彼らはハリボテの神導者ってことだよね?」


「そうだ。彼らは恐らく偽物の神導者だ。俺個人としてはあんなに弱いやつが神導者とは思えない。それを考慮した上で保守派だと踏んでいる。また複数人の侵入も考えられるかもしれないが、ユキオリによると魔王城侵入者は痕跡的に二人のみらしい。あくまで痕跡的にだがな」


「それは能力による隠蔽もあるって事だよね?」


「ああ、俺らも敵の能力を知っている訳じゃないからな。でもそんな不確定な事を予想してもどうにもならない。確実に起きた事象だけを抜擢するべきだ」


「隠蔽する能力がありながらもなぜ痕跡を消さなかったのかという疑問があるよね。むむむわかんない~」


リトは頭を抱える。


「兎も角だ。保守派が襲ってきた理由は二つある。一つは魔王を捕縛し、魔族陣営に対し交渉を有利に進める。二つは経典的に禁忌の存在であるシロの存在を抹消しようとした。これらが主な理由だ」


「あーそれなら合点が行くね。ほぼ確で保守派が襲ってきたってことが分かる」


「次に彼ら保守派は交渉をしに来るだろう。だがもう武力で圧倒していいだろう。革新派はともかく保守派は嫌いなんだ。そして俺は早く闘いたい」


「で、シロが地獄から還ってきた事は隠そう。シロを隠すことはコチラにとってかなりのアドバンテージだ」


マイケルは不死身のシロ抹殺という見出しの新聞を置く。


「これはありえない話だが我々が万一にも仮にも奴らに敗北し、交渉を一方的に進められそうになった場合はシロの存在を公表するべきだ。そうすれば状況はイーブンに戻り、革新派が有利になる可能性が高い。それほど世間にとってシロという存在は宗教的に禁忌の存在なんだ」


「よーするに保守派だったらぶっ飛ばしても良いって訳だ」


「ねぇなんかそれ簡潔すぎない?」


微笑ましい光景だ。


俺はいいのだろうか。みなといて迷惑にならないのだろうか。


いや、ヘラってても何も変わらない。俺がもっと強くなればいいのだ。俺はみんなと困難に立ち向かってみたい。俺はみんなと普通に過ごしたい。俺は普通に暮らしたい。それだけでいい。





何の特徴もないが整った顔の男がいる。


「定刻の連絡が無いな。しくじったのか?ミツタニ君はともかくフジミヤ君までもが始末されるとは想像以上だな」


大教会のステンドグラスが彼を彩っている。


「ミツタニ君とフジミヤ君、2人とも仲良かったのになぁ」


彼は白い修道服に身を護られている。


「どちらにせよ次の神導者を送らねば。交渉を始めよう」


「いや?私が直接行くべきか?それが一番良いのではないだろうか」


「フジミヤ君を失ったのはかなり痛いが、不死身のシロを抹殺できたのは良かった」


「人類の目的である大天国(だいてんごく)への道は拓けた」


あとは進むだけだ。


独り言を呟くのは革新派の現教皇クロニカ=ジューゴであった。


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