アツい死闘
「ふむ」
スポーツ刈りの男が唸る。
見た事のある森が無数のワイヤーで形成されている。
「俺の可動領域を狭めるための糸なんだろうな」
「さながら蜘蛛の糸!俺は今からシロの巣に入っていくわけだ!」
マイケルは楽しそうに森に入っていく。
「おじゃましまーす!」
そう大声で叫ぶ。森はざわめく
「アイツ声でかいな」
森に潜む蜘蛛はそう呟く。
アドバンテージはこちらの方が明らかに有利。だがしかし油断はできない。
ワイヤーで行動を制限する。正直、意味があるのか無いのかは分からない。とりあえずやっとけの精神で配置したおまけ程度の物だ。トラップはまだ沢山ある。
ワイヤーの太さは二種類。太い物を森の外側と中心それぞれ均等に配置、これより細い物は俺が潜む中心側に配置した。細いワイヤーは足元付近に張り巡らし、あえて見えにくくしている。配置位置は全て覚えているので俺自体は引っかからない。
後は余った細いワイヤーを持ち戦闘中、新たに追加する。
こんな見掛け倒しが通じる気はしないが。
「アツい戦いになるぞ」
マイケルはワイヤーを触る。
ふむ、ワイヤーが妙に太いな。これよりも細いワイヤー、もしくは見えにくくしている迷彩色のワイヤーがあるかもしれないな。いや着色までは流石に時間がないか?
今のワイヤーは特に何も無かったけどトラップ式のワイヤーも含まれているのか?毒矢等は準備に時間がかかるから多くは用意できないはずだ。爆弾だとしても毒矢と同じで数は少ないだろう。爆弾だけなら能力でなんとかなる。
でもちょっとダルいな。気を使いながらの戦闘は情報が詰まる。俺はここの地理も全く分からない。防衛側があまりにも有利すぎる。最適解は森を燃やすってとこなんだが熱いのは嫌だし、怒られるからもっと嫌なんだよなぁ。
でも。
「いいね。楽しみだ」
森の中心地に向かうほどワイヤーの数が多くなる。
瞬間、矢が目の前に迫る。
「おっと危ない」
矢は顔の真横を通り後ろの木に刺さる。
クロスボウか何かで撃ってきたのだろう。
毒矢か?何か塗られている。ここら辺一帯で取れる毒草か?確か神経系のヤツだったか?痺れで俺の筋肉を制限させる目論見だろう。触れるのは良くなさそうだ。
ともかくシロは森の影に隠れてるのだろう。見晴らしのいいところ。つまり木の上だろう。
「面倒だな」
エコロケーションだっけ?コウモリが反響で位置を特定するやつ。何となくでやってみようか。
マイケルは目を瞑り、手を大きく鳴らす。
パァン!
パァン
パァン
パン
北北東高さ6mと北西高さ12m、西側15mくらいのところに何かいるな。野鳥とかもいるからハッキリとは分からない。6mは流石に低すぎるから北西か西側の2択。どっちにしようか。
決めた北西だ。
50m先南西にマイケルが来た。牽制としてクロスボウを撃つ。矢にはここら一帯で採取できる神経毒を塗っている。絶対当たらないと思うが当たれば幸運だ。
俺は毒矢を撃ったが外れた。
「当たらないか」
相変わらず恐ろしいやつだ。
場所がバレるので先程の場所から西側に少し移動した。次の矢を準
パァン!
パァン
パァン
パン
なんだ?銃声か?アイツが銃を使うわけがないのだが。
とりあえず、南東に居るマイケルを狙おう。
?
なんだ?何かが。
ゴドッ
何かが俺に当たった!銃弾?なんだ!?
「石!?」
遠投!?なぜ場所が分かった?いや!それよりも体勢を!
「シロくん!来たよ!」
来るなよ!
メリメリゴリ
「ウッ!」
パンチが腹に入った。空中で体勢を整えられるはずがない。
シロは殴られた反動で吹っ飛ばされる。
ドゴッ
「痛ってぇ」
俺はすかさずナイフを心臓に刺し自殺する。口から血が出る。不愉快な鉄の味。俺は生きている。
死ねばほんの数秒で復活だ。折れた肋骨、あばらも全部復活する便利な身体だ。もちろんそのままでも再生はするが死んだ方が手っ取り早いのだ。
「シロくん防戦一方かぁ?」
「てめぇとマトモにやり合えないからなぁ!」
マイケルは俺の腹部に小枝を投げつけ俺の身体を木に固定させる。
「もうチェックメイトか?」
マイケルは近づく。まだだ。もう少し近づけ。
「まだなにかあるよなぁ?」
「あぁ。まだあるよ!」
血を口から吐き出しマイケルの目に当てる。
「ぐっ!目潰しか!小癪!」
小癪でもいい!今は勝たねば!
俺は枝を腹から抜き移動する。
マイケルはブンブンと腕を振り回す。
プチン
手を振り回した瞬間ワイヤーが切れた。
「やべ!ワイヤーが!」
ボン!ドン!
「痛!」
ワイヤーが邪魔!思ったより爆破の威力が大きい。擦り傷が増える、精神的にも苦痛だ。
「仕方ない」
「ほんのちょっと伐採するか」
目を開け、すぐ側にあった大きな石を砕き、ショットガンさながら周りにぶっぱなす。すると木は発砲スチロールのように崩れる。ワイヤーが外れ付近に配置していた爆弾が全て起動する。
「環境破壊は良くないぜ~」
「たはは」
見晴らしが良くなりワイヤーの意味、シロの隠れる場所が全て無くなった。
シロはおもむろに話す。
「ガソリンって言う最近、転生者によって作られた面白い液体があるんだよな」
「ガソリン?」
毒?なんだ?そんな物、俺は知らない。
シロは液体を被ると火を身体に放つ。
「おいおい嘘だろ」
「アツい戦いにしようぜ」
燃える不死身。
「こりゃあ熱いなぁ!」